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偽った夜空に染まった羽衣は。

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偽った夜空に染まった羽衣は。

2 - 一人の偽りとたくさんの家族

♥

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2025年09月14日

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綺麗な人。可愛らしい人。儚い泡沫のような人。守りたくなる人。

俺は一目惚れした。

今までこんな経験は一度として無かった。色々な国へ行って色々な人々と会ってきたが、一目見ただけでこんなにも心が浮くような感覚は初めてだった。

俺はシエルに一目惚れをしたんだ。

天ノ川のような羽衣をまとい、舞う姿はまるで海辺に現れた幻の天女のようだった。

そして、海に沈んだシエルの顔を不覚にも綺麗だと思ってしまった。

あの日、海から船に戻ったとき、仲間達に『顔が赤い』と指摘されたときは正直ものすごく焦った。この気持ちがクラゲのように透けてしまっているのではないか、バレてし待ったのではないか、と。

「シエルさん、今日も来てくれないすかね〜」

「シエルにも予定とか、あるだろ?それにシエルは城に仕えているんだから、そうそうこっちには来れないだろうからな」

「そうですよねぇ」

項垂うなだれる仲間の背中をバシッと叩いた。

「シャキッとしろ!」

「うお!痛いっす、船長!」

「すまんすまん」

「…」

視線を感じ、そちらを向くと、つい最近入ったばかりの仲間、ミアが眉間に皺を寄せながらこちらを見ていた。

「ミ、ミア?どうしたんだ、そんな怖い顔して」

「別に…何でもないすよ!」

「それはなんかある顔だろ!なんでも言ってみろ、俺は船長なんだからな!」

ミアは何か小声でぶつぶつと発しながら近づいてきた。

「…船長、今度俺と出かけませんか?」

「なんだ、そんなことか。全然付き合うぞ!」

一体どんな事を言われるのかと思ったら、予想外の言葉に安心してしまった。

「そんなことかって俺勇気出したんですけど!」

「すまんすまん、あまりにも怖い顔してたもんだから、一体何事だと思ったんだよ」

ミアは少し怒った顔をして追いかけてきた。他の仲間達はミアが一番年下な事もあってか微笑ましそうに笑っていた。

「あ、そうだミア、折角なら今から出かけないか?」

「え?いいんすか!?」

「ああ、どうせやる事も無いしな!」

ミアは餌を与えられた動物のようにはしゃいでいた。

「それじゃ、みんな留守番頼んだぞ」

「はいっす!」

俺とミアは船を降り、町へと歩いた。

「ミアは何処に行きたいんだ?」

「俺は船長と買い物がしてみたいっす!」

余程嬉しいのか、ミアの声色がさっきよりも明るくなったような気がする。

「買い物か、いいな!あ、船長って呼び方は周りから海賊だって誤解されるかもしれないからガスパルって呼べよ?」

「は、はいっす!」

「敬語も外せ、今日はとことんタメ口で行こうぜ!」

ミアはコクっと小さく頷き、耳が赤くなっていた。

可愛いやつだな、本当。

他の仲間達は生意気な面があるものの、ミアだけは本当に真面目で真っ直ぐなやつだ。

「せん…ガスパル!これめっちゃ綺麗じゃないか?」

「お、本当だ!」

「お揃い、しないか?」

そう言ってミアはブレスレットを指さした。

お揃いか、あまり物を買うことが無いから初めてだな。

「いいぞ」

「やった!」

子供みたいだな……。

「あ、みんなへのお土産も買わなきゃな」

そうボソッとミアが言うと、あれもこれもと土産物を購入していった。

「どうだ?気晴らしになったか?」

「はいっす!船長…じゃなかったガスパル、ありがとう!」

照れくさそうに笑うミアは冬の嵐を春の陽気な花に変えてしまうようだった。

船に戻るとミアが仲間達に土産物を早速配っていた。 仲間達は、余程嬉しかったのか身につけたり、飾ったり、食べたりと騒いでいた。

「なあ、ミア」

「なんすか?船長」

俺はデッキの端にいたミアに話しかけ、一つの髪飾りを渡した。

「え?」

「やっぱリボンは嫌だったか?」

ミアはゆっくりと首を横に振った。

「いえ、どんな宝物より嬉しいです!」

そう涙目になりながらミアは笑った。その笑顔はまるで、『普通の女の子』だった。

「船長、いつから俺…私が女だって気づいてたんすか?」

「…け、結構最初、から…」

目を逸らし、乾いた笑いをする俺と、顔を真っ赤に染め上げて髪飾りを大切そうに握るミア。 互いの間に気まずい空気が流れた。

「船長ー!ミアー!土産、ありがとなー!」

反対側にいる仲間の一人が手を振りながら満面の笑みでこちらにお礼を告げていた。

「おうよ!」

ミアはさっきとは違う、ミアらしい堂々とした笑顔で返していた。

「…船長、私船降りた方がいいですか?女だし、みんなを騙してたし」

「何言ってるんだ?ミアは俺らの可愛い可愛い弟だ!家族を追放する様な真似はしねえよ」

「え?…そう、すね!俺はもうこの船の、ここにいるみんなの『家族』ですもんね!」

ああ、それでいいんだ。俺らのミアはそうでなくっちゃな!

堂々とした姿勢、活き活きとした声、仲間想いの心。

ミアの取り柄は沢山ある。だからこれからは、もっと好きな物を隠さずに好きだと言えるようになれるといいな。

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コメント

1

ユーザー

この2人も良いッッ!!! クラゲのようにっていう 表現好きです🫶 船員さん達かわいい 投稿ありがとうございます!!

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