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パリの大学を卒業した日から、少し時間が経った。
街は相変わらず美しく、けれど学生だった頃とは違う顔をして見えた。
観光地ではなく、「生活する場所」としてのパリ。
マンションの窓辺で、ミユは書類を広げていた。
「教師免許、申請通ったわ」
「本当ですか」
コビーは、少し驚いた顔で彼女を見る。
「音楽教師の資格コース。期間は短くないけど」
「……行くんですね」
「ええ」
ミユは顔を上げ、静かに言った。
「あなたは?」
コビーは、一瞬だけ視線を落としてから答える。
「僕も、行こうと思います」
「英語?」
「はい。ここで学んだこと、無駄にしたくありませんし」
ミユは小さく頷いた。
「じゃあ、一緒ね」
その言葉に、コビーは胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。