🍄「なぁ、車でどっか行かない?」
まいたけはふとそう言った。
🐷「いいじゃん。俺も気分転換したかったし、行くか。」
🍄「いや、俺が運転だからな?なんでお前が仕切ってんだよ、まあいいけど笑」
そんな他愛のない話だけして、大した荷物も持たずに車に乗り込んだ。
これは俺らの、俺らだけの逃避行。
ただただ車を走らせて、振動に揺られている。何処に行くかも決まっていないのに、不思議と心地良い。
🍄「あ、エンジンやばいかもな⋯。」
🐷「近くに車とか停めれる場所ねーの?」
🍄「あー、このトンネル抜けたら探してみるわ」
何分かしてトンネルを抜け、目を外にやると、目に入ってきたのは、朝日で赤く照らされた海。
🍄「すげー⋯」
🐷「これ⋯朝日?そんな時間経ってたんだな⋯笑」
🍄「スマホの電源落としてたから、時間見てなかったわ。」
🐷「それな、今見ても嫌な通知しか来ないしな笑」
付き合っているという報告をした。今の皆なら、受け入れてくれると思ったから。だが、反応は俺らの思っていた通りでは無かった。
今まで、好きだと言ってくれていた人達も俺らを貶すようになった。仲良くしてくれていた活動者とも、距離が出来た。それでもメンバーは普段通り接してくれた。
だが、とうとうメンバーにまで被害が出たらしい。
情けなくて、申し訳なくて、メンバーと目が合わせられなくなった。そこで、決意した。
🐷「お前らに迷惑かけるくらいなら、俺、抜ける。ごめんな、最後まで」
🍄「待って、そんな事言ったら俺もだろ?一生に償わせろよ笑 ごめんな皆笑」
2人は目を合わせニコリと笑う。
🌸「なんで、?2人悪くないじゃん⋯、そんな事気にしなくていいから、」
🐣「⋯なぁ、辛いんだろ?お前ら。今まで頑張ってきた仲間だろ、話してくれよ」
🐷「⋯そうだよ、辛いんだよ、お前らに向いてる悪意は、殆ど俺のせいなのに。ずっと、こんな、、。俺が抜ければ、アンチだって少なくなるだろ?笑」
🦀「そんな事⋯。でもっ⋯」
🍄「もういいから、な?俺らが居なくなっても、今のお前らならやっていけるから。俺ら抜きでも、東京ドーム、立てよ。見てるからな笑」
🦀「⋯っ、待ってよ、考え直して⋯」
🌟「無理だよ、もう。2人は戻ってこねーよ。そういう奴らだろ⋯笑」
近くの空き地に、車を停めた。丁度、エンジンが切れた。
🍄「あ、切れた。レンタカー、どうやって返せば⋯」
🐷「諦めるしかないな」
🍄「客として最悪やん⋯。じゃあ、ここら辺の散歩でもするか?笑」
🐷「あー、うん。どうせする事ねーしな笑」
2人で手を握り、並んで歩く。今だけは、誰の目も気にせず手を繋げる。それが、どれだけ幸せな事なのか、俺らは今まで分かっていなかった。
🍄「待って、あそこ、なんか入れそうじゃね?なぁポケ、行ってみよ!」
🐷「お前はなんでそんな事ばっか見つけんだよ笑まあいいよ、行くか。」
草むらをくぐり抜けると、そこは崖だった。下は海。海の匂いがする。
🍄「なんだここ、場所だけ見たらドラマやん!笑」
🐷「こんなとこあるんか、自然ってすげー。」
🍄「なんだそのうっすい感想。」
🐷「は?めちゃくちゃ深いだろ」
🍄「いや知るかよ⋯、まあええわ⋯」
不意に、辺りが静まり返る。
すると何かを決めたようにポケは立ち上がって、マスクを外し、こう言った。
🐷「もうここら辺に終わりにするわ。ごめんなまいたけ、一緒に居れなくて。」
そう言いつつも、ポケの声はいつもみたいに揶揄う事が出来ないくらい震えていた。そこで言葉の意味を理解し、ハッとする。
🐷「⋯愛してるよ。」
重力に耐えきれず、後ろの海に吸い込まれるポケの身体。
僅かに掴めたポケの手に身体を預け、追いかける。
🍄「待てよ」
🐷「は、なんで」
🍄「行くなら俺も連れてけよ笑」
🐷「⋯分かったよ。これからは2人で幸せになろうな」
🍄「いや、別に俺はポケと居れるだけで十分幸せだけどな」
🐷「⋯っ、何だよそれ笑」
見つめあって、ちゅっと軽いキスをして、存在を確かめるように、強く抱き締めた。
海に引きずり込まれるように落ちる2人を、程よく冷たい潮風が包んだ。そうして2人は抱き合ったまま海に姿を消した。
2人のスマホには、メンバーからの悲痛な程の大量の通知。だがそんな心からのメッセージも、もう届く事はない。
コメント
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泣いたの私だけですかぁ?😭
目から涙が…( ´•̥ω•̥` )ポロポロ
好きです😭😭