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朝から家の中はなんとなくザワザワとしている。
10時に凌太が謝罪に来るため、父が例の金を現金化して“600”万円準備している。
母がお菓子とかお茶とか言っていると「謝罪に来るだけだからそんなものはいらん、金を返したらさっさと帰ってもらう」とか言っていて、父が凌太を、というか甲斐の家を許せないのだろう、その気持ちはよく解る。
2階の私の部屋から窓の外を見ると家の門から少し離れたところに人が立っていてよく見るとそれは凌太だった。
流石に謝罪だから遅いのは論外だけど早くてもいけないと思って時間調整をしてるんだろう。
私がここでフォローをしても父の心証を悪くするだろうし、見なかったことにして階下に降りた。
10時ピッタリに玄関チャイムが鳴って凌太が来たことを知らせた。
そして今
ソファに座る父の前に頭を下げる凌太が立っている。
父の怒りゲージの高さがわかると思ったが
母がテーブルにお茶を置きながら
「とりあえずは座って頂いたら?」
と声をかけると父が慌てて席を勧めていた。
単に、緊張していただけだった。
「母がお嬢さんとご両親に対して失礼な事をしてしまい申し訳ありませんでした。一度、発せられた言葉や行動を無かったことにはなりません、本当に申し訳ありませんでした」
「何故、わざわざ今頃になって謝罪に?」
「事実を知ったのがつい先日のことでした。遅くなってしまって申し訳ないと思ってます」
父はあの時の黒い高級菓子の袋ではなくA4サイズの茶封筒に入れた現金を凌太の前に置いた。
「利息も合わせて600万円入ってます。これをあなたの母親に返してください。そして、これでもう我が家とは関わらないで欲しい。今回の件で瞳が助けてもらったとのことですが、その件についてはお礼をいいますし、それで不愉快な思いをさせられたことへの謝罪と受け取らせていただきます」
凌太は一度頭を下げると父と母を見て
「母にはしっかりと伝えます。もうしわけありませんでした」と話すともう一度頭を下げた。
「では、この話はこれで終わりということでもう帰ってもらえますか」
父の言葉に凌太はソファから立ち上がり
「謝罪の場を設けていただきありがとうございました。失礼します」と言って玄関に向かって歩いて行った為、私がその後を追いかける形になった。
車を停めてある駐車場まで二人で歩いていく。
「次のランチはいつにする?」
「父さんが言っていたこと聞こえなかった?」
「何だっけ?」
「もう関わらないって話」
「俺以外はね、じゃあまた連絡する」
凌太は私の答えも聞かずに、フラップ版を下げるために精算をして車に乗り込んだ。
ふう
息を吐いてから自宅に戻ると父が心持ち晴れやかな表情をしていた。
自分の部屋に戻ると、スマホには知らない番号からの着信があった。