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俺は毎日ニキに呪いをかける。
俺から離れて行かないように。
俺以外を見ないように。
呪いと言ってもなんとかって名前のオイルをアイツの持ち物に吹きかけるだけ。ジャケットや鞄に、ニキと会う時は必ず使う。オイルの名前はもう覚えてないし、ラベルも何を書いてあるのかさっぱり読めない。これは暇を持て余し冷やかし半分で入った怪しげな雑貨屋で勧められたものだ。魔女を名乗る胡散臭すぎる女が、相手が自分から離れて行かないようにする魔道具のオイルだと説明していた。これを相手の持ち物に吹きかければいいのだと。
効果なんてある訳がないのは分かりきった話だが、何かに縋りたかった俺はまんまと手を出したのだった。
今日も今日とてせっせと呪いをかける。うちに泊まりに来たニキの放り投げられているジャケットと鞄にオイルを振りかけた。
「ボビー?何やってんの?」
「ウォッ!?びっ、くりしたぁ…」
急に声をかけられて心臓が口から飛び出すかと思った。ああ、ついに見られたのか。別にあの魔女とやらもバレちゃいけないとは言わなかったし、俺も隠す気もなかったから問題ない。今までたまたま見られていなかっただけ。
「ごめんごめん。そんな驚くとは思わんくて。で?何やってんの?」
「んぁ?呪いかけとる」
「呪い?ははっ可愛い、お呪いとか信じるタイプなんだ?」
「可愛いやろ。ニキが女を抱けなくなりますようにってな」
「えっ」
「あ?なんや俺以外を抱く予定でもあんのか?呪いどころか物理的にチンコ切り落とすぞ」
「いやっ、いやいや誤解ですよ。ボビーと付き合いだしてからは、お前としか寝てねぇもん。もう女には勃たねぇかも」
「はい、ダウトー。AV見ながらシコっとるの知ってまぁす」
「プライバシーってこの世から無くなった…?てか違うじゃん。アレは女優がお前に似てたんだもん!そりゃ見るだろうが!」
「えっ、普通にキモいでお前」
ギャアギャア言い合う空間が心地よくてやっぱり離れたくないと思う。なんてボーッと考えていたら、突然ニキが思い出したかのように顔を引き攣らせながら質問してきた。
「ところでお前これヤバい成分とか入ってないよな?」
「さぁ?知らんわ、魔道具やからなんか入っとるかもな」
「魔道具って、普通に怖ない…?てか魔道具とやらに頼ってまでボビちゃんは何のお呪いしてんの?」
「流石に教えんわ。言ったら意味なくなりそうやん」
俺の適当な返事が信用ならないのか、しつこく安全性を聞いてくるからだんだん面倒になってきた。多分大丈夫だろ。だって結構な期間お前の持ち物に使っていたし。
騒ぐニキを無視して今度はコイツが着ている服に直接呪いをかけた。甘い女物の香水みたいな、花とバニラの香りがした。
「ねぇ!これ大丈夫なんだよね!?」
「しらーん」
俺は毎日ニキに呪いをかける。
俺から離れて行かないように。
俺以外を見ないように。
呪いと呪い
呪いは不可思議な物の力を借りて相手に不幸が訪れるように願う事。
呪いは不可思議な物の力を借りて災いを除いたり起こしたりする事。
俺に捕まったニキはどう思っているんだろう。
アイツにとって俺の願いは呪いか呪いか。