「どこから話そうかな。…いいや、初めから話すね。」
麗ちゃんは意を決したように語り始めた。
ーー私はね、100年以上生きてるの。
信じる、と言ったけれど、信じられなかった。
だけど口には出さずに話を聞いた。
ー現在から約100年前
麗は貧しい古民家に生まれた。お金が無かった麗の両親は、麗を人買いに売った。売られた先が酷いところだった。昔は善人だと言われていた村人だったのだが、麗の両親が知らないうちに悪人と呼ばれるようになっていた。窃盗と殺人を繰り返し、度々暴力の騒動を起こしていた。麗も酷い扱いを受けた。暴言暴力の日々。当然名前など無かった。言葉を少ししか知らない少女だった。そして、麗は逃げ出すことを決意した。外の世界を知らなければ逃げ出さなかったが、家の外から見える子供たちが幸せそうにしているのを、麗は羨ましく思っていた。
村人がいない間に窓を飛び越え走り出した。初めて走った麗はすぐに息切れしたが、それでも走り続けた。
走って、走って、走り続けた先に希望を掴んだ。1人の少女とぶつかったのだ。麗よりも2歳ほど年上の少女。彼女は事情を察して家に招き入れた。
「大変だったのね。…あなたの名前は?」
麗は答えられなかった。名前が無いことがわかった年上の少女は、麗に名前を付けた。
「そう…。じゃあ、私があなたに名前をつけてあげる。そうね、綺麗な瞳と髪の毛だから、麗ちゃん!ふふ、安直すぎるかしら?」優しく笑う年上の少女を見つめ、麗は自分の名前を言った。
「わたし、れい…」
年上の少女は「麗ちゃん、よろしくね」と言った。名前を得た麗は、「なまえは…?」と聞いた。年上の少女を真似したのだ。
「あ、私も言ってなかったね。私の名前は、雨宮椛っていいます。」
もみじ、と復唱し、2人の生活は始まった。麗が初めて食べたのは、みたらし団子だった。麗の好物はみたらし団子になった。椛は紅茶が好きで、みたらし団子と紅茶をよく一緒に食べた。
2人が共に暮らすようになり、5年の月日が経った。家族のように仲良くなったが、喧嘩は一度もしなかった。
事件が起こったのは、椛の誕生日だった。
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