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適当に食べられるモンスターを狩ろうと言う提案をしたクララ。
六駆のセブンイレブンで買い込んで来たものは何故か飲み物に偏っており、まだ空腹が満たされていない莉子もそれに賛同した。
芽衣は戸惑いまくっているが、伯父の木原久光監察官は人型のモンスターも料理して食べるらしいので、今度おじさんの話を聞くと良い。
恐らく、チーム莉子の狩猟の方こそ精神衛生が保たれていると知るだろう。
ただし、今は女子中学生らしく、やたらと逞しい3人にドン引きする事を許可しよう。
諸君の中にも反論する者は少ないだろう。
「この階層はダメだにゃー。メタルヒトモドキの残骸? 六駆くんが飛び散らかしたヤツの匂いがキツくて、ガッツリ食事をする気分になれないよねー。シュークリームがギリ許せるレベル!!」
「ああ、それはありますね! 面目ない! こんな事なら、適当に凍らせとくんでした!」
ちなみに、メタルヒトモドキと遭遇した際の一般的な正しい対処法は、まさに六駆が口にした通り。
氷属性のスキルで足場を凍らせて動きを止めて、その隙に通り過ぎる。
気付くのが遅すぎた。
「とりあえず、下の階層に行こー!」
「「おー!!」」
「芽衣はストレスでお腹いっぱいになってきたです……」
それから、チーム莉子は第5層へと下りて、そのままの勢いで第6層へと到達する。
理由は、イドクロア持ちのモンスターの少なさと、美味しいモンスターの不在。
彼らのレベルは既に日須美ダンジョンの1桁階層程度ならば、ちょっとしたピクニック気分で踏破できる域に到達していた。
やはり、ミンスティラリアの豊富な煌気に囲まれて過ごした1ヶ月余りの日々が効果的だったと六駆は語る。
スキルは体内の煌気の質も重要な要素だが、発動の際に外から取り込む煌気もまた重要である。
良質な煌気を集めれば、それだけ発動されるスキルも研ぎ澄まされる。
それを繰り返していたため、莉子とクララのスキルは以前よりも全て1段階上のものに進化していた。
ちょっと待て。クララは麻雀しかしていなかったじゃないか。
いや、そんな事はなかった。
彼女もたまに暇に任せて弓スキルを使っていたので、多分その辺でパワーアップしたのだ。
もしくは、ぼっち拗らせるとスキルの修練の質が向上するのかもしれない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
彼らは第7層へやって来て、ついにお目当てのモンスターと遭遇していた。
「おおおー! キッコマラビットの群れだ! あれ、美味しいんだよー!」
「ウサギって名前の割には凶悪な姿してますね。羽まで付いてますけど。あと目が鋭い! ははは!」
「でもでも、ウサギさんって単位が羽じゃん! 羽があってもおかしくないよぉ!」
クララは「あの羽が美味しいのだよ! カリカリに焼いて食べるの! 脂がのってて絶品なんだぞなー!!」とよだれを垂らしながら言った。
「よし! 芽衣! 倒してみようか!」
「みみみっ!? 無理です。ごめんなさい。これはさすがに無理です。ごめんなさい」
芽衣は、2メートル近くあるキッコマラビットをウサギと呼ぶ3人の認識が信じられずにいたのだが、師匠がそいつを狩って来いと言う方がより信じられなかったので、もうキッコマラビットをウサギ扱いするから勘弁してくださいと泣いた。
「大丈夫、安心して! 『瞬動』はとりあえずどうにか使えているし、武器は用意してあげるから。『貸付槍』。ほい!」
六駆の祖父、四郎が考案した数あるスキルの中でも珍しい、他人に煌気のこもった武器を具現化して貸し与える『貸付槍』。
本来、煌気具現化武器は使用者の手から離れると消滅する。
クララの強弓『サジタリウス』などが良い例だろう。
それを無理やり煌気を供給し続ける事で形を保ったまま他人に貸与するのが『貸付』シリーズであり、槍の他にも爪、刀、棍などがある。
これは余談だが、『貸付』シリーズ製作過程で生まれたのが先刻使用した『小太刀抜刀』。
絶えず煌気を放出し続けなければならないため、実に燃費が悪く利便性も低い。
四郎自身も「こりゃあ座興にしか使えんのぉ」と笑っていた。
ノリでスキルを作る逆神家。
改めて、恐ろしい一族である。
「その槍、芽衣の意志に応じて伸び縮みするから! まあ、適当に突き刺してごらんよ。あのウサギくらいなら、一撃で仕留められるよ! 多分!!」
「逆神師匠。多分って言うのが本当に怖いです。多分って、何パーセントくらいです? 芽衣は90%でも正直やりたくないです。多分死んじゃうです」
「万が一の時は、ちゃんと助けるから! うちのお姉さんたちが!!」
「遠距離からの援護なら任せとけにゃー!」
「わたしもこの距離なら、『旋風破』で助けられるよ!」
優等生の莉子さん、ちょっと間違える。
『旋風破』はつむじ風を真横に放出するスキルなので、この場合、芽衣が巻き込まれてひどい事になります。
「さあ、行こう! 僕の空腹は待っちゃくれないよ! 腹が減った時に食うのが強くなる近道だ!!」
「みみみみっ! ……やるです! 逆神師匠に何を言っても意味がないと芽衣は理解したです! 『瞬動』っ! みぃぃぃぃっ!!!」
女子中学生とは思えない諦めの良さで、芽衣がキッコマラビット目掛けて突進して行く。
彼女は近接戦において非凡な才を六駆に見出されているだけあって、まだ不格好ながらも見事に槍を使いこなし、なんとウサギを2羽ほど串刺しにして見せた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
芽衣が仕留めたキッコマラビットを、手早く捌く3人。
六駆が『光剣』で皮を剥ぎ、莉子が『太刀風』で各部位を切断。
クララは処理された肉を手慣れた様子で調理する。
「……おじ様。芽衣は探索員の過酷さを甘く見ていたです。おじ様に認めてもらえるくらい強くなったら。……絶対にすぐ辞めてやるです」
自分の意志で探索員になった訳ではない芽衣。
仕事を辞めるために仕事に精を出すと言う、意味の分からない決意を固める。
「さあー! 焼けた、焼けたー! 食べよう、みんな! 味付けは塩コショウだけでいくのが通の食べ方だにゃー!」
「いただきまぁす! はむっ! んーっ! おいしい! さっすが、クララ先輩! ダンジョンでご飯作らせたら先輩に勝てる人いませんよぉ!」
「羽が美味い! 手羽先をこんがり炙ったみたいですね! ほら、芽衣も食べなって!」
初めてのダンジョン攻略。
その初日にまさかモンスターの肉を食べさせられるとは、何パターンもネガティブな展開を想定していた彼女も思っていなかった。
「いただきますです。あむっ。……おいしいです」
「だよねー! ケンタッキーといい勝負できるよねー!! うまー!!」
「えっ!? あ、はいです。椎名先輩の言う通りです」
六駆の切り落としたキッコマラビットの首を眺めながら、芽衣はケンタッキーフライドチキンに思いを馳せる。
無事に帰ったら奮発してパーティーバーレルを買って、食べ比べてみよう。
多分、ケンタッキーの方がいいな。
そんな事を新人探索員の少女は思っていた。