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「誰か、図書委員やれる人ー!いないのー?」
女子の声で目が覚める。確か永瀬莉子といっただろうか。ポニーテールの彼女は、いかにも学級委員という感じだった。
自分から図書委員になりたいというやつはいないか、流石に。また寝ようと思ったその時だった。
「はいはいはい!さっき遥翔寝ててやる気なかったし、こいつでいいと思います!」
「は!?嫌だよ!」
お前何言ってくれてんだよ⁉
俺の思いに反しクラスの奴らは「いいねー」「さんせ〜」と言い始める
「じゃあ、図書委員は、神楽遥翔と、橘蒼に決定でーす」
永瀬が決めてしまった。
「おい恭也!お前何してくれんだよ」
「まあまあ、そんな仕事ないし良いでしょ〜」
「嫌だよ!俺みたいなやつがやるのじゃないだろ」
金髪。ピアス。何なら舌ピも空いてる。
「ほら、橘と話したことないだろ?仲良くなれるチャンスかもよ~?」
こいつ…
この学校はかなり自由な学校で、髪染めもピアスも許可されている。その中で、黒髪に眼鏡というなんとも真面目な橘は軽く浮いていた。
興味がないと言えばうそになる。だが、わざわざそのために図書委員なんてのはやりたくねえ。
「あーー。」
だっる。
二日たち、放課後に委員会の日になった。水曜と、金曜の放課後が当番の日だ。
両方とも放課後ってついてねえな…
橘とは水曜日が一緒になる。ということで、今日は一緒になるのである。
さて、放課後に図書室に来る奴は中々いないので、基本やることはないが、図書室ではスマホを使うなと司書に言われて(鬼みたいな顔で圧かけられた)
暇だ。やることがねえ。
橘は… 小説を読んでいる。
「きりこについて」とガタガタの文字で書かれたその小説の表紙にはピンクの猫が描かれている。
もっとむずそうな本読むんかと思ってた。なんとなく気になって、声をかける。
「なあ、橘。それ、おもしれえの?」
2秒、橘が止まった。
「はい」
今度は2秒、俺が止まった。
「どういうの?」
4秒、止まった後。
「主人公のきりこが、ぶさいくで」
「え?」思わず声が漏れた。そして笑ってしまう。橘は、少し困ったような表情をしたように見えた。
「小学校六年生の時に、それを周りの男子に言われて、気づくんです。自分が、ぶさいくだって」
また、笑ってしまう。
「とりあえず、今、そのシーンまで読みました」
「なあ、それ読み終わったら俺に貸してよ。」
活字は苦手だが、そんな話なら読みたい。
「わかり、ました。」
橘は答えた。