〜ヒョンジェside〜
俺の名前はハン・ヒョンジェ。VIPクラスのリーダーだ。
VIPクラスは俺、パク・ヨウル、チェ・サヨン、キム・ジヌン、カン・ガシルの5人で構成されている。
「なぁ、なんか面白いことしたくね?」
「それな!」
今食いついてきたのがチェ・サヨン。特待生クラスの唯一の女子だ。
もちろん彼女に恋愛感情は抱いていない。
するとヨウルが口を開いた。
「俺さ…、最近ジョングク君のこと気になってるんだよね。」
ジョングク…?
あぁ、最近特待生クラスに入ってきた一年か。ちょうど良い。最近テヒョンに付きまとってるから気になってたんだよなぁ。
「なぁ、特待生クラス。行ってみたくね?」
〜ジョングクside〜
僕たちの楽しい団らんの時間に、突如聞きなれない声が聞こえた。
「今日は特別教師が来てやった。」
廊下で誰かがそう言い、ドアが開いた。
そこに立っていたのは、派手な蛍光色の黄色の髪をかき上げた男だった。
VIPクラスの長、ハン・ヒョンジェ…先輩だ。
横にいるテヒョンイヒョンの顔が強張った。それどころか、クラス全体がしんと静まりかえった。
「今日は俺が特別に授業してやる。」
ヒョンジェ先輩は満足げにそういった。
「ジョングク君、白村江の戦いはいつ?」
え…?えーと、えーと…。
「5、4、3…」
「663年!」
「正解!」
顔は笑っているのに声が怖い…。間違えたら殺されそう…。
「じゃあ、足して10、かけて40になる数は?」
また僕?
えーと、x+y=10、xy=40で連立させて…あれ?できない。
僕、中2までしか真面目に授業受けてないんだ。そのあと一年間ダンススクールに行ってたから…
って今そんなこと言ってる場合じゃない?
「あれ?出来ないの?」
「…すいません…。」
「すいませんじゃなくて、す、み、ま、せ、ん、ね。」
「…はい。」
「ジョングク君、ちょっと前においで。」
言われるがままに前に行く。
教卓の前に立った瞬間、顔に冷たいものがかかった。
目を開けると、ヒョンジェ先輩の手には空のペットボトルが。
「このままじゃ生きていけないよ?いくら歌がうまくてダンスが出来てもバカだったら国の恥だよ。バーカ。」
悔しい。悔しいけど、先輩だから逆らえない。
ヒョンジェ先輩は2本目のペットボトルの蓋を開けた。
ヒョンジェ先輩が腕を振るのと同時に、誰かが立つ音がした。
「お前、マジいい加減にしろ。」
気づいたら、僕の目の前には濡れた頭と見慣れた背中があった。
どすのきいた声でそう言ったのは、テヒョンイヒョンだった。
ヒョンジェ先輩とテヒョンイヒョンはしばらく睨み合っていた。
ヒョンジェ先輩が自分の腕を掴んでいたテヒョンイヒョンの手を振り払い、テヒョンイヒョンの顔を触り出した。
「テヒョンア〜。なかなかカッコいいことするじゃないかよ。」
「その呼び方やめろ。お前とはもう親しい仲じゃない。」
ヒョンジェ先輩がテヒョンイヒョンの顎をクイっとあげる。
「随分生意気なこと言うね〜。懐かしい。でもな、1人で足掻いたって、」
「お前じゃどうにもならねぇんだよ。」
気がつくと、テヒョンイヒョンの頬が赤くなっていた。
ヒョンジェ先輩がテヒョンイヒョンの頬を叩いたのだ。
ごめんなさい…ヒョン…。僕のせいで。
緊迫した空気を解いたのは、ナムジュニヒョンだった。
「ヒョンジェ先生ー。その問題、虚数ですよね。答えは5+√15iと、5-√15i。あってますか?」
「あぁ、そ、そうだな。」
「先生って、もちろん語学も出来ますよね?」
「当たり前だろ。」
「じゃあこれ、どう言う意味か分かりますか?」
そう言って、ナムジュニヒョンは黒板に“To be to be ten made to be.”
「ええっと、to不定詞で…、あれ?どう言うことだ?10を作った?」
「ジョングク分かるか?」
ナムジュニヒョン…英語の出来ない僕に振らないでください…。
…ううん…まず読めないんだよなぁ。
もうローマ字読みでいいや!
「とべとべ…てんまで…ってこれ!飛べ飛べ天まで飛べじゃないですか!」
「その通りだ、ジョングク。先生、ローマ字読みも出来なくなったんですか?」
ヒョンジェ先輩がチッと舌打ちをする。
「うちのマンネ、馬鹿にしないでください。」
ナムジュニヒョンはそう言って自分の席に戻って行った。
「もういい、授業はおしまいだ。」
ヒョンジェ先輩はドアに向かって歩いていく。
僕の前に立っていたテヒョンイヒョンがヒョンジェ先輩の腕を再び掴む。
「お前、グガに謝れ。」
するとヒョンジェ先輩はテヒョンイヒョンに向かって言った。
「テヒョン、あんま調子乗んなよ。今度迎えに来てやる。」
ヒョンジェ先輩は鋭いカッターの様な爪でヒョンの腕を引っ掻いてから、ドアの外へ出ていった。
テヒョンイヒョンの腕には赤い血が滴っていた。
「テヒョンイ、大丈夫?」
「うん、こんな傷、たいしたことない。」
ジミニヒョンが手際よくテヒョンイヒョンの手当てをする。
「ごめん、流石に挑発しすぎた。」
「いやいやカッコよかったよナムジュナ〜。」
ヒョン達が場を和ましてくれるが、僕はなぜか笑えなかった。
「ごめんなさい、ヒョン…。僕が、馬鹿なせいで、テヒョンイヒョンが…。ごめんなさい…。ごめん、なさっ…。」
気づいたら僕の目からは涙が溢れていた。
悔しかった。自分のせいでテヒョンイヒョンが怪我をしているのになにも出来なかったことが。
自分でも気にしていた馬鹿というところを突かれたところが。
そして、怖かった。これからずっと僕はヒョン達の重荷になり続けるということが。
テヒョンイヒョンが包帯だらけの手で僕の頭をなでた。
「大丈夫だよ、グガ。そんな死んだわけじゃなんだから。」
「そうだよ、泣くなよジョングガ〜。」
ジニヒョンも僕の肩をさすってくれる。
みんなが僕の背中を叩いてくれる。
こんなヒョン達がいて良かった。
僕も、こんな人達になりたい。
この日、僕がヒョン達との仲が深まった。
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