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#下手絵注意
月山 虎景
64
#47都道府県擬人化
部屋の隅のみかん🍊@受験生
985
⚠️注意⚠️
・政治的意味、歴史的意味❌
・歴史に忠実ではない場面:有
・戦争賛美等の考え❌
・不快に思われる描写があるかもしれません
(以上のことを理解した上でご覧下さい)
「お入りください。“滋賀殿”」
住職は声をかけると襖から離れて座り直す。次の瞬間襖が開き、男が入ってくる。
「えーどうも。おはつめお目にかかります……」
「甲賀の国……近江の滋賀っちいいます。まぁ自由に呼んでくだせぇ……」
滋賀は欠伸を噛み殺して頭を掻きながらめんどくさそうに挨拶をする。目はジト目でいかにも眠そうで、髪はちらほら跳ねがあり、服も少し気崩されている。本当に強いのかと疑問に思うほどだったが、今の奈良にはそんなことを考える余裕がなかった。
「ぁ……ぅ……(泣)」
奈良は恐怖から、儚く美しい瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちる。
「え、俺なんかした?」
「滋賀殿……土地神様は……」
住職が説明しようとするが、滋賀はそれを遮る。
「あーすんません。そりゃいきなりこんな男から守ってもらえなんて信用できませんよな。」
「怖がらなくても適当に遠くから見守ってるんで安心してくだせぇ。」
滋賀は頭をかいてめんどくさそうにしながらそう言う。
「滋賀殿……」
「じゃあ俺も美しき大和の土地神様をいつまで泣かせたままとかいう趣味はないんで失礼しますわ。」
滋賀はそういうと襖を閉めて部屋から出ていった。
滋賀が出ていくと、奈良は緊張の糸が切れたかのように声を出す
「じ、住職様ッ……!」
「無理でございます!私ッ、やっぱり……ッ(泣)」
奈良は縋り付くようにして泣きながら訴える。
「申し訳ございません、土地神様……」
「ですがあの方に一切の下心などがないのは見ての通り……」
「どうか……ご理解お願いいたします……」
住職は申し訳なさそうに頭を下げる。奈良は罪悪感にも包まれたが、苦手な男性が常に見張っているというだけでも息が詰まるように苦しくなる。
部屋から出ると、外で待っていたほかの鹿たちが彼女を心配するようにして駆け寄ってくる。
「あ……」
鹿たちは彼女の服の裾の匂いを嗅いだり引っ張ったりと心配しているのが伝わってくる
「……ありがとう……」
奈良は小さく微笑むと、順番に鹿を撫で始めた。鹿は気持ち良いのかさらに擦り寄ってくる。
「……」
奈良はふと考え直す。初対面の人に顔を見られていきなり泣かれたら傷つくのではないかと。
『あの方は何処にいるのかしら……』
奈良はダメ元で屋敷の女中を探す。
「……あ、あの……」
「大和様!なんでございましょうか?」
「えっと……護衛の方は何処にいるのかご存知でしょうか……?」
「護衛……あぁ、近江殿でございますね。」
女中は少し申し訳なさそうに眉を寄せる。
「申し訳ございません。私共にも何処にいるのか分からないのです。」
「そ、そうなのですか……」
当たり前だ。彼は忍びなのだから誰にも見つからない場所にいるに決まっている。
「申し訳ございません。なにか伝言などがおありだったのでしょうか?」
「いえッ……ごめんなさい引き止めてしまって……」
奈良はそういうと逃げるようにその場を後にした。隠れて見守ると言っても姿が見えないのはそれはそれで少し怖い。そんなことを考えながら奈良は自室へと足を運んで行った……。
その日の夜。
昼間の穏やかな空気は完全に消え去り、大和の国は重苦しい闇に包まれていた。守護大名という明確な武力集団を持たないこの土地は、ひとたび陽が落ちれば、略奪を狙う野党や他国の不穏分子が跋扈する無法地帯と化す。
奈良は自身の屋敷の自室で、行灯の薄明かりを頼りに身を潜めていた。昼間の滋賀という男の脱力した姿を思い出し、不安で一睡もできない。
(本当に、遠くから見守ってくださっているのかしら……。)
ぎゅっと布団を握りしめ、浅い呼吸を繰り返していたその時ーー。
パキッ、と静まり返った庭から小さな小枝の折れる音がした。
奈良の身体がびくりと跳ねる。
ただの風ではない。気配を殺そうとして殺しきれていない、複数の人間の生々しく荒々しい足音。それは確実に、奈良の立て篭もる屋敷へと近づいてきた。
「おい、ここにあの【大和の化身】の女がいるんだな?」
「あぁ、おそろしく美人だが、武術の心得もないか弱い女だ。」
「守護大名のいねえこの国だ、今のうちに捕らえて他国へ売り飛ばすか、人質にすれば寺の連中から大金をむしり取れるぞ……!」
忍び寄る男達の、下卑た低い話し声が障子越しに漏れ聞こえてくる。その“男の声”を聞いた瞬間、奈良は恐怖のあまり完全に身体がすくみ、声をあげることすらできなくなってしまった。呼吸が詰まり、涙がボロボロと溢れ出す。
「よし、押し入るぞーー」
男たちが障子を乱暴に引き上げようとした、まさにその刹那。
「あーあ……夜中にガタガタとめんどくせぇなぁ。 近所迷惑って言葉知らねえの?」
闇の中から、緊張感のひとかけらもない、酷く怠けた声が響いた。
男たちが驚愕して振り返る隙さえなかった。暗闇を切り裂くようにして飛んできたクナイが一閃する。
「なっ……がはっ!?」
「だ、誰だおまーー」
肉を打つ鈍い音と短い絶叫。
めんどくさそうに息を吐きながら、流れるような体術とクナイで、またたく間に三人いた大男達が地面に転がり、その真ん中に立っていたのは……
「これ残業代出んの? 」
“滋賀だった”
To Be Continued〜
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