2人で誕生日パーティーを開き、みたらし団子と紅茶を食べた。本当はケーキを食べたかったけれど、お金がなかった。
楽しいひとときを過ごしていると、なんだか焦げ臭い匂いがした。なんの匂いだろうね、なんて呑気なことを話し、パーティーを過ごしていたけれど、その匂いの正体が分かってしまった。
火だ。
2人は火を使っていなかった。でも、火事が起こってしまったのだ。パーティーを中断して逃げようとしたが、火はすぐに2人を囲んでしまった。それでも避難しようとしたが、麗の頭上に大きな柱が落ちてきた。気付いた頃にはもう遅かった。麗は、どんっ、と押された。振り向くと、椛が柱の下敷きになっていた。
「椛!!」
「良かったあ、怪我はない?」
自分の状況が分かっていないのかと思った。それほど優しい声色だった。
「待ってて!今柱を上げるから!!」
麗は一目散に柱に駆け寄り、上げようとした。麗のような力のない少女にそんなものは上げられなかった。
「っなんで!!!」
麗は泣きながら上げようとしたけれど、びくともしない。
「麗ちゃん、もういいよ。」
咳き込みながら椛が言うまで、麗は何も聞こえなかった。麗よりも、椛の方が煙を吸っていた。麗は体が丈夫で多少の煙は大丈夫だった。だけど、椛は大丈夫では無かった。
諦めた椛は話し出した。
「あのね麗ちゃん。私、麗ちゃんと入れて幸せだったよ。」
麗はそれが最後に思えて止めようとしたが、椛はやめなかった。
「麗ちゃんは、助けてくれてありがとうって言うけど、私も麗ちゃんに助けられてたんだよ…」
ゲホゲホと咳き込む椛を見つめながら、麗は、うん、うん、と聞いていた。
「生まれ変わって会いにいくから、麗ちゃんは、死なないでね。…待ってて。」
うん、と言う声は情けなかった。
その時、救助隊が来た。
麗は抱き抱えられて、椛の救助が始まった。
「麗ちゃん、大好き」
「私も、大好き」
その会話が最後だった。
意識を失っていた麗は目を覚まし、病院の先生に椛はどうしたのかと尋ねた。わざと平然としていた。
「雨宮さんは…。」
その表情の曇りで、次の言葉はわかっていた。
「亡くなりました…。」
それと同時に、椛が身につけているピアスをもらった。これだけは無事だった、と。
目の前が真っ暗になった。絶望という2文字では言い表せないほどの絶望が麗を襲った。
涙も出なかった。生きているけれど、死んでいるようなものだった。食べ物が喉を通らず、このまま死ねば椛に会えるとも思った。それでも死ねず、麗は退院した。
行く先もない麗は、椛との会話を思い出した。
「あそこの森の中にある神社に、不老不死の薬を持っている人がいるんだって」
それを飲めば、椛を待てるかもしれない。
どう転がっても椛はいない。ならば、行動をしようと思った。それも椛に教えてもらったから。
「どうしようもない時は、自分が正しいと思うことをすればいいんだよ」、と。
そして麗は歩き出し、その神社ー御上神社に辿り着いた。
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