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広がる砂丘に、風が吹き荒れる。
鳥取は、その場に膝をついていた。
「……これが、お前の実力か」
見下ろすのは、全国でも名の知れた強者のひとり、広島。
血気盛んな戦闘狂であり、中国地方の覇者。鳥取と同じく西日本に属しながら、圧倒的な実力差があった。
「全国バトル大会? はっ、身の程を知れよ、最弱県」
広島の拳が振り下ろされる。
避けることも、反撃することもできなかった。衝撃が全身を襲い、鳥取の意識は遠のいていった——。
「……起きろ」
目を覚ますと、視界に広がるのは見慣れた砂丘。
その隣に、腕を組んだ男が立っていた。
「お前、こんなもんか?」
豪快な笑みを浮かべる男。大阪だった。
西日本を代表する実力者であり、全国のトップにも引けを取らない存在。
「広島にボコられて、もう諦めるんか? 全国バトル大会に出るんやろ?」
「……でも、俺は弱い」
鳥取は拳を握りしめる。
小さな県、目立たない県、最弱と馬鹿にされる県。何をやっても、「どうせ鳥取だろ?」と笑われる。
「俺は、勝てるのか……?」
沈黙。だが、大阪はすぐに笑った。
「そんなもん、自分で決めるんや」
次の瞬間、鳥取の頬に拳が飛んできた。
よろけながらも、鳥取は歯を食いしばる。
「痛いか? せやったら、殴り返してこい」
大阪の目は本気だった。
ふざけているようで、心の奥には確かに「強さ」がある。
「……俺は、変わりたい」
鳥取は立ち上がる。
「強くなりたい!」
このままじゃ終われない。
最弱だと言われ続けるのはもう嫌だ。
だから——戦う。
ここから、鳥取の成り上がりが始まる。
(序章・完)