※注意※
この小説は、純度100%の私の妄想で出来たnmnmです。ご本人様には一切関係ありません。
ご本人様はもちろん、その周辺の方々やnmnmが苦手な方の目にも入らないよう、配慮をお願いします。
私の癖を詰め込んだので、誰かの地雷の上で踊り狂っているかもしれません。それぞれで自衛をするようにしてください。
読後の誹謗中傷等は受け付けておりません。チクチク言葉が届くと泣きます。
その他、BL要素(🍤×🟦🧣)あります。
「らっだぁ、最近どうしたの? 元気ないね」
眠たそうに微睡んだ声に、ビクッと大げさに体が反応した。
元気ないね、なんて、言われると思わなかった。だって、絶対完璧に隠せてたはず……疲れてそうな、苦しそうな、そんな素振りなんて見せなかったはずなのに。
恐る恐るベッドに寝転がるぺいんとを見ると、毛布から覗く、向日葵さながらにキラキラ輝く瞳と目が合う。
「なんで?」
「んー、なんでだろう。なんというか、元気なさそうだなって」
「……ぺいんとが気にしすぎてるだけじゃないの?俺は元気だよ」
「そうかな……そうだと、いいけど」
それだけ言って、ぺいんとは再び毛布の向こうに消えていった。次の瞬間にはスヤスヤと寝息が聞こえて、子供みたいな姿に笑ってしまう。
「……はぁ」
それもすぐに、ため息に変わった。なんで分かったんだか。相変わらず、変に勘がいいんだから。
疲れている、元気がないというのは本当だ。
精神的に摩耗している自覚はある。何をやっても上手くいかなくて、やる気が出なくて、ぼんやり過ごす時間も増えた。眠れない夜も、続いている。
頭の中が空っぽになって、朝起きても起き上がれない日もあった。今日だって、彼が家に泊まりに来ると言うから片付けたものの、普段は片付けもままならないほどだ。
毎日毎日、手持ち無沙汰。でも何もしたくない。
まぁ、逆に言ってしまえばそれだけのことなのだが。精神病と言うわけでもないだろうし、ちょっとめんどくさがりになっただけ。
だから……だから、大丈夫。そう、自分に言い聞かせる。
俺は、毛布に潜り込む。すやすやと眠る彼に背を向けて、固く目を閉じた。
明日は、絶対に起き上がらないと。心配かけたくないし、気も使わせたくない。
今日は、よく眠れたらいいけど。
…
……
………
あぁ、ダメだ。
朝日を浴びて、一番にそう思った。体が動かないのだ、重い無気力感が纏わりついて離れない。動けない、というか、動こうという気が全く起きない。
普段なら気合を入れれば起き上がれるほどだったのに、今日は過去に見ないほどに酷い。これじゃあ、しばらくは動けなさそうだ。
今日、2人でお出かけしようって約束してたのに。なんでこんな大切な時にこんなことになっちゃうのだろうか。最近はぺんちゃんも俺も忙しくて、やっと集まれた日なのに。
空っぽになった頭の中を埋めるように、自責の念が募る。背後からする、彼の規則的な寝息が、さらに悔しさを増長させた。
つつ、と一雫、涙が頬を伝った。暗い感情が胸に詰まって、息が吸えない。目頭は熱いのに、心はどこまでも冷たく、凍りついているようだった。
「、、ん、んん……」
はっ、と息が詰まる。背後から、布が擦れる音がする。
ぺいんとが起きた。どうしよう、こんなとこ見られたら、心配させてしまう。途端に心臓がバスドラムさながらの重低音を奏で始め、あれだけ止まらなかった涙もピタリと息を吐潜める。
「らっだーおはよ……起きてる?」
その問いに、俺が答えることは無かった。必死に目を瞑って、心臓を落ち着かせるようにはやる呼吸を必死に抑える。渾身の寝た振りを決め込んで、彼の動向を聴覚だけで探る。
眠っているように見えるだろうか。静かな寝室には、彼がもぞもぞと動く音しか聞こえなくて、それがより緊張を強めていった。
彼が起きて、この部屋を出ていくまでの辛抱だ。だから、今だけは頑張って、我慢───
「……らっだぁ? 起きてる、よね。どうしたの、変な夢見た?」
ぺいんとは、温かい手で俺の髪を撫で付けた。そのまま、目尻に残っていた涙を拭う。
なんでバレたんだ、と思うと同時に、こうなるのは分かっていたはずの自分が恥ずかしくなった。勘だけは人一倍ある彼に隠し事とは、なんて無謀な。それは、俺が一番知っていることだろう。
恐る恐る瞼を上げると、こわごわ俺の様子を伺うぺいんとと目が合った。
その顔を見るだけで、しまいこんだはずの涙がまた溢れそうになる。が、必死に抑えて、平静を取り繕って、言う。
「ごめん、今日出かけられそうにない」
「え!? 大丈夫? しんどいの?」
「……しんどくない。でも、動けない……か、も」
口に出してみると、自分の状態が落ち着いて把握できた。それが、さらに目頭を熱くさせる。口端が震え始め、慌てて口を噤む。
揺れるな、声。泣くな、子供じゃないんだから。そう言い聞かせるも虚しく、ぼろぼろと涙が溢れた。
「……ごめん、ね。ほんとごめん。楽しみにしてたのに……俺が、こんなんだから」
流れる涙が鬱陶しいのに、拭おうという気力も湧いてこない。体が心と分離して、遠く遠くにあるような。体中、何もかもがあべこべで、取り留めのつかない言葉だけが溢れた。そんな自分が、嫌で嫌で堪らない。
現実から目を背けるように、固く瞼を下ろす。彼はなんて言うだろう、落胆するだろうか。恐ろしくて、もう堪らなくて、心臓が大きく唸りだした。
ぺいんとも黙りこくってしまって、部屋の中がまた静寂に包まれた。かと思えば、開いた距離を埋めるように寄ってきては、俺の頬に触れる。手が、震える。
沈黙を破り、ちゅっ、とリップ音が響いた。瞼に、熱が落ちる。
「……え?」
予期しなかった事態に、思わず目を見開いた。丸い瞳と、視線がかち合う。少し赤らんだ顔のぺいんとが、微笑んでは俺を見つめていた。
ぺいんとは、俺の隣に寝転がり、手を取った。冷え切ったそれを、あっためるみたいに握りしめる。
「大丈夫、大丈夫」
穏やかな声。荒れていた心に、凪が訪れる。
「ずーっと側にいるよ、一緒だよ。だから、大丈夫」
最後の雫が、頬を伝った。ぺいんとは、それを指でそっと掬う。
嫌がりもせずに包みこんでくれる熱が心地よくて、心の冷たく凍えた部分が溶けていく気がした。思わず、息を吐いた。
同時に、ポツリと呟く。
「ありがとう」
ぺいんとは、それを聞いて満足げに頷いた。
「早く治るといいね」
「うん」
「次の予定、もう決めとく? 楽しい話だけしようよ」
「……うん」
取り留めのない話を繰り返して、彼は笑う。その、楽しそうなことといえば。どこまでも明るい笑顔に、自然と頬が緩んだ。
繋いだ手から温もりが伝わって、じんわりと溶けていく。それがなんだかとても心地よくて、指を絡める。
こんな時間がいつまでも続けば、俺は一生幸せでいられるだろう。彼から無限に湧いて出る、ぬくもりを求めるだけのとってもステキな時間。
それを、不安からの行動だと思ったのか、ぺいんとは顔をあげて俺の目を覗き込んだ。
「どうしたの?」
「別に、なんでもない」
「心細い、よね。元気出して、大丈夫」
ぺいんとは、手の甲にキスを落とす。
このまま、彼に頼りきりでいいのかな。そんな思いが頭を過った。他人の負の感情に敏感だろうに、マイナスな話は苦手だろうに。
それでもこうやって、受け入れようと頑張る姿がどうしようもなく愛しく思える。だからこそ、こんな気遣いをさせてしまっているのが申し訳ない。
表情が曇ってしまったのだろうか、ぺいんとは「辛いね」と言って、俺の手を強く握り直した。
「そうだ。心細いならさ、らっだぁ。ぎゅーってしていい?」
「え? 悪いし、いい」
「いいからいいから、」
ね? と、ぺいんとは上身を起こす。繋いでいない方の手で、優しく俺の頭を撫でた。
お出かけを台無しにした上、そこまでの面倒を見てもらうだなんて。それはさすがに頼りすぎだろう。こんなちょっとした不調に、彼の1日を費やすのは、不釣り合いにもほどがある。
でも、今の俺にはその腕の中はとても魅力的に見えた。そうだ、ぺいんとは受け入れてくれるんだ。どこまでも、優しい人だから。
迷惑かけたくないという思いと、今すぐそこに飛び込んで抱きしめてほしいという思いが頭の中で複雑に混ざり合う。
そんな俺を見兼ねてか、ぺいんとは少し考えてもう一度口を開く。
「じゃあさ、俺がらっだぁとハグしたい。だから、お願い」
「……なんで?」
「ほら、最近してなかったでしょ」
でも、と言い淀むと、ぺいんとは柔らかい笑みを浮かべた。
「ね? いいよね」
その声に、ずっと抑えていたものが決壊する。もう我慢できない、抗えない。
初めて、体が動いた。重い両腕を持ち上げて、彼に向かって伸ばす。それを見て、琥珀色の瞳が嬉しそうに弧を描く。
ぺいんとは、俺を抱えて床に座った。俺は、膝の上に乗るような体勢になり、ぺいんとにでろんともたれかかった。自力で座ることすらままならない俺を、ぺいんとは力いっぱい抱きしめて支える。温もりが、直に伝わる。
「よしよし。いい子、いい子」
子どもをあやすように優しく背中を叩いては髪を掻き混ぜるものだから、顔が熱くなる。恋人と言えど、年下のぺいんとにこんなことされるのは中々恥ずかしい。
そんな俺の気もしれず、ぺいんとは俺を気遣っては優しく声をかけた。
「あったかいねぇ、らっだぁ」
「ぁ、……うん、あったかい」
「これいいね、ずっとこうしてたい」
どっちのものかも分からない、心臓の音に耳を傾ける。
こんな簡単に絆されるなんて。彼のぬくもりにあてられれば、すぐにこうなってしまう。いつから俺は、こんなに弱くなったんだろう。
ぺいんとは、俺の心臓に成り代わってしまった。彼がいないと、俺は生きていけない。前を向けない。隣にずっといてくれたのは、いつでも彼だった。
馴染みのある柔軟剤の香りがする。嗅覚も聴覚も、全部いっぱいに満たされて、言葉にできない充実感が胸を支配した。
なんというか、安心する。
「眠い?」
「んー……や、べつに」
「うっそだぁ。寝ちゃいなよ、今日ぐらいヤなこと全部忘れてさ」
いつもより低く落ち着いた声が耳元で揺れ、ポンポンと頭を撫でられる。その途端、抑えていた眠気が弾けて、体中に広がった。
もっと起きていたい、もっと彼のあたたかさを感じていたい。
そう懇願する心も虚しく、かくんと首が落ちる。ゆるゆる瞼が下りて、視界が暗闇に包まれる。
「おやすみ、らっだぁ。いい夢見てね」
最後に聞こえたのは、そんな優しい声だった。
前回ぶりです、らいむです。
詰め合わせの方に放ってそのままだったものを、投稿出来る状態にまで書き直しました。おかげですぐ投稿できましたが、次の目処は立っていませんのでご了承ください。
コメント
1件

うわ〜😭!めっちゃ良かったです!!またゆっくりでもいいので 書いてくれると嬉しいです😊!