あの夏が飽和する〜キミは泣いていた〜
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「昨日人を殺したんだ 。」
とある梅雨の日
ずぶ濡れの君は、部屋の前で涙を流している 。
夏はこれからだと言うのに
君は震えていた 。
そんな話で始まる あの夏の日の記憶だ
「殺したのは隣の席のいつも虐めてくる彼奴 。」
もう嫌になって
階段から突き飛ばして
「打ち所が悪かっただけなんだ 。」
「もう此処にはいられないと思うし、
どこか遠いところで死んでくるね 、(笑」
自嘲する君に僕は言った 。
「じゃ、俺も連れてってよ 。」
財布を持って 「これが全財産かも 、」
ナイフを持って 「俺らだったら勝てるよ 。」
携帯ゲームも鞄に詰めて 「前やったやつ 、」
いらないものは全部
壊していこう
ずっと飾ってた写真も
残しておいたあの日記も
「いらないの…?」
「今となったらもういらない 。」
「これからずっと一緒にいるでしょ 」
「書ききれないくらいの思い出作りだ 。」
人殺しとダメ人間の 君と僕の 旅 だ___
そして俺らは逃げ出した
この狭くて醜いこの世界から
「翔太、ご飯だよ~ 」「バスケしようぜ ?」
家族も クラスの奴らも
何もかも全部捨てて君と二人で
「…ありがとう 、」 「運命共同体だろ 、」
「遠くて俺らしかいない場所で2人で死のう 。」
もうこの世界に’かち’などないよ
人殺しなんてそこら中湧いてるんだから
「涼太は悪くない 、」「絶対悪くない 、」
結局僕らは本当に愛されたことなんてなかったんだ
そんな嫌な共通点で僕らは信じ合って生きてきた
「行くぞ 。」
そう君の手を握った時
微かな震えもなくなっていて
誰にも縛られないまま二人線路の上を歩いた 。
とても静かだった 。
金を盗んで 「足りなかったね 、」
2人で逃げて 「後もう少しで …」
どこにでも行ける気がしたんだ
今更怖いものは僕らには無かったんだ
額の汗も
落ちたメガネも
「今っとなっちゃ…もうどうでもいいさ 、(笑」
あぶれ者の小さな逃避行の旅だ___
いつか夢見た優しくて
誰にでも好かれる主人公なら
汚くなった僕たちも見捨てずに
「救ってくれるのかな 、」
「そんな夢なんて捨てた」「だって現実を見てよ 、」
「シアワセ の4文字なんて無かったじゃんか」
「今までの人生振り返ったら分かるだろ」
「『自分は何も悪くねえ』って誰もが思ってるんだ 。」
あてもなく彷徨う蝉の群れに
水も無くなり揺れ出す視界に
怒り狂う鬼の怒号に
馬鹿みたいにはしゃぎあい
ふとした時に君の手にはナイフがあって
「翔太がいたからここまでこれたんだ」
「だからもういいよ」「もういいよ」
「死ぬのは俺1人で足りるよ」
そして君は—–
まるで映画のワンシーンだ
白昼夢を見ているような気がしたんだ 。
気付けば僕は捕まって
君がどこにも見つからなくって
君だけがどこにもいなくなって
そして時は過ぎていった 。
ただ暑い暑い日が過ぎてった
「翔太 。」「…じゃあな 。」
家族も クラスの奴らも
いるのに
何故か君だけが何処にも居ない
あの夏の日を思い出す
「全てが夢じゃないのか」って
僕は今も今までも歌っている
どんな夢であっても
君をずっと探している
君に言いたいことがあるんだ
九月の終わりにくしゃみをして
六月の匂いを繰り返す
君の笑顔は
君の無邪気さは
頭の中を飽和している
誰も何も悪くないよ
君は何も悪くはないから
もういいよ 投げ出してしまおう
そう言ってほしかったんだろう?
「なあ…?」
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コメント
3件
わぁぁぁぁありがとうございます〜‼︎ ゆり組めっちゃ良いです!! 何回も読み返しにきます!!!