「でもさらに旅が続いて、さんざん地面に張り付いたあとは、別な風に考えるようになった。国があるから、地球のどこにいるかがわかる。州があるから、国のどこにいるかがわかる。市があるから、州のどこにいるかがわかる。町があるから、市のどこにいるかがわかる。何もなかったら、ただだだっ広い大地や海のままだったら、自分の立ち位置ひとつ掴めなかった」と旅人は言った。青年は、そもそもそんなことに疑問を感じたことは一度もなかった、俺っておかしいかなと言った。旅人は首を振り、待合室の窓に額をつけた。青年もまねしてみた。遠くにマルマラ海がわずかに見えた。
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