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**はる。** 第二話、めっちゃ良かった!龐皓水さん、登場がかっこよすぎるし「口を噤め、穢れが」からの白銀の墨で一撃って、マジで痺れたわ。口調は辛口だけど説明上手なギャップもいいし、陰を嫌ってるのもキャラ立ってる。んで、最後の禍福淆の街並みの描写で一気に世界観が広がった感じ。続きが気になる!
─右、左、右、右…目的も宛先もなく、迷路のように入り組んだ林の隘路を、足を擂粉木にしながら只管走る。
「椛!次は左だ、左に曲がるぞ!」
「わ、分かったっ!」
息を弾ませる様な疲労した声が背後から聞こえてくる。そんな椛の声に交じり、ガガガガ…と、木箱を切り崩す音が耳に入る。恐らくあの異形による音だろう。…普段から運動をしてない為か、鉄の味が口内に洋墨の染みの様に滲む。そう此方が四苦八苦しながら隘路を駆けている間にも、異形は俺達との距離を縮めて来ているだろう。追い付かれる前に、どうにかこうにか何処かで奴を撒かなければならないだろう。さもなければ、全滅は必至だ。
「椛、彼処の木の裏だ。裏に隠れるぞ!」
椛にはっきり聞こえる様な、然して異形に聞こえない様な声で椛の意思を伝える。滑り込む様に大木の後ろに隠れ、後を追う様に椛も隠れている。心臓が鼕鼕と、大太鼓を叩く様に大きく鼓動し、身体全体が其れに共鳴する様に脈打つ。コク…コク…そんな焦燥を切り裂く様に異形の跫と鬼気が直ぐ其処まで迫っていた。小刀の切っ先が首に向けられているかの様に身体が力み、一分一厘も動かない。まるで、金縛りの様に。
そう足元に火が及んでいる間に、異形は既に隣に迄刃を伸ばしていた。蠱惑的な音と共に、隠れていた木に刃が刺された音が聞こえる。上を少し見上げてみれば、其処には正多面体が浮いていた。死を直ぐ傍に感じながら恐怖を握りしめ、震慄しながら目を瞑る。然し、その刹那だった。
─「煩いぞ。口を噤め、穢れが。」
白銀掛かった墨が、刃の鋒を天に向けた異形に打つかる。
轟音が空間に鳴り響く。あまりに連続する波乱に、困惑しながら瞼を上げる。さっきまで直ぐ其処に居た筈の異形は消え、銀の艶のある墨汁のみが残っていた。思いがけぬ風景に呆気にとられていると、知らぬ声が聞こえてきた。その声の主は、銀の墨を放った者であはことは言うまでもないだろう。
「おい、御前等。何故此処に居る。」
反射的に声の聞こえてきた方に目を向ける。其処には白髪の、紅色の服装を着た女性が佇んでいた。余りの事に呆れていると、其の女性がもう一度口を開ける。
「聴こえてないのか?何故此処に居るかと訊いている。」
其処から暫しの沈黙が流れ、其れに伴い雰囲気が淀む。
「答える気は無さそうだな…まあいい、私に着いて来い。話は外で訊かせて貰う。」
そう女性が背を後ろに向け、一歩一歩と歩み始める。余りの連続の出来事に追い付けず、其の場で愕然としていると、其れに女性が気付いたのか、歩みを止め、口を開く。
「…御前等、何をぼーっとしている。着いて来いと言っただろう。」
其の一言が切っ掛けとなり、我に返る。肩を上下しながらよろよろと、身体を持ち上げる。其れに続き、椛も身体を上げる。
「御前等、余り見ない顔だ。私達の事とか余り分かってないだろう。もし、訊きたいことがあれば言ってみろ。」
女性が歩みを続けながら喋りかけてくる。其れを聴いたのか、隣から鈴を転がした様な、聴き慣れた何時もの声が聞こえてくる。
「じゃ、じゃあ、なんで私達を助けてくれたんですか…?あ、後名前も!」
そんな質問に対し、女性が返答を返す。
「名前を訊くのなら、自分から名乗るのが筋じゃないか?」
其れを聴き、椛が暇も無く即座に口を開ける。
「確かに…私は椛です。こっちは…」
「秋です。」
返答が耳に入ったのか、女性が何事も無かったかのように返事を返す。
「うむ、いいだろう。私の名は龐 皓水だ。好きに呼べ。後、助けた理由について…だったか?私は闢邪という団体に参加していてな。闢邪では、奈落の解明・殄滅、人命の救助を目的としていてな。そんな闢邪からすれば、御前等も当然人命だ。だから助けた。其れだけだ。」
その回答を訊き、一つ、大きな疑問が自分の頭に浮かんだ。奈落とは何かということだ。
「あの、すみません龐さん。奈落ってなんですか?」
そう、思ったことを其の儘口にする。其れに対し、辛口の返答が返ってくる。
「…御前、そんなことも知らんのか。 」
「すみません私もです。」
「………御前等なぁ、全く…いいか?」─
その後、龐さんから色々と様々な説明をされた。奈落は未知の原因で発生する球状の場所で、幻想子というエネルギーが存在していること。奈落では阴という人を襲う奴等が滾々と湧き出るということだ。勿論他にもある。どうやら俺達を襲ってきたやつが阴らしい。龐さんは口調の割に意外と説明が上手かった、あと阴を忌み嫌ってた。
「以上だ。分かったか? 」
「はい!大体分かりました!…けど、これ何時まで歩くんですか?」
椛が返事と共に更なる質問を打つける。阴から逃げた時に、足をこれでもかと擂粉木にしたのだから、その様な質問を投げかけるのは当然だろう。
「からか…じゃなくて、出口の話か。出口ならもう直ぐだ、後三・二分で着く。」
龐さんが途中で言葉を切り、別の表現に言い直す。然して何事も無かったかの様に続ける。
「何か言いかけてましたけど、何を言おうとしたんですか?」
椛が気になったのか、質問をもう一度投げる。だが、其れに対し返ってきたのは淡々とした返答だった。
「否、別に気にしなくていい。どうせ、御前等は知らない言葉だろうからな。」
その返事を聴き、椛の顔が膨れっ面になる。椛は負けず嫌いの性格だから、きっとあの一言が鼻に着いたのだろう。然し、時間とは存外早く過ぎるものだ。此方で懇談をしている間でも、出口への距離は着実に縮まってきていた。其処から少しの時間が経った時、既に出口の様な物が鬱蒼とした木々の隙間から覘いていた。又、時を同じくして、隣から龐さんの声が聞こえてくる。
「おい、出口が見えたぞ。」
其れに合わせ、椛がパッとその方に目を向ける。足を進めるほど、出口付近の建物の屋根が生い茂る木の緑から頭を出し始める。其の建物の頭がが三米ほどまで達した時、俺達は既に出口に到着していた。風景は俄と変わり、藹藹とした原生林から抜けた先に広がっていたのは、古代中国の寺を其の儘取り出したかの様な荘厳な景色であった。寺のような建物には「門金唐」と書かれた扁額が掛けられていた。予想外の風景に椛と共に目を惹かれていると、又もや知らぬ声が聞こえてくる。
「皓水さん、今日はやけに帰還が早いじゃないですか。もしかして、強敵から逃げてきたんですか?」
「復軽口を…相変わらず御前は冗談が好きだな。」
「好きって訳では無いです。所で、其処の御二人はどうしたんですか?」
声の方に目を向けると、其処には紅色の服を着た、 優しそうな男性が立っていた。
「実は奈落にポツンと居てな。阴に襲われていたから助けてきた次第だ。」
「そうなんですか?」
男性が此方を向いて質問してくる。其れに対し首を縦に振り、回答する。
「成程、まあ取り敢えず、奈落から出さないとですね。御二人は奈落から出てください。」
「嗚呼そうそう、その二人奈落のこと全然知らなかったから多分分からないぞ。」
「そういう事は早く言ってください。…では私が案内するので、皓水さんは引き続き仙木を続けてください。では御二人さん、着いてきてください。」
男性が其の言葉と共に背を向ける。その発言に従い、少し驚きの念を抱えながら着いていく。
「そうそう、名乗り遅れました。私の名前は覃 依福です。以後、お見知り置きを。然して、今から奈落を出るので、目を瞑りながら歩いてください。」
男性が話しかけてくる。どうやら依福と言うらしい。然して、其の言葉に従い、目を閉じ乍ら、見えない空間を歩く。目を瞑ってから数秒後、何かを通り抜けたような音と共に、依福さんの声が聞こえてくる。
「もう目を開けて大丈夫ですよ。」
其の言葉を聞きふっと胸を撫で下ろす。安堵を感じながら目を開けると、其処には大きく、盛んな街が拡がっていた。
「紹介しましょう。ようこそ、禍福淆へ。」─