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いつもより涼しい風が吹く朝、アタシは足早に学校に向かった。
長らく、開門すぐに登校することがなくて、入った玄関は見慣れない生徒ばかり。
いつもは騒がしい玄関が、今は深呼吸しているように落ち着いて、居心地が良かった。
でもアタシはそんな玄関も相手にせず、教室まで階段を駆け上がる。
着いた教室は更に静かだった。⋯⋯どうやら私が一番手なようだ。
鞄を机においてから椅子を引くと、普段よりも音がやけ響いた。
アタシは時計を確認しながらチャックを開いて、菓子包みを取り出した。
「⋯⋯ふう、良かったぁ。崩れとらんで」
中に入ったふっくらとした生地を袋越しに撫でる。
そうやって改めて状態を確認してから、包みを持って教室を後にした。
「キラちゃん?」
「うん」
馴染みのない教室の前で、アタシは知らない女の返答を待っていた。
教室の中へ少しずつ、登校してきた生徒が増えてゆく。
着々と皆が席に着くなか、窓際の一番端の席は空いていた。
そんな教室の様子を、女子はぐるりと見回して__
「まだ来とらんみたい」
と、少し申し訳なさそうな顔をしてアタシに言った。
「キラちゃんて休むこともあるけど遅刻も多いし、分からんわ。午後から来るかもやし」
「んー、あんやと」
女子に軽く手を振ってから、アタシは来た道を戻る。
今日は木曜日だから⋯⋯綺羅は休みだろうな。
木曜日は基本的に1日中撮影の日だから⋯⋯
って、いくら元音楽仲間でも、相手の予定覚え過ぎかな
なんだかアタシはアタシがちょっと恐ろしくて、誰も居ない廊下で自嘲した。