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おはよう。そしておやすみ。
今年も君たちの日がやってきた。
さあ、存分に暴れておくれ。
私たちを楽しませてくれないか。
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え゛何コレ、どういう状況なのコレ。
隣には女子。いや、女子高生。
彼女いない歴=年齢、
万年◯貞の僕には
あまりにも刺激が強すぎる。
さらにこの女はガッツリ
こっちを見つめてくるのだ。
大きくてキラキラした美しい薄緑の双眸で、
こちらをジッと見つめてくる。
曇りなき眼。
普通の男ならご褒美かもしれないが、
僕はド陰キャのコスプレネット弁慶である。
この状況は正直、
「無理。」
「なんでですか!
咎人コラボしましょうよ!」
いやお前、咎背負ってんのかよ、
可愛さが罪ってかこのガキ。
目の前の女───、剣持刀子は、
両の頬をハムスターのようにふくらませ、
プリプリと怒っている。
同じ四月馬鹿として一度は
会ってみたいとは思っていたが、
この女、限りなくあの顎にそっくりである。
初対面だというのにイキナリ、
『こんにちは!ピースサインさん…ですよね!
伏見さんのコスプレして配信乗っ取って
承認欲求満たしてるイタい人だって
刀也さんから聞いてます!
四月一日しか出られない者同士、
仲良くしてください!』
お前もだろうが!
お前だって体乗っ取って
好き放題してるだろうが!
媚び売りまくってんじゃん!
全然キャラに忠実じゃないし!
何なの!?失礼すぎるんだけど!
……なんて、言える訳もなく。
『せっかくですから、
一緒にゲームでもしませんか!?』
もちろん、今回こうなったのは、
向こうから誘われたからである。
現役女子高生を
野郎の家にあげるわけにはいかないので、
僕がお邪魔しているわけで。
……あれ、これもしかして、
初めての女子の部屋!?
と最初はトキメイたが、
ふと冷静になり、
この部屋は“彼”のものだったと気付く。
「無理無理無理無理」
気持ち悪い。
「じゃあ準備しますね!」
聞けよ人の話をさ!!!
……とは思っていても怒鳴れない。
女には強く出られないのだ。
観念して大変整った
憧れの配信設備の前に座る。
「すみません、イヤホンって持ってます?」
ワイヤレスなら。と取り出そうとすると、
「繋ぎ方わかんないんですよね……。」
「貸して!」
このままだと2人で1つのイヤホンを使う
『咎人てぇてぇ』を再現する羽目になる……。
相手が女だから僕が間違いなく燃える。
大炎上する。
それは避けたい。
「Bluetoothを起動して……。」
マウスが向こうにあるから、
自然と顔が近くなる。
近いよ、離れてよ。
そうやるんですね。と刀子が距離を詰める。
いい匂いがした。
フローラルな甘い香り。女の匂い。
「うああぁッ」
情けない声を出して僕は後退る。
「どうしたんですか?
なにか恐ろしいものでも
見たような顔をして。」
心臓の動悸が全く収まる気がしない。
僕のこと何だと思ってるんだこの女は。
襲われてしまうかも。とか考えないのかよ。
すると刀子は目を細めて、
全てを見透かすような目で僕を見、
ポツリと言った。
「できないでしょ」と。
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「……はぁ…やっと、やっと終わっ…た……」
「終わっちゃいましたねぇ…」
笑うその横顔が変に可愛く思え……
「違う違う違う違う!!!」
「何がですか?」
「あ、や……ごめん何でもない……」
「そう…ですか。」
こてん。と頭を傾げる刀子。
さらりと落ちる髪が
きらきらと蛍光灯の光を反射して、
緩く組んだ腕、
大きくてサイズの合っていない
制服の袖から覗く白い指が、
少し…愛おしく思う。
見ないようにしていた目と視線が合った。
意識していなかったが
よく見るとこの女めちゃくちゃ可愛い。
まさかあの顎だなんて思えない。
……思いたくない。
だなんて考えてしまう。
初めて伏見に来て欲しいと思ってしまった。
「そんなに見られたら溶けちゃいます」
うふふと微笑む。
眩しい。優しい笑顔に、つい。
「…可愛い。」
「………へ?」
しまった。と思った時には遅かった。
「ダメですよぉ?」
ニタニタと口角を上げ、
何とも言えない顔でこちらを見ている。
やめろ、そんな顔すんな
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
ない!ないから!
これは…そう!小動物を愛でる気持ち!
矢継ぎ早にまくし立てた。
焦って変なことを言っている気がする。
「あぁ、大丈夫ですよ」
「は?」
「私、あなたみたいな人は無理なんで」
にこやかに振られてしまった。
やっぱり僕は女運が無い。
ショックを受け、無言になる。
するとバツが悪そうに刀子が
「でも優しいお兄ちゃんみたいで好きですよ」
とトドメを刺してきた。
やっぱりこの女、嫌いだ。
コメント
4件
尊い🤦♀️
いや、好きです エイプリルフールの2人… 本当いいすっね!
久々の投稿 pixivの転載(公式)なんですけどね ちょっと手直ししつつ 加筆修正してあるので 楽しんでいただけたらと 思います リアルがバカ忙しい