声

『すき』

違う。

『だいすき』

違う、黙れ。

『愛してる』

うるさいうるさいうるさい。

『俺だけを見て』

黙れ黙れ黙れ黙れ。

黙れ。

俺は、俺は。

好きなんかじゃない。

大好きなんかじゃない。

愛してなんかいない。

アイツなんか、アイツなんか。

なんとも思っていない。

アイツは敵だ。

アイツはライバルだ。

アイツはアイツはアイツは。

アイツは。

『好きなんだろ？』

だからうるせぇって言ってんだろ。

『正直になれ』

今も十分正直だ。

『ちゃんと向き合えよ』

向き合ってないのはお前のほうだろう。

いい加減目を覚ませ。

何が好きだ。

何が愛してるだ。

たった一回、体が繋がったくらいで。

浮ついたこと抜かしてんじゃねぇよ。

『それでもお前は待ってるだろ』

俺が何を待ってるって言うんだ。

『アイツに決まってんだろ』

『麦わら屋に』

そんなわけねぇだろ。

俺はもう、アイツに関わらないと決めたんだ。

今更どうこうなるつもりなんかみじんもねぇ。

『じゃあなんで、あのとき体を許した？』

『なんでそんなに嫌いなやつとセックスをした？』

それは。

『お前も好きだったからだろ』

『大嫌いだったはずのアイツが』

そんなわけ。

『本当は気づいてるんだろ？』

『同盟が終わってからも忘れられなくて』

『体を交わした日のことを思い出しては寂しさに包まれて』

『そのたびに実感してんだろ？』

『いつの間にか心底惚れてることに』

『好きで好きでたまらないことに』

違う。

そんなんじゃない。

俺はアイツが嫌いだ。

俺の作戦を聞きもせずに、むやみやたらに突っ込むアイツが。

そのくせけがばっかりしてくるアイツが。

でも。

なんだかんだで最終的には笑顔で戻ってくるアイツが。

『ほらな』

俺は、俺は。

『だから言っただろ』

俺は。

「…っ」

“トラ男はほんと、俺のこと好きだよな！”

“あ？そんなわけねぇだろ”

“にっしし！照れるなよー”

“て、照れてなんかねぇよ！”

“ふーん、そうかよー”

“っ、お前なぁ…！”

“なぁトラ男”

“…、なんだ…”

“お前やっぱ”

“かわいいなぁ”

「麦、わらや…」

「だいすき」

最近ルローもいいな、と思い始めました。

誰か同志いませんか？