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赤 × 桃
地雷さん 🔙 推奨
雨の音が 、 ビルの窓を静かに打ち付けていた 。
午後10時 。 フロアには既に誰もいない …
____ はずだった 。
「 まだ残ってんの ? 桃 」
重そうなファイルを抱えた赤係長が声を掛けてくる 。
俺は慌てて立ち上がって赤係長に頭を下げる 。
「 すみません 、 資料の修正がちょっと残ってて … 」
赤係長が俺の隣のデスクにファイルを置いて 、 俺の手に持っている資料に目をやる 。
「 … あ ー … これか … ま 、 そんな急ぐ奴じゃねぇから明日でええよ 、 」
「 … はい … 」
赤係長は 、 いつもはもっと強い口調なのになんだか今日は優しい 。
俺は不思議に思いながらも 、 手に持っている書類を片付ける 。
「 … お前さ 、 」
「 はい ? 」
「 最近 、 俺のこと避けてんだろ 、 」
「 … 」
唐突な言葉に俺は沈黙してしまう 。
「 そんな 、 こと … 」
「 じゃあ 、 俺からの視線に気付いてないってこと ? 」
心臓が跳ねた 。
… いや 、 本当はずっと気付いていた 。
気付かない振りをしていた 。
赤係長の視線は 、 部下を見詰める目じゃなかったから 。
「 … 気付いてました 」
「 … そ 、 」
赤係長はその端正な顔に微笑みを浮かべて俺の方に手を伸ばす 。
「 部下に手出すのはルール違反って分かってる 。
… けど 、 ずっと前から好きだったよ 」
「 … 俺も 、 係長のことずっと見てました 」
俺の言葉で赤係長の表情が変わる 。
「 … 気持ち 、 聞けて良かった 、 」
それから 、 赤係長の顔が段々近付いてきて ____
静かに 、 唇が重なる 。
外の雨音だけが 、 俺達を包み込んでいた 。