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※Attention
こちらの作品はirxsのnmmn作品となっております
上記単語に見覚えのない方、意味を知らない方は
ブラウザバックをお願いいたします
ご本人様とは全く関係ありません
やってまいりました、青さん視点!!
昨日まさか500超えるなんて、
思ってなくて大慌てで書き上げました💦
500いいねありがとうございます!💕💕
先に桃さん視点を読んだほうが、
わかりやすい部分もありますので、
先にそちらを読むことをおすすめします。
(たぶん、この話だけでも読める、はず……)
いつも
俺に振り回されると思っている君
そんなこと
あるわけない
君だって
十分俺のことを振り回してる
仮に
俺が君を振り回していたとしても
俺が
振り回されるのは君がいい
「……ん……」
横でもぞり、と何かが動いた気配で、
俺はゆっくり目を覚ました。
「……ふふ」
寝ぼけたまま首だけ動かすと、
すぐ隣に、
見慣れすぎるくらい大切な存在。
愛おしい彼女の、
まだ少しあどけなさの残る寝顔があった。
規則正しい寝息。
無防備に緩んだ表情。
……ほんま、
起きとる時とのギャップが反則やと思う。
起こさんように、
そっと息を潜めながら眺めていると、
胸の奥がじんわり温かくなる。
15年間、幼馴染として
隣に居続けて
高校入ってからようやく付き合えた。
そして、
付き合ってから1年経った今、
こうして隣で眠っとるとか。
「……幸せすぎやろ」
声に出したら壊れそうで、
心の中だけで呟いた。
起きたらまた、
素っ気ない顔されるんやろなぁ、
とか思いながら。
それでも、
今この瞬間だけは、
俺だけの特権。
俺は、
その愛おしさを逃さないように、
そっと、優しく抱きよせる。
今日は起きたら
どんなことをしようか。
そんなことを考えているうちに、
また瞼が重くなっていって。
俺はもう一度
夢の世界へと落ちていった。
「……ろ、……きて。
ぉれ、死ぬ……」
ぼんやりと、
ないこの声が耳に届いた気がした。
「んぅ……?ぁ、ないこだ、おはよ」
重たい瞼を持ち上げると、
目の前で顔を歪めながら、
俺の腕をぺしぺし叩くないこがいる。
どうやらあの後、
抱き寄せた俺の腕が
ないこが寝返りを打った拍子に
首元に回ってしまったらしい。
苦しかったんやろうな、これは。
慌てて腕を下へずらすと、
ないこは、大きく息を吸った。
しばらくして呼吸が落ち着いた頃、
ぽつりと
「おはよ、まろ」
そう言って
ふわりと笑うないこ。
その笑顔が可愛いすぎて、
胸がぎゅっと締め付けられる。
「んー……」
間抜けた返事をしながら、
俺はそっと身を寄せて、
首元に額を擦り付けた。
「……離してくれたのは、
ありがたいんだけどさ」
その声と同時に、
ぐっと身体を起こそうとする気配。
反射的に腰へ手を回して、
離れないように引き寄せる。
「だめ。起きてるって分かったら、
離す理由ないやろ」
朝ぐらい、
ないこを独り占めしたってええやん。
「……俺、さっきまで
本気で死ぬかと思ったんだけど」
「せやな。ごめん」
最初はな、
正面向いとったから
ただ抱きついただけやったんよ。
まさか、
ないこが寝返り打つなんて
思わへんかったし。
でも、
離れへん1番の理由を挙げるなら、
「ないこがおらんくなるほうか困る」
それに尽きる。
この手の中なら、
いつでもないこを守ることができるから。
起きてる今は、
さっきみたいなことも起きへんし、
何かあっても、すぐ離せるしな。
「困る以前に、殺されかけてたんだって」
「だいじょぶや。ちゃんと生きとる」
俺がないこを殺すことなんて、
そんなこと、ありえへんから。
それでも抱きしめ続けていると、
諦めたみたいに、
力が抜けるのが分かった。
「……重い」
ぽつりと呟いたその一言に
「愛が?」
そう返すと、
「いや、体重が」
「ひどいわ、ないこ」
即答された予想外の答えが、
あまりにもないこらしくて。
思わず声を立てて笑ってしまった。
……あれ、ないこ。
もう、いない……?
ほんのひとときやったけど、
ないこを堪能できた。
本当は、
このまままだ寝ていたかった。
けど、あいにく今日は学校。
もう少し粘るか迷ったところで、
「もう一緒に寝ないよ」なんて、
死刑宣告みたいな脅しをくらって、
俺は慌てて飛び起きた。
さっきまで、
確かに同じ部屋で着替えとったはずやのに、
気づけば、ないこの姿はどこにもない。
……たぶん。
朝ごはんとか、
弁当の準備でもしてくれとるんやろな。
ずっと一緒に過ごしてきたからこそ、
相手の行動なんて、
考えなくても分かるようになった。
苦手なことは、
自然ともう片方が引き受ける。
どちらから言い出したわけでもない。
でも、それが当たり前になっていた。
「んー……」
軽く目をこすって、
制服を適当に着て寝室を出ると、
美味しそうな匂いが、
部屋いっぱいに広がっていた。
吸い寄せられるみたいに
キッチンへ向かい、
作業をしているないこに
後ろからそのまま抱きつく。
「なぁこ……俺、まだ眠い……」
あわよくば、
このままないこに抱きついたまま
もう一回寝られへんやろか……。
そんな淡い期待とは裏腹に
「はいはい、眠いのは分かるけど、
朝ごはん食べるよ〜」
ね、なんて言いながら、
緩くなっていた俺のネクタイを直すないこ。
……やっぱ、顔ええな。
ぼんやり見惚れていると
背中をぐいぐい押され、
強制的に椅子に座らされる。
ないこも
自分の椅子に向かおうとしたとき。
なんとなく、放したくなくて。
深く考える前に、
後ろに引っ張った。
振り返ったないこの顔は、
「なにがしたいん?」と
そのまま口に出してきそうなほど、
見事にムスッとしている。
……やば。
寝ぼけた頭を必死にフル回転させて、
咄嗟に思いついたのが
あ、これ、ええやん。
「可愛いね、ないこたん」
そう言いながら、
彼のネクタイを、
きゅっとリボン結びにする。
俺の急な行動に驚いたのか、
ないこは口をパクパクさせ、
「俺は可愛くねぇの!!
さっさと腕どかせ!朝ごはん食うから!」
と、どう見ても分かりやすい照れ隠しをした。
付き合って1年も経つのに、
可愛いと言われただけで、
こんなに初心な反応をするんが
ほんま、たまらん。
結局、ないこは席に座る前に
さっさとネクタイを外してしまったけど、
赤くなった顔までは
誤魔化しきれへんかったみたいで。
俺は、
その横顔から目を離せんまま、
のんびり朝ごはんを口に運ぶ。
……案の定、
じっと見られてるのに気づいたないこは、
また拗ねた顔になったけどな。
朝は、ないこから癒しももらえるけど、
同時に危険も多い。
……あぁ、よかった。
今日は、だれもおらん。
たまに、いつも通る道には、
生徒会長ファンクラブ、
要するに、ないこ好きの女子たちがおる。
俺らのことを
美味しい……?とか言いながら見とる子らは、
俺らの関係にも肯定的で、
下手したら協力までしてくれる。
でも、当然やけど、
全員がそういうわけやない。
否定的で、
面倒なことを言う連中もおる。
それが、
生徒会長ファンクラブ。
しかも、女子限定。
……ほんま、
厄介なもん作ってくれたもんや。
そのせいで、
ないこから見た俺は、
気まぐれに道を変えるヤバいやつ認定や。
まぁ、
ないこを守るためやし、
しゃあないけどな……。
……今日は、
何も起きへんと思っとったんやけどなぁ……。
正門をくぐろうとした、そのとき。
こちらを、じっと見つめてくる
一人の男子生徒が目に入った。
正直いちばん厄介なんは、
ないこに好意を寄せとる男子や。
俺と付き合っとる以上、
ゲイやってことは分かっとる。
その上、
顔もいい、頭もいい、
おまけに性格までええないこは、
男女問わず狙われる。
……本人は、
たぶん気づいとらん。
気づかせへんように、
俺が必死に隠しとるから。
あいつ……
確か、前に
ないこに告ろうとしとったやつやなかったか。
俺のないこは、
誰にも奪わせへんで?
そう思って、
牽制するみたいに、
ないこを引き寄せて抱きしめる。
腕の中に収めたまま、
その男子生徒を睨みつけると、
視線に気づいたのか、
相手はビクッと肩を揺らした。
仕上げに、
ないこの髪にそっとキスを落とす。
それだけで十分やったらしい。
男子生徒は居心地悪そうに視線を逸らし、
逃げるように走り去っていく。
……ふん。
俺のないこに手ぇ出そうとしたんが、
悪いんや。
ちょっぴり得意げになっていると
「……まろ」
ないこの低い声が俺の名前を呼んだ。
……あ。
相手に意識が向きすぎて、
周りなんか見えてなかった。
いつの間にか、
周りには黄色い悲鳴をあげる女子たちが
俺たちを取り囲むように
わらわらと集まってきている。
……え?髪にキスしただけやん?
「外国じゃキスは挨拶やで?」
その言葉を言った瞬間、
ないこの視線が、じとっと刺さる。
……あ、これ、
言うたらあかんやつやったな。
事態が大きくなる前に、とでも言うみたいに、
ないこは無言で俺の手を引き、
足早に教室の方へ向かう。
俺は引っ張られながら、
ちらりと振り返って
……人、多いな。
やっぱり、
ないこは俺が守らなあかん。
朝のSHRが終わったあと。
ないこは、
クラスメートの男子らに囲まれていた。
生徒会長やけど、
ふざけるときは全力でふざけるし、
ノリもいい。
そんなないこは、
生徒からの信頼も厚かった。
人気者なのは、誇らしい。
……誇らしい、んやけど。
正直言うと、
独り占めしたい気持ちも、少しはある。
そんなこと言ったら、
ないこは構ってくれるんやろか。
……いや、ないな。
きっと笑いながら、
「まろは家で構えてればいいでしょ」
なんて、さらっと言われるのがオチや。
ちらりとないこを見ると
今度はクラス委員の女子に
呼び止められていた。
「ねぇ、ないこくん。
今日の提出物のまとめ方さ、
この書き方で合ってる?」
「んー……ちょっと見せて」
そう言って、
ないこは相手の机に身を寄せる。
椅子を引かずに、
立ったまま、自然に距離を詰めて。
……近い。
俺の位置から見ても分かるくらい、
普通に、近い。
「あ、ここ。数字の並び逆になってる」
「え、ほんとだ!ありがとう!」
女子はぱっと顔を上げて、
少し驚いたように笑った。
「ないこくんって、説明上手だよね」
「そう?慣れてるだけだよ」
軽く流しているけど、
その声音は柔らかい。
そのまま、
ないこはもう一人、別の子にも声をかけられる。
「ないこー、
生徒会の掲示物って今日まで?」
「うん、そうだよ。
放課後一緒に貼りに行く?」
一緒に、の一言。
それだけで、
周りの空気がわずかにざわつく。
「ないこくんと放課後一緒とか羨まし」
「仕事とはいえ、距離近くね?」
……ほらな。
俺は椅子に深く座り直して、
視線を逸らした。
分かっとる。
ほんまに、分かっとる。
ないこはただ仕事してるだけ。
誰にでも同じ距離感で、
同じ温度で接しとるだけ。
それでも。
「ないこってさ、
頼ったらちゃんと応えてくれるよね」
そう言われて、
少しだけ照れたように笑うないこを見て、
胸の奥が、きゅっと縮んだ。
……その顔、
俺だけが見たいんやけど。
「まろ?」
不意に、ないこがこっちを見る。
「どうした?」
「……なんでもない」
そう答えると、
ないこは首を傾げてから、
小さく笑った。
その無自覚さが、
ほんまにずるい。
結局、
休み時間が終わるまで、
ないこはあちこちに呼ばれ続けて。
俺はただ、
席に座ったまま見守るしかなかった。
「いいの?いふくん。
ないちゃんとれちゃうよ?」
ぷきゅきゅと笑いながら
面白がるように言うほとけ。
「うるさいわ、あほとけ。
ないこがとられるなんてあるわけないやろ」
振り回されとる自覚はある。
でもな。
それでも離れへんって決めたのは、俺や。
……後で、
ちゃんと構ってもらうから覚悟しとき。
ないこ。
「寒っ……」
半袖の体操服姿のほとけが、
肩をすくめてそう零した。
「あれ、いむ。ジャージ忘れたの?」
……俺もだけどね、と苦笑いしながら、
同じく半袖のないこが、いむに声をかける。
「準備はしたんだけどさ、
たぶん玄関に置いてきちゃったんだよね」
「あー……分かる。俺もそれだわ」
……玄関にジャージなんて、
置いてあったか?
記憶を遡ってみても、
そんな光景は一切思い浮かばない。
たぶん、ないこは、
そもそも入れるのを忘れてたんやろ。
「ちゃんと準備するべきなんは、
どっちなんやろねぇ……」
ぽつりと落とした独り言は、
思ったよりもよく通ったらしく。
「うるさい。ジャージなんてなくても、
寒いだけだし」
そう言って、
ないこはぷいっとそっぽを向き、
頬を少し膨らませていた。
「よし、じゃあ今日は男女別でペアを作って、
持久走のタイムを計ってもらう」
体育科の先生が
やけに張り切った声で言った瞬間、
周りの空気が、目に見えて沈んだ。
……持久走って、
距離は長いし、地味にキツいし、
正直いい思い出がない。
「ほら、さっさとペアを作れ!」
先生の声を半分聞き流しながら、
クラス中が一斉にざわつき始める。
「一緒にしよー!」
「誰余ってる?」
そんな声が飛び交う中で、
すっと一本筋が通ったみたいに、
ないこの声が聞こえた。
「先生」
教室とは違って、
校庭でもよく通る声。
「今日は男子が奇数なので、
三人グループになっても構いませんか?」
「お、そうか。問題ないぞ」
先生の返事を聞いた瞬間、
ないこは迷いなく俺とほとけの方へ来て、
ぐいっと手を引いた。
「これで一緒だね」
当たり前みたいにそう言われて、
なんやかんやで一番安心する組み合わせやな、
なんて思ってしまう。
……まぁ、走るのはキツいけど。
ないこと一緒ならええか。
相談の結果、
俺が最初に走って、
ないことほとけは後から走ることになった。
「前半で走るやつ並べー。
時間ないからな、急げよー」
先生の声が響いた、その直後。
「っくしゅ」
小さく、控えめなくしゃみが聞こえた。
反射的に後ろを振り向くと、
ないちゃん、大丈夫?と声をかけるほとけと、
腕をさすりながら、
大丈夫、と返しつつも、
どう見ても寒そうにしているないこの姿。
……今の、ないこのくしゃみやな。
ジャージ必要やろ。
なかったら
走るまでずっと寒いままやで、ないこ。
先生が
もう一度集合をかけているのが聞こえて、
迷ってる暇はなかった。
俺は急いでジャージのチャックを下ろす。
本当は、
ちゃんと手渡してやりたかったけど、
そんな余裕もなくて。
そのまま、ないこの方へ放った。
「それ、着とき」
「っえ、まろは!?」
驚いた声が飛んでくる。
「俺は走ったら暑なるから」
それだけ言って、
俺は前列の方へと向かった。
放課後の生徒会室は、
昼間の喧騒が驚くほど静かやった。
来年の新歓書類に目を通していると、
ふと、ないこの手が
止まっていることに気づいた。
「どうしたん、急に黙って」
そう聞いても
「なんでもない」
「気のせい」
返ってくるのは、いつもの短い答えだけ。
そのまま視線を書類に戻した瞬間、
あぁ、そういうことか、って腑に落ちた。
「あー……昼のこと、思い出しとったやろ」
ないこは、
考えごとしとる時、
空気がほんの少し柔らかなる。
ほんのわずかな違いやけど、
それが分かるくらいには、
ずっと隣におった。
やから、
昼休みのことを思い出しとるんやろうなって、
すぐに分かった。
「……しょうがないじゃん、
怒るまろあんまり見ないんだし」
そう言ったないこが、
不満げな小さい子みたいで、
どうしようもなく可愛かった。
俺は書類を置いて、
椅子が大きな音を立てへんように
立ち上がる。
ないこの机の横まで行って、
ちゃんと視界に入る位置で、
そっと身を屈めた。
近づいた距離に、
ないこの視線が一瞬だけ揺れる。
何も言わずに、
ただ指先で、やさしく頭を撫でた。
くしゃっと髪が乱れる感触が、
いつもより柔らかくて、
胸の奥が少しだけ緩む。
「そうやなぁ。ないこに怒ること、
あんまあらへんもんな。
ごめんな、怖かった?」
でもな、
怒ってたのは、ないこやなくて、
ないこから目を離した俺自身やから。
ないこに怒るなんて、よっぽどのことしか
あらへんから、安心してや。
そう思いながら、できるだけ、
怖がらせへんように声を落として言うと、
ないこは小さく、ふるりと首を振った。
それを見て、
ようやく心が落ち着く。
……と、
コンコン。
まるで空気を読んだみたいに、
生徒会室の扉がノックされた。
名残惜しさを飲み込んで、
ないこの頭から、そっと手を離す。
「猫宮、いるか?」
扉を開けて、顔を出したのは、
俺らの担任だった。
「悪いな、こんな時間に。
ちょっと職員室まで来てもらえるか」
あー……またですか?先生。
「すぐ戻るから」
ないこにはそう伝えて、生徒会室から出る。
出る直前まで手を振っていたないこが
なんかいってらっしゃいって見送る
新婚みたいな感じで。
きゅっと胸の奥が高鳴った。
職員室に着いてみると、
中はがらんとしていて、
そこにいるのは担任と俺の2人だけ。
「……で?今回は何なんですか?」
一刻も早く戻りたくて、
先にそう切り出すと、
担任は、大きくため息をついてから
ゆっくりと口を開いた。
「……それは、
先生が悪いんじゃないんっすかね。
仲直りしたいんやったら、
ちゃっちゃと相手の好きなもん買って、
謝ればええのに」
「そうだよね!? あー!!
今日、ケーキ買って帰ろうかな!?」
俺らの担任の秘密。
それは、俺たちと同じでゲイで、
ちゃんと大切なパートナーがいるということ。
俺は、席替えで
ないこの隣にしてもらう代わりに、
たまにこうして先生の恋愛相談に乗る。
そんな交換条件で成り立っている、
少し不思議な関係や。
さすがに、
ないこには申し訳ないとは思うけど、
先生のプライバシーを考えると、
このことは話していない。
今回の相談内容は、
仕事が忙しすぎて、
つい喧嘩になってしまった、というもの。
話を聞きながら、
いつか俺らも、
こんなふうになることがあるんかな、
なんて、ふと考えてしまった。
「よし! 今日の仕事全部終わったし、
今からケーキ買って謝ってくる!!」
「おー……
それでええんじゃないっすかねー」
完全に棒読みだったのは、
どうか許してほしい。
俺だって、
早くないこのところに戻りたいんや。
そもそも、
俺に相談する時間があるなら、
そのまま相手のところへ行けばええのに、
なんて思ってしまうけど。
大人になったら、
そう簡単にはいかんのやろうな。
そんなことを考えながら、
俺は静かに職員室を後にした。
やばいやばいやばい。
俺、15分以上も職員室にいたん!?
よく耐えたな、俺!!
廊下を走らない程度に急いで歩きながら、
生徒会室を目指す。
ガチャリと少し乱暴に扉を開けると、
さっとないこが何かを隠すのが見えた。
「……ないこ? 何しとるん?」
背中を向け続けているないこに、
声をかける。
「い、いや? 何でも……」
返ってきた声は、
どう贔屓目に見ても、
明らかに焦っている声だった。
「ふーん……」
……分かりやす過ぎやろ。
たぶんやけど、
隠したのは窓の方。
黒板でもない、机でもない。
となると、ガラスに何か書いたんやろか。
「ほら、早く帰ろ、まろ。
準備して」
そう言いながら、
どうにか話題を変えようとしているのが
手に取るように分かる。
距離を詰めてくるその仕草も、
やたらと早口なところも、
全部が怪しい。
……ほんま、
隠し事するときのないこは、
分かりやすくて可愛い。
そういえば。
「なぁ、ないこ」
前から1つ試してみたくて、
試せんことあったんよね。
そう言って、
近くの壁にあった電気のスイッチを
バチンッと落とす。
部屋が完全に暗くならないように、
ポケットからスマホを出し、
ライトをつけた。
「面白いこと、知っとる?」
先程まで、ないこがいた場所に
歩きながら続ける。
「窓に書いた文字をな、
擦ったあとでも読む方法があるんやけど」
窓の前に立ち、
周りよりもわずかに曇り方の違う部分へ、
ライトを向ける。
その瞬間。
「ちょ、まろ……?」
上ずったないこの声。
「……ほら」
思わず、喉の奥で
くっと笑いが零れた。
「薄ーく、跡、残っとる」
反射した光の中に、
かすかな線が浮かび上がる。
もう、はっきりとは読めない。
けれど、確かにそこにあった痕跡。
これは……
「相合傘、やろ?」
ライトを少し動かして、
全体をなぞるように照らす。
浮かび上がったのは、
〝猫宮ないこ〟
そして
〝内藤ないこ・猫宮いふ〟
二つの名前を繋ぐように描かれた、
少し歪で、拙い相合傘。
……こんなん、反則やろ。
「……っ、ちが……」
言いかけて、
言葉を失ったないこの背中が、
ほんのり赤くなっているのが分かって。
俺はもう一度だけ、
小さく笑った。
「こんな可愛いん書いてたの、
別に教えてくれたってええやん」
「……うるさい」
出た。
ないこが照れてる時に使わん、うるさい。
それがもう可愛くて、
無意識のうちに距離を詰めていた。
スマホのライトだけの薄暗さでも
はっきり分かるぐらい
ないこの顔は赤い。
……まぁ、もし、見えへんかったとしても、
さっきのうるさいで
照れてるのは、確定やけどな。
「今、ないこ照れとるやろ」
「照れてない」
「嘘やって、絶対照れとる」
強がる声と裏腹に、
視線は合わへんし、
肩もほんの少しすくんでる。
窓の文字見るためとはいえ、
電気、消さんかったらよかったな……。
今のないこの顔、
ちゃんと見たすぎる。
……え、ほんまに可愛すぎんか??
「そもそもなぁ」
ふっと息を整えてから、続ける。
少しだけ、声を落として。
「ないこが、
俺の名前書いとる時点で、
もう可愛いんやって」
「書いてねぇっての……」
苦し紛れみたいな否定に、
思わず口元が緩む。
「相合傘の右側、
ちゃんと俺の名字あったで?」
そう言った瞬間
「……忘れろ」
って、ほとんど懇願するみたいな声が
返ってきた。
あぁ、これは、もう。
さすがのないこのお願いでも
「無理やな」
きっぱり言うと、
ないこは観念したみたいに肩を落とす。
俺の一生の宝や。
忘れるわけ、あらへんやん。
だって、
ないこのデレって、
こんなにも貴重やからなぁ……。
だからこそ、俺は思う。
「消えるもんに書くくらいが、
ちょうどええんかもしれんな」
そのほうが、
「今この瞬間の気持ちやって分かるし」
形に残るものよりも、
一瞬一瞬の積み重ねでできた思い出のほうが、
よっぽど大切な気がする。
少なくとも、俺は
そっちのほうが、ずっと嬉しい。
ないこは相変わらず、
まだ照れているのか、その場から動かない。
その隙に帰る支度を終わらせて、
俺は扉の前に立った。
手を差し出すと、
ないこは迷いもなく、その手を取る。
……その〝当たり前〟が、
たまらなく幸せだった。
廊下を並んで歩き、
靴箱へ向かう途中。
ふと、後ろから
ないこに手を引かれる。
「どした? ないこ。
忘れ物でもした?」
「……うん」
それなら取りに戻ろうか、
そう思って、
肩から緩く鞄を下ろした、その時。
指先に、ぎゅっと力がこもった。
「まろ、大好き」
そう、言われた。
……ほんま、
ないこはずるい。
今だって、
俺の感情を簡単に掻き乱して、
また何事もなかったみたいな顔して。
それでも
こんなふうに振り回されるのが、
嫌やないどころか。
むしろ、
手放したくない理由そのものなんやから。
形に残らんでもええ。
忘れられてまうもんでもええ。
せやけど、これだけは。
「俺は、愛しとるで。ないこ」
これだけは、覚えといてほしい。
ないこは、少しだけ目を見開いて、
それから、ゆっくり瞬きをした。
夜の廊下は静かで、
さっきまで聞こえていた足音や声も、
もう遠くなっている。
繋いだ手が、ぎゅっと握り返される。
言葉はなかったけど、
その力で全部伝わった気がした。
照れ隠しなのか、
ないこは少し顔を背けたまま、
「……急に言うなよ」
小さく、でも確かにそう言った。
その声が、
俺の胸の奥をじわっと温める。
「なんで。それはないこもやろ」
「……そうだけとさ、
心の準備ってもんがあるだろ」
自分も急に言ったくせに、
そっぽを向いたままそう言うから、
それが可笑しくてつい笑ってしまった。
校舎を出ると、
夜の空気が一気に肌に触れる。
冷たいはずやのに、
繋いだ手だけは、温かい。
「……明日も一緒に帰ろな」
ぽつりと呟いたその言葉に、
ないこは少しだけ笑って、
「当たり前だろ」
そう答えた。
その〝当たり前〟が、
何より大切で、
何より守りたいものやと思った。
今日も、
明日も、
その先も。
俺は、この手を離すつもりなんて、
最初からないんやから。
やから、
これからも俺を振り回してな、
ないこ。
なんと青さん視点10000字超えました……。
書いた人が一番びっくりしてます🤭
桃さん視点では回収されなかったところが
回収されていたらいいなと思います!
ちなみに、時間軸で言うと
青さん起きて抱きつく(青さん視点のみ)
桃さん首絞められて起きる
まろさん起きる
朝ごはん
登校(正門前でキス)
SHR前(桃さん視点のみ)
SHR後(青さん視点のみ)
授業1(桃さん視点のみ)
授業2(青さん視点のみ)
放課後
となっております!
少しややこしい展開になってます💦
あれ
そういえば、
青さん視点でも回収されていないところが
あったような……?
「大好きだよ」
「俺は愛してる」
聞いた瞬間、
胸が張り裂けるほど痛かった
やっぱり、お似合いの2人だ
僕の入る隙なんて1ミリもない
「あほとけ」
君の視界が僕に染まることはないのに
からかわないでよ
期待してしまうから
そんな時に会った君
「ねぇ、俺じゃだめやった……?」
君は僕を救ってくれるの……?
それなら、これから
振り回されるのは君がいい
700♡で投稿予定
コメント
6件
10000字だなんて凄すぎる……😭💕 青さん視点で読むと道を変えるのも桃さんを守るためだったのか…って分かって桃さん視点とはまた違う面白さがあって好きっ😖🎶 桃さんの方で見たら色んな人に青さんが声かけられて……ってイメージだったけどこう見ると青さんの方が愛が重かったり…?·͜· ❤︎ 読んでてきゅんきゅんしっぱなしだったし、まさかの続編……、!?✨ 楽しみすぎる…むりはしないでねっ、↓