テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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社畜女子、不良男子に出会う【黒川イザナ】

第2話 - 🚬

1,025

2025年03月25日

#黒川イザナ

#tkrv夢

#ドラマ

#コメディ

#東京リベンジャーズ

黒透。

あの後、壊れたテレビのようにプツンと意識を手放した少年(仮定)を慌てて引きずるような形で自分の家まで運んだ。腕に精一杯力を込め、死人の様にダランと力の抜けた黒川サンをベッドへ運び普段は全く使わないエアコンの電源ボタンを押す。今月の電気代絶対見たくない。

『さっきよりかはだいぶ息マシになったかなぁ…？』

私の唯一の心の拠り所である寝床を占領し、スヤスヤと寝息を立てる少年を横目にそう呟く。視界に映る安心しきったように眠る少年の血色と表情は元の若々しさを取り戻しており、体調の面は恐らくもう心配することは無いだろう。フッと深く安堵するように息を吐き、同時にあまりの動転で真っ白になっていた頭に段々と色が戻り始める。

『…すっごい顔いいなこの子』

特にすることもなく、ここで寝るわけにもいかないので何となく目に映る少年の顔を見つめる。絵に書いたような綺麗で濃く、羨ましいほど長い睫毛。日本ではあまり見ない彫りの深い、目鼻立ちのはっきりした顔立ち。これが世にいうイケメンかぁ、と感嘆の息を吐きながら瞼を伏せ、眠り込む彼の顔のパーツ１つ１つを見つめる。日本人という雰囲気でもないし、ザ・外国人というのもなんだか違う。ハーフの方なのだろうか。

『…待ってこれ誘拐に入るのかな』

ぼんやりと少年の顔を眺める私の脳裏に１つの悪い予感が脳を刺激するようにスゥッと過る。いきなり気絶したからとはいえ同意得てないし犯罪かな。いますぐにでも家に帰した方がいいのかな。ていうか起きたときなんて説明すればいいのだろう。と新たに産まれてくる恐怖に似た不安の種たちにまたもや頭が白く塗りつぶされていく。

だけど時折苦しそうに小さく唸る彼の姿を見ると、とてもこの状態で帰そうなんて思えない。恐らく独り暮らしだろうし。

「…かあ、さん」

誘拐の件は一旦置いといて彼が起きたときの言い訳を考えようと、心の中で勝手に話をまとめ思考を片付ける私の耳に弱弱しい掠れた声が飛び込んできた。視線を下げると、それまで閉じていた形のいい薄い唇が細かく痙攣しているように動いている姿に驚きにヒャッと息を切る。

「シンイチロー…」

またもや乱れ出して来た呼吸に動かされるように唇も小刻みに動く。瞼は伏せられたまま。

寝言と思えないシリアスな面持ちで「行かないで」と懇願するような、何かを引き留めるような、そんな泣き出しそうな声色に妙に痛ましい感情が胸に広がる。

熱が出るほどの雨に打たれたにもかかわらず昼からずっとあんな所で一人。

─「…別に、死んでも良い」

うっすらと鼓膜に残った彼の虚ろな声が鮮明に言葉が蘇る。

苦しそうに顔を歪める少年の頭を安心させるように手の甲でガシガシと撫でる。

何か辛いことは合ったんだなとは察するけどその原因なんてこれっぽっちも知らないし、助けてやろうとも思わない。だってほぼほぼ初対面だし、生憎私の心はそんなに広くない。

ここまで丁寧に看病して助けないなんて、我ながら残酷だなと自虐気味に目から口へかけて冷たい笑いが貫く。中途半端な優しさが１番傷つくと分かっていてもどうしても放っておこうなんて思えない。何とも中途半端な人間だ。