ストー厶ブリンガーの1部ネタバレを含みます。ストブリを知らなくても楽しめますが知っている方が楽しめるかと思います。また若干の捏造設定があります。
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中原中也は夢を見ない。
それは彼がそう造られたからであり、彼の意志でもあるかもしれない。
夏も終わりに近づいてるような季節の昼下がり。残暑の中、僕の相棒(ハニー)は今日も戦場を踊っていた。
今回の任務は敵対組織の壊滅である。相手は横浜の中でも有力で構成員が多いことは勿論のこと首領が異能者であることで名の知れた黒い組織であった。構成員の人数の多さや、首領の異能の強さによっては滅多に使わせない汚濁を使う可能性もあった任務だったのだが、想定の他任務はスムーズに進み、僕のやることは部下に指示を出すことと後ろから撃ってこようとする敵を一捻りすることくらいであった。
「中也~ ?なんか皆雑魚いし終わったらスタバでサラダラップ食べようよ~丁度新作のドリンクも出たらしいし」
「手前にしちゃァ佳い提案じゃねェか 。乗った、後20分もかけねェで始末しちまうわ」
なんて呑気なような、物騒なような会話をして、僕の日課を始める事とした。
中也の仕事は美しいんだ。無駄がなくて、身長以外年相応に発達したしなやかな体が宙を舞って、薔薇を散らす。そんな光景を目の当たりにしても海を閉じ込めた様な透き通った花浅葱色の眼と、天性の柔らかくて夕陽のように明るいマジョリカ・オレンジの髪も、空のように透き通った肌も手入れされた爪も。その凡てが芸術品の様に美しく、人では無いなにかを思わすその姿に、僕は完全に魅せられていた。本人には言わないが。
そんな事を考えている内に10分が過ぎて、敵組織は首領を除いて完全に壊滅されていた。
「上出来だ中也。後は首領を殺すばかりだね。」
嗚呼、と適当に返事をした後、資料に載っていたこの組織の首領の執務室の前に来て、ドアを開いた。
きぃ、と嫌な音がした後、ターゲットは直ぐに見つかった。そいつは少し戯言を吐いて、余裕そうに笑みを浮かべたが、自分達の異名の名を挙げた途端震え上がり命乞いをし出した。聞く余地もないので機密情報だけ抜きだしサクッと殺した。
その後は語るまでもなく、太宰とスタバで話していたどうりのメニューを頼んで食べて、報告書を書いて提出し、なんてことをしていたら、あっという間に就寝時間になっていた。
中原中也は夢を見ない。それは彼がそう造られた人工的な神であるからである。
中原中也は夢を見ない。そのことで日常生活に支障が出たことなど無かった。
しかし中原中也は相棒との何気ない会話を思い出して、しまった。
「今日佳い夢を見たのだよ」
「そォかそりャ大変だ (棒)」
「ちゃんと聞いてよ。それでその夢で、私がポートマフィアを辞めて別の組織に就く夢さ。そしてその組織がポートマフィアと敵対している組織でね、君と真っ向から敵同士になるのだよ!素敵だと思わない?」
「ふぅん、」
「中也はなにか夢見てないの?」
「見てないな、」
「ふぅん、そりゃつまらないな」
「俺夢見れないんだよ。そう造られてるから。」
「想像力がないの間違いじゃなくて?」
「巫山戯んな死ね」
「あはは、
まぁでも夢見れないのもいいじゃない、悪夢見なくて済むんだもの」
「確かにな」
「、まぁ中也クンは怖がりなようだから怖くなったら僕を呼んだらいいさ(笑)深夜は辞めて欲しいけど」
「子供扱いすんな、一生呼ばねェ」
中原中也は夢を見ない
その代わりと言っては何なのだが、人一倍勘が鋭い。
今、すごく悪い予感がした。大事なものが無くなってしまうような、そんな、予感が
「こわい、来て。」
自分でも何をしているのか分からなかった、あの忌々しい太宰にこんな弱々しいメールを送るだなんて、第一来てくれる保証もないのに。
……
「中也!なにこのメール、悪戯なら帰るよ!」
「え、」
底知れぬ怖さと、太宰による安心感で自分の理性はどこかに行ってしまった。
自然と太宰に抱きついていて、涙がぽろゞと零れ出た。あ、引かれる、そんな悪い未来を想像していた自分に待っていたのは身に余る優しさであった。
言葉足らずに事情を説明すると太宰は自分を寝台に寝かせ、子守唄を歌って聞かせた。
俺は生まれて1度も母の愛を貰ったことは無かったが、子守唄を歌う太宰の顔は安らかで、声も優しくて、きっとこれが母の愛、母性なのだろうとふっと思った。この幸せがずっと続けば…そんな過ぎた夢を見た。ずっと一緒に生きていけるんじゃないか、と、そんな、そんなすぎた夢を見た。優しい音色に包まれた俺が眠りにつくのにそう時間は掛からなかった。
中原中也は夢を見た。
だが。夢は夢でしかない。
冬の晴れているにも関わらず肌寒い日に首領から信じ難く、耳を塞ぎたくなる様な内容の報告がされた。
「太宰が離反した」
中原中也は夢を見ない。
それは彼がそう造られたからであり、
彼の意思であるかもしれない。
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