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今朝は待ち合わせのためシロを連れて冒険者ギルドに来ている。
朝のギルドはいつものように人で溢れかえっていた。
(いや~、相変わらずギルドの中は野郎ばかりでむさ苦しいなぁ)
それでも、待ち合わせの人物はすぐに見つけることができた。
その人物とはアーツのことである。
この人ごみの中でも2m近い長身で赤髪の彼女は目立つからな。
人をかき分け近づいていくと、もう一人女性の姿があった。
コリノさんである。
今回はこの3人で臨時パーティーを組みダンジョンの探索をおこなうのだ。
「おはようございます!」
2人にあいさつをして話に加わる。
そして、受付カウンターにて今日からの依頼や出発時刻などを確認していった。
………………
諸手続きも終ったので俺たちはそうそうに冒険者ギルドをでた。
これより中央広場に3人で繰り出し、ダンジョン突入に必要な備品や携帯食料などを買い込んでいくのだ。
アーツとコリノさんは以前から知り合いのようで仲良く話しをしながら店をまわっている。
松明用の木の棒・負傷した時の薬・包帯代わりの布・気つけ薬・魔獣除けのお香・トイレの葉っぱ・回復ポーションなどなど。
ダンジョン探索が初めての俺はベテランの二人にいろいろ教わりながら買い込んでいく。
購入した中には既に持っている物や必要でない物も含まれていたが、ここは勉強だと思い言われるがままに購入していった。
(まあ、インベントリーに入れておけば悪くなることもないからね)
必要な物は概ね調達できたようだ。
まだ時間もあるのでみんなでお昼を食べることにした。
中央広場は屋台も多くいろいろな食べものが売られている。
広場のあちらこちらにベンチが設置してあって、今日のような天気が良い日は多くの人で賑わっているのだ。
俺たちはそのベンチの一つに陣取ると、それぞれ好きなものを買って食べることにした。
こんなにたくさんの屋台が並んでいるとあれもこれも旨そうに見えて迷ってしまう。
(さ~て、何を食べようか?)
俺はナンのようなパン生地に葉野菜と甘辛く煮た肉を挟んだ物とオレンの実の果実水をチョイスした。
シロには串焼きを2つと水を置いてやる。
彼女たちもベンチに座ると、それぞれ買って来たものを膝の上に広げている。
そして、その匂いにつられて寄ってきたシロを撫でながら片手で器用に食べていた。
すでに自分の向きを食べ終えているシロだが、おこぼれを貰おうと二人の膝の間を行ったり来たりしていた。
ゆっくり目の昼食を終えたあと俺たちは冒険者ギルドに戻ってきた。
ギルマスのガンバさんに呼ばれているので今は関係者とギルド長室に集っている。
探索の行程と調査項目についての説明を聞いていく。
まず、俺たち3人が先行して出発しダンジョンを確認する。
続いて、後続部隊への目印としてダンジョンの入口に冒険者ギルドの旗 (組み立て式) を立てておく。
そして次の日の朝、日の出と共にダンジョン探索を開始する。
ダンジョン探索においては次のことに留意しながら調査を進めていく。
・ダンジョン内は階層で別れているのか?
・次階層への階段の有無?
・出現するモンスターの確認。
・余裕があればモンスターの分布など。
・モンスターが落とす魔石とドロップ品の持ち帰り。
そして如何なる場合においても探索は2日間とし、速やかに撤退する事。
俺たちの行動は大体こんな感じだな。調査の方もさほど難しくはないだろう。
それから後続組であるが、
ギルド員が3名、冒険者が3名の計6名で構成されており、明日の朝 町を出発する。
そして現地にて周辺の地理やダンジョン入口の構造などを調査しながら先発組がダンジョンから戻ってくるのを待つということだ。
俺たちはそれらをすべて承諾すると冒険者ギルドを出発した。
南門をでた俺たちは城壁沿いを回り込んで東の街道に出てきた。
今日はいい天気だぁ。
もう、おやつの時間 (午後3時) ぐらいだろうか、まともに歩いていったのでは日が暮れてしまうな。
街道を少し行ったところで、シロの鑑札付きの首輪を外し大きくなってもらった。
みんなを乗せてくれとお願いしたところ、シロは4mを越えるフェンリルへと姿を変えた。
その姿を見て飛び込んでいくアーツ 。(狂)
これなら3人ぐらいゆっくり乗せられるだろう。
コリノさんが多少戸惑いを見せているが、アーツがうまく話してくれてるみたいだ。
伏せの状態で待機しているシロの背中にコリノさん・俺・アーツの順で跨った。
二人の美女に挟まれてとても気恥ずかしいのだが、これも役得だよな。
シロは結界魔法を使って上手く風圧を抑えてくれるのでとても乗り心地がいい。
可愛いだけでなく、気遣いもできる優しいワンコなのだ。(フェンリルです)
馬車で行けば2刻 (4時間) かかる距離をシロは30分程で駆け抜けてくれた。
これでもまだまだ本気とはいえない。かなり抑えて走ってコレなのだ。
早々、ダンジョン前に到着した俺たちだったが、これといってすることがない。
後続部隊が入って来やすいようにとタツナミソウやブッシュなんかを刈って切り開こうとしていたが、シロがウインドカッターで即終わらせてしまった。
一面ボーボーだった草がキレイに刈りとられて、とても気持ちがいい。
………………
そこで、3人と1匹が集まり話し合いをはじめた。
ダンジョンへの探索は2日間と決められているのだが、早く入る分には何ら止められてはいない。
さらに、こちらにはシロがいるのだから恐ろしいほどの安全マージンがある。
それなら……、
『ちょっと行ってみっか!』
どこぞの悟空的な軽い感覚に陥ってしまったのだ。
その結果、これからダンジョンに潜ってみることになった。
ダンジョン入口の広場から10m程手前に冒険者ギルドのフラッグを立てた。
付近の雑草はシロがキレイにしてくれたので、すこぶる目立っている。
これでダンジョンの位置は一発で分かるだろう。
そして俺たちは、いよいよ未踏のダンジョンへ足を踏み入れた。
先頭を行くのは我らがシロ。 尻尾をフリフリ軽やかに進んでいく。
続いてはアーツ。 少し緊張気味かな。周りをしきりに気にしている。
お次はコリノさん。 割と落ち着いている。取り回しを重視してか、この前持ち歩いていた弓よりもかなり小型のものを装備している。
最後が俺。 何か妙な胸騒ぎがしている。嫌な感じというわけではないが何かヤな感じなのだ。
そして一行が地下へと続く階段を下り、1階層と思しき場所に足を踏み入れた。
――すると、
ピーン! {時空間魔法(U)によりダンジョンの使用者権限を取得しました}
ピーン! {特殊スキル、ダンジョンマップを取得しました}
(おおっと、ビックリしたぁ!)
「…………?」
先に歩いている皆を見るが、特に驚いている様子もない。
どうも、時空間魔法を持っている俺だけに聞こえてきたようだ。
なるほど、あのヤな感じはこれだったのか。
スッキリしたわwww ってバカヤロー!
[いかがされましたか? マスター]
おっ! 女の子の声が……。 どこの誰よ?
[ここのダンジョンのコアから直接お話しさせて頂いております]
んんっ、これはもしかして噂に聞くダンジョン・ナビゲーター。略してダンナビなのか?
[ハイ! マスター。概ねそれで合っています]
はぁ、さいですかぁ~。
このダンジョンは洞窟タイプになる。
天井までの高さは大体5m、よこ幅は4mといったところか。
洞窟内では壁や天井が所々光っており割と見通しもいいようだ。
(シロ、次は右だな)
シロに指示を出しながらどんどん進んでいく。
さっき手に入れた『ダンジョンマップ』のおかげである。
洞窟の中は大小いくつかのルームが存在している。そこで道が分岐していたり、あるいはモンスターが溜まっていたりと様々である。
しかしモンスターであるが、遭遇すれども襲ってはこない。
道も迷うことがない。トラップの位置だってわかるので避け放題だ。
そんな感じで3階層まで下りてきた。
今いる場所 (ルーム) はセーフティーエリアになっており小さな泉まで設置してある。
もちろん飲める美味しい水だ。
今日の探索はここまでとし、長めのインターバルを取ることにした。
コリノさんはダンジョンに入ってからも割と平然としている様子だ。
その一方でアーツは……、何をそんなに警戒しているのだろうか。
「ここは迷宮……、何が起きても不思議ではない。夜になれば本性を現すやもしれん今日は寝ずの番だ」
そんな、他力本願寺の住職みたいなことを言っている。(あ○っ女神さまっ)
俺は迷宮に転がっていた手頃な石を集めて竈をこしらえた。
さぁ、今夜は焼肉パーティーといこう!
暇なときに集めていた薪をインベントリーから取り出し火を起こすと、まずはスープを作ることにした。
泉から汲んだ水を寸胴鍋に入れ火にかける。
お湯が沸騰したところで切り分けておいた肉と野菜を入れて煮込んでいくだけだ。
味付けは初めに入れていた干し肉で出汁をとり、具材を入れた後たびたび灰汁を取りながら煮込んでいく。
そして仕上げに岩塩と町で見つけたハーブ (少しピリッとする) を入れたら完成!
寸胴を竈からおろし、今度は金網を出してオークの肉を焼いていく。
岩塩をきかせて次々に焼いていく。
竈の前でスープを飲みながら焼く焼く。
シロの分は何もつけず炙るように焼く焼く。
これだけ食わせればみんなも満足しただろう。
最後はヤカンに湯を沸かし、町の鍛冶屋に頼んで作ってもらった茶こしに茶葉を入れ、みんなに紅茶を淹れてあげた。
用意するのは結構大変ではあったが、こうしてカップを片手にみんなと談笑していることがすごく嬉しかった。
ここはモンスターが寄ってこないセイフティ・エリア。
食事を終えた俺たちは少し横になって休むことにした。
シロもお肉をたらふく食べて満足そうに丸くなっている。
俺はこの機会にダンジョンについていろいろと聞いてみることにした。
(おーいダンナビ!)
[はい、マスター。お呼びでしょうか?]
おっ、おう。
(このダンジョンに名前はあるのか?)
[はい、今のところ固有名詞は付いておりません]
そうか……。
(じゃあ俺が付けてもいいのか?)
[はい! 是非お願いします]
ふむ……、そうだな。
(”サラ” なんてどうだ?)
[はい! ありがとうございます。このダンジョンの名称はサラで登録いたします]
(サラ、これからもよろしくな。俺はダンジョンについて何も知らない、これからいろいろと教えてくれると助かる)
[了解しました。ではマスターのキャパに合わせまして厳選した基礎情報をお伝えいたします。右手を地面に充ててください]
んっ、地面? こうかっ……。
俺は何の躊躇もなく地面に触れた。
すると、一瞬の静寂のあと……。
頭に、いや、直接脳に膨大な量のデータが流れ込んでくる。
脳裏に激痛が走る。痛みで目が飛び出しそうだ!
(うおおぉおおおぉおおおおおおおお!)
その痛みに耐えきれず頭を抱えて地面を転げまわる。
そして俺の意識はプツンと途切れた。