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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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その後鏡花ちゃんの歓迎会も終え、片付けをいそいそとしていると携帯に一通のメールが来た。



『Завтра, когда луна поднимется выше, в этом парке.』



差出人はフェージャ。…良い機会だ。彼に聞きたいことは山ほどある。

しかしその前に…



「露西亜語読めねえっっ!」



取り敢えず乱歩さんに読んでもらおう…








乱歩さんに解読してもらい(手数料・ラムネ)その後一応口止めも頼んだ(口止め料・よっちゃ◯イカ)。

どうやら内容は「明日月が高くなる頃にあの公園で。」と。

あの公園…?ああ、前抱きしめられた所か。

彼の目的は一体何なのだろうか。これまでの言動から推測しようにも飄々とした性格

故真意が掴めない。


治なら分かるかも知れないがいかんせんアイツは昔から治以外の男の名前を口に出すとその日一日不機嫌になる。この前噛まれた時だって中也の名前も芥川くんの名前もフェージャの名前まで治の前で言ってしまったし……お手上げだ。


…兎に角明日フェージャに全てを聞こう。全てを話してくれるとは到底思わないが。









「こんばんは、羅紫さん。今日は月が綺麗ですね?」


「…こんばんは。そうですね、死んでも良いくらいに。」



出会い頭にトンデモナイ台詞を言ったなぁ…揶揄ってるんだろうけども。



「ふふっ、矢張り貴方は面白いです。”死んでも良い”ですか。露西亜の文学書では愛しているを死んでも良いに訳されることもあるのですが…」


「そう訳されていないものもある。でしょ?そんな事まで知っているんだ…」



絶対知らないと思って返したのに…流石やな。

まあ挨拶はこの辺で。



「それで、フェージャ。どうして私を此処に?」


「あなたを、守りに来たんです。」



守りに…?



「どう言うこと?」


「詳しくは話せませんが、おそらく近いうちに探偵社とマフィアは全面戦争へと発展するでしょう。そこにあなたを巻き込ませたくは無いのです。」


「私を…?」



マフィアと全面戦争…?いくら向こうがウチを嫌っているとは言え森さんがそんな非合理的なことをするとは考えにくい。それは逆も然り。社長も二社が戦ったら街も社員も無事では済まない事はわかっているだろう。それなら一体何故?そして私を戦いから遠ざける理由は?


頭の中が疑問符でいっぱいになる。そんな私を他所にフェージャは話を続ける。



「はい。…ですが貴方の性格上、”こちら側”で大人しく守られる、なんて事はしないでしょう。」


「まあ、そりゃあ。」


「ですのでこれは警告です。ぼくとしては守られていて欲しいのですが…まあいいです。」


「なんだそりゃ」



“こちら側”…ねえ。他にも何人かいるのかな?

聞きたい事は山ほどあるがそれは何故か憚られた。



「……ね、フェージャ。もしかしてさ、…ううん、取り敢えずこっち来て?」


「?はい。」



きょとん、として近づいてきた彼を思い切り抱きしめる。



「?!羅紫さん…?」


「…フェージャ、無理はしないで。」



そう言い、帽子越しに彼の頭を撫でる。

一瞬体がビクッと跳ねたが拒絶の意思は見られなかった。



「フェージャはさ、頭が凄く良い。だから甘えたり頼ったりとかはしないよね?…私の友人がそうなんだ。何時も一人で抱え込む。私に、なんて烏滸がましい事は言わないけどせめて誰かに、頼ったり甘えたりして欲しいな。なんて…」



友人というのは治のことだ。

昔はよく一人で抱え込んで爆発する手前まで我慢をしていた。それを一緒に抱えるのが私の役目だった。



「……矢張り羅紫さんは…」


「ん?」


「いえ、…羅紫さん、もう少しだけ、このままでも良いですか?」



彼の声は心なしか頼りないものだった。

いつの間にか腰に回されていた腕の締め付けが強くなる。



「うん、好きなだけ良いよ。」



ヨコハマの夜が更けていく。









しばらくしてふと我に帰ると既に月は沈みかかっていた。



「やば、むっちゃ眠い…フェージャ、ずっっっと離してくれないし…いや、全然良いんだけどね。」



知らないうちに抱きしめる側から抱きしめられる側になってるし。

フェージャの少し低い体温と自分の少し高い体温がちょうど良く、視界は閉ざされてしまった。









フョードルside





「やっと、この手に羅紫さんを奪うことができました…」



彼女の行動を予測し、あらかじめ衣服には睡眠薬を仕込ませた。

彼女の優しさを利用した行動だが、どうしても守りたいものが出来てしまった。


羅紫さんとの出会いは露西亜。秋にしては寒い日だった。街を歩いているとあからさまに困った表情と行動をしている女の子と出会った。それが羅紫さんだ。



「…どうされました?」



横を通り過ぎる時に思わず話しかけてしまう。時間の無駄だし声を掛けようとは一切思っていなかった。この後の会話も何も予測しておらず、どうして声をかけてしまったのか…と思っていると彼女は振り向き、僕に対して口を開く。



「ううう…み、道に迷いましたぁ……」



息を呑むほどに美しく、愛らしかった。若干潤んだ瞳は硝子のように煌めき、左右で違う瞳の色が淡雪のような肌を引き立てている。髪は艶やかな黒髪で振り向き様にゆらりと靡く。

欠点の一つもないような人だが現在進行形で道に迷っている。そんなところも愛おしい。



「…そうですか。日本から来たのですか?最寄りの空港までお送りしますよ。」


「え!!何とお優しいっ…ありがとうございます!あ、私、式部羅紫っていう名前です!」


「ぼくはフョードル・ドストエフスキーです。フェージャと呼んでください。では、行きましょう。」



フェージャは今までに誰にも呼ばせてこなかった。しかし羅紫さんなら、そう呼ばれたい。


この感情は恋と呼ぶにはあまりにも安っぽい。自分でもよく分かっている。彼女に向ける感情の重さや種類も。



「Твоя любовь только для меня.…」


「え?どうしました?」


「いえ。それよりぼくも日本に行こうとしていた所なんです。ご一緒しても?」


「勿論です!一人じゃないって嬉しい…✨」



ここから時間をかけてぼくの手元におとしていってあげます。







あなたの愛は私だけのものです。

文豪ストレイドックス 恋愛怪奇譚

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