だけど樹がいないまま、パーティー自体は、会場の雰囲気からそろそろ始まりそうな様子。
前にあるステージでは司会の人が進行し始めて、社長の挨拶がこれから始まるみたいだ。
「皆様。本日はREIジュエリーの創立20周年記念パーティーにお越しくださいまして誠にありがとうございます」
さすが社長がステージに立って話し始めると、一瞬でそのオーラと輝きで会場中の人々が注目する。
「私はこのブランドを立ち上げる際、ずっと夢だったこの世界でこれから生きて行けることにとても希望を抱いておりました。ですが、最初はなかなかうまく行かず理想どおりの道を歩めない日々が続きました。それと同時に私事で乗り越えなければいけない試練や現実が立ちはだかり、正直その当時はこの夢を諦めそうになりました」
社長がゆっくり語っていくその言葉は初めて聞く話だった。
今みたいになるまで、やっぱり苦労されてきたんだな。
「そんな時、私の夢に力を与えてくれる存在が背中を押してくれました。それからは私自身諦めず夢を叶えるために、まずは自分自身が自信を持ち輝いていないといけないと思い、作品を新たに作り始めました。それからは皆さんもご存知の通り、今となっては皆様に長年愛されるブランドになりました」
社長の話に会場が一体となり聞き入って、その語る世界に皆引き込まれる。
「そして今は私のように、たくさんの女性の皆様に自分に自信を持って、更に輝いてもらいたいという想いと共にこのジュエリーを届けています。どうぞこれからも皆様の輝きのお手伝いをさせて頂けましたら幸いです。今後もREIジュエリーをどうぞよろしくお願い致します」
こういう想いで作られているジュエリーだからこそ惹きつけられる魅力があるのだと、話を聞きながら改めて実感した。
そして私は、そんな自分になれていたのかと自分に問いかける。
前の恋が終わって傷付いて、もうツライ想いするのが嫌で、一人でいる方が楽なんだと、そんな風に自分で思うようにしてた。
誰かに甘えて信じて、また裏切られるのが怖くて。
そんな自分でいるうちに、いつの間にか自信も無くしていた気がする。
このネックレスから自信も輝く力ももらえてたはずなのに。
気付けばこれをつけることも自分で避けるようになり、そんなことも忘れてしまってた。
きっと、ホントは、ずっと涼さんといる時から自信もなかったのかもしれない。
結局は、愛されてる自信も、それ以上に愛す自信もなかった。
だけど、今は。
素直に自信を持って輝きたいと思える自分がいる。
そんな自分を樹には好きになってもらいたいと、今はそう思う。
だからもう逃げずに樹の気持ちを確かめたい。
樹が好きだと思えるこの自信と共に、樹を信じられる自信がほしい。
「透子」
その時、後ろから声をかけられて、その方向を振り向くと樹の姿。
「樹。どこ行ってたの?」
「透子。一緒に来て」
「えっ? 今まだパーティー始まったとこなのに、どこ行くの?」
「いいから」
一方的に樹がそう言って、私の手を握って会場の後ろの方へ振り返って一緒に連れて行く。
「樹。ねぇ。ちょっとどこ行くの?」
会場の人混みをかき分けて、手を握られたまま二人で逆方向へ進んで行く。
そして樹はそのまま黙ったまま、会場の入口のドアを開けてパーティー会場の外へ出る。
「えっ?パーティーは?」
「もう透子の用事終わったでしょ?」
「用時って何もしてないよ?」
「社長と話出来たでしょ?」
「あぁ。それは、うん。そうだけど」
「このパーティーは透子が社長と会って話してもらうのが目的だったから」
「えっ?そうなの?」
「そうだよ。オレいない方がちゃんと話せたでしょ?」
「えっ?それでいなくなったの?わざと?」
「まぁ。二人で話せた方が透子嬉しいかなと思って」
「あぁ。うん。それは。いろいろ二人だから話せて嬉しかったけど・・」
「なら、よかった」
樹、わざと2人にしてくれるためにいなかったの?
私のこと考えてしてくれたことは嬉しいけど、でも今のこの状況はどういうことだろ?
ずっと樹に手を握られたままどこかへ連れて行かれてる。
「これだけにパーティーに来たの?」
「まさか。ホントは透子連れ出すための口実」
「えっ?」
「ホントの目的は別」
「ホントの目的って何?」
「ついてこればわかるよ」
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