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『あの時の感動を、思い出せますか?揺らめく虚像の海を揺蕩う魚たちを。』
がちゃ。
乱雑に開けたドアノブの音とはしゃぎすぎたリングの足音が、静かな部屋に響く。
初心者による完全な初見の感想を述べてもいいだろうか。
…広くね?
いやいや、さっきの部屋と比べ物にならないくらい広いじゃないか。
ちゃんとした出口すら探さないといけないなんて、不便でしかない。
もしかしたらそれがここでは当たり前なのかもしれない、かもしれないけどね?
まあ、とりあえず歩くけれども。
天井は高く、通路も広く。
まさに絶望を感じさせるこの壮大さ。
右側の壁には水槽が何個かはめこまれていて、その一つに小さい魚がゆらゆらと泳いでいた。
ほかにも、左の方には棚があってその上に水槽が置いてある。
ここからざっと見た感じは、合計で六個。
海星、海月、亀、蟹、海老、小さい鮫、熱帯魚、その他海洋生物がずらり。
壁も照明も青いし、ここは水族館モチーフなのかもしれない。
泡の音と、どこかから聞こえてくる悲鳴。
水の流れ特有の静けさ。
そして、遠くで聞こえる裸足で走るペタペタという足音…。
あいつはどこまで行ったんだ…?
まあどんなことがあっても自業自得だ、放っておけばいい。
引き続き歩いていけば、少々高さのある螺旋階段を見つける。
金属の足場にゴムの靴底が当たってコツコツと音を立てる。
上った先には、本物であったら人だかりができていただろう大水槽があった。
原理はわからないが同居人を食わずにいられるでかい鮫、そして鱏が泳いでいる。
おそらく岩の影や向こう側にほかの魚たちもいるのだろうが、今は見えなかった。
大水槽の上を見ると、光が差し込んでいる。
照明とはまた違った、懐かしみのある光。
…もしかしたら、外に続いているのでは?
そんな、ほぼ根拠ゼロの期待がよぎる。
ここで立ち止まっていないで、出口を探すか。
「おーい!」
おや。
聞きなじみのある声がこちらに向けられているのが聞こえる。
「シカバネちゃーん!外があるよー!」
どうやら、根拠ゼロでも実在することがあるらしい。
リングの声のするほうへ足を運び、階段をのぼり、彼の言う外にたどり着いた。
過程はね、面倒くさいからいらないね。
私もたどり着いたその一瞬は外だと思った、しかしよくよく見ると大きな部屋に空の壁紙が張られたような状態になっていたのだ。
空というものの壮大さを残したまま、出られないという絶望を植え付ける。
嗚呼、素晴らしいほどに悪趣味じゃないか。
そこには一つの扉と元の場所へ戻る階段、先ほどの大水槽への入り口があった。
扉には『鍵は三つあります、それぞれの鍵穴にどうぞ』と書かれている。
なんとまあ、味気ない説明。
でも出口という出口が見つかっただけ大きな収穫だ。
さて、ここからどうしたものか…
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