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夜のニュース速報テロップが静かに流れた。
**SixTONESライブ中の救護対応で観客一命救われる**
スタジオのキャスターが少し声色を変える。
「人気グループSixTONES のライブ中、アリーナ席で観客が意識を失い倒れる事案が発生しました」
映像には、ざわつく会場とスタッフの動き。
「この際、同グループのメンバー・天羽爽亜さんが迅速に対応し、救命措置を行っていたことが分かりました」
テロップが切り替わる。
「救急救命士資格を持つことも公式に発表」
スタジオが一瞬静まる。
キャスターが続ける。
「天羽さんは救急医学 に基づく国家資格を保有しており、現場では冷静に状況を判断し、AED使用を含む初期対応を行ったということです」
別カット、専門家コメント。
「極めて適切な対応です。医療従事者でなければ難しい判断を短時間で行っています」
SNSトレンドが画面右に表示される。
* #SixTONES
* #天羽爽亜
* #救急救命士
* #ライブ中救護
スタジオキャスターが少し間を置いて言う。
「なお、救護にあたった天羽さんはアイドル活動と並行して資格を取得していたことが分かっており、ファンの間では驚きと称賛の声が広がっています」
映像が切り替わる。
ライブ後の舞台裏。
メンバーが無言でうなずく様子。
田中樹「あいつなら当然だろって思ってた」
松村北斗「信じてたから任せた」
キャスターが締める。
「アイドルとしてだけでなく、一人の“救命の担い手”としても注目が集まっています」
画面には静かにテロップ。
“ステージの上と、命の現場の両方に立った夜”
撮影スタジオは、静かな白背景のセットだった。
光が柔らかく落ちて、天羽爽亜の輪郭だけがくっきり浮かぶ。
SixTONES の紅一点としてではなく、今日は“単独特集”の主役。
カメラが一度止まり、インタビューに切り替わる。
編集者が少しだけ慎重に言う。
「今回の特集、“努力の原点”について伺えたらと思います」
爽亜は小さく頷いた。
「中学生の頃から、少しずつ勉強していました」
その一言に、空気が変わる。
「きっかけは、さっき話したことと同じで…何もできなかった経験です」
視線はまっすぐ。
飾りがない。
「当時はまだ知識もなくて、ただ“怖い”しかなかったんです」
「でも、怖いまま何もできないのが一番嫌だと思って」
少しだけ間を置く。
「だから、まず本を読むところから始めました」
編集者が静かに聞く。
「中学生から、ですか?」
「はい」
あっさりした返事。
「最初は応急処置とか、救急の基礎とか。本当に基礎だけでした」
カメラマンがシャッターを切る音だけが響く。
「高校生になってから、もう少し本格的に勉強を始めて」
「実習とかも受けながら、最終的に資格を取りました」
言い終えたあとも、表情は淡々としている。
まるで特別なことではないと言うように。
編集者が少し息をつく。
「かなりハードな生活だったのでは?」
爽亜は少しだけ笑った。
「忙しかったです。でも、やると決めていたので」
その時、スタジオの外側にいたスタッフが小さく呟く。
「……中学生からって、普通じゃないよね」
その言葉に、松村北斗がぽつりと返す。
「普通じゃないから、あいつなんだよ」
インタビューは続く。
「その努力は、今の活動にも繋がっていますか?」
爽亜は迷わず頷いた。
「繋がっていると思います」
「人の前に立つ仕事をしている以上、“何もできない自分”ではいたくなかったので」
少しの沈黙。
そのあと、最後の質問。
「今振り返って、その選択は?」
爽亜はほんの少しだけ目を細めて答えた。
「よかったと思っています」
シャッター音が連続する。
その笑顔は、いつものアイドルの顔だった。
でもその奥にあるものを、
誰もがもう理解していた。
“守れる側でいたいと思った少女が、そのまま本当にその場所に立った”ということを。
雑誌の単独インタビューが公開された瞬間、SNSは一気に静かにざわつき始めた。
「中学生から勉強して高校で資格って…努力の種類が違う」
「軽い気持ちで読んだのに、途中から涙出てきた」
「“怖かったから勉強した”って理由がリアルすぎる」
「あの日の救護と全部つながった瞬間しんどい」
「救急救命士って“憧れ”じゃなくて“必要だから取った”なんだ…」
「爽亜ちゃん、ずっと“何もできない自分”が嫌だったんだね」
「この人、アイドルでいる前に一人の人間として強い」
「SixTONESの紅一点っていうより“もう一つの顔が医療従事者”なの凄すぎる」
「北斗くんの“あいつは昔からそういうとこある”で全部理解した」
「樹くんの“全部やってんのよ”も優しすぎて泣く」
「ジェシーが何も言わなかったの、信頼でしかない」
「慎太郎くんが一番最初に通路開けさせたの、この人を知ってるからなんだろうな」
「大我くんの“祈ってた顔”の意味が全部わかった気がする」
「“できなかった側だったから、できる側になりたかった”って強すぎる」
「ただの美談じゃなくて、生き方そのものだよこれ」
「努力が見えないタイプの天才じゃなくて、努力を隠してきた人だった」
「推しがかっこいいってこういう感情なんだ…」
「もう“アイドル”って言葉だけじゃ収まらない」
「SixTONESの紅一点、って軽く言えなくなった」
「尊敬ってこういう時に使うんだね」
「好きとかじゃなくて、ちゃんと生き方に惚れた」
「あのライブの日、意味が変わった」
タイムラインの最後には、同じ一文が繰り返されていた。
「この人を好きでよかった」