テラーノベル
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──眠ってしまった鷹騰社長を見つめていたら、いつもテレビで見ている人がこんなに真近にいることが不思議にも思えてきた。
飲みに連れて行ってもらったりと、何度か近くで話したことはあったけれど、同じベッドで隣り合わせに眠るなんて信じられなかった。
それに、キスまでしてしまっただなんて……。
目の前の真一文字に引き結ばれた彼の唇に、指を伸ばして、そっと触れてみる。
さっきまでこの唇とキスしてたなんて、嘘みたい……。
触れた指先ですーっと横に掃いてみると、喉元から「ん……」と喘ぐような声が漏れた。
ボトムの際まで外されたシャツから覗く、固く筋肉の付いた胸が規則正しく上下するのを、ぼんやりと見るともなく見ていると、
なぜだかわからないけれど、無性に切なさが襲った。
ううん、本当はわかっていたのかもしれない……それを認めたくはないから、切なくなって……。
”それ”を……そう、こんな有名人な彼とは、現実には恋愛なんて、やっぱりできっこないんだってことを……。
気づいてしまったことに、涙がこぼれそうにもなって、
「……このまま帰ったら、全部なかったことになるかな……」
ひとり口にして、ベッドから脱け出そうとした。
──と、「……帰るなよ」
声が聞こえて、手首が不意に捕まれた。
「……えっ、起きて……?」と、その顔を見やるも、彼の瞼は相変わらず閉じられたままだった。
私の独り言に反応しただけだったんだ……だけど、手はしっかりと握られていて、
……そんな風にされたら、帰れなくなるじゃない、と。
もしかしたら、鷹騰社長も帰ってほしくないと感じていて、だから寝てるのに応えてくれたのかな……。
そう考えると、もう少し一緒にいてもいいのかなと思えて、自分からもぎゅっと彼の手を握り返した……。
心地のいい手の温もりに、いつの間にか眠りに引き込まれていたらしく……横でシーツの擦れる気配がして目を開けると、鷹騰社長が起きていて、驚いた顔で私を見ていた──。
面食らったように目を見開いて、
「……なんで、おまえがここにいるんだよ?」
唖然として口にする彼に、
「なんでって……」
呟いて返すと、酔っていて昨日のことをなんにも覚えていないのは、案の定にも感じられた。
「昨日の夜に、社長が酔っ払ってそれで……」
昨夜の経緯を説明しかける私を、
「……いや、そんなことより、」
と、彼が遮った。
「……酔って……俺は、おまえに何かしたのか?」
ベッドに二人で寝ている今の状況を、不審げに問いかけられた。
「…………。」しばらく口をつぐんで、それから、「何にも……」と、答えた。
キスはしたけれど、鷹騰社長は何もしないで寝てしまったのも同じで、されたことをそれ以上話す気もなかった。
「……本当になのか?」
念を押すように尋ねられて、
「本当にですから……」
ほとんどオウム返しに答えると、ちょっと複雑な気持ちにもなってくるようだった。
「そうか、よかった……。昨日のことは、酔っていてなんにも覚えてないんだ……」
「なんにも、ですか……」
やっぱりそうなんだ──と、思う。
キスをしたことさえも忘れられてしまったのが、なんだか寂しくもなってくる。
「……俺が、おまえのことを部屋に連れてきたのか?」
「そうです……」と、小さく頷く。
「……まったく何やってんだろうな、俺は……。いくら酔ってたからって、女性を部屋に連れ込むとか……」
「別に、もういいですから……」
後悔を感じさせる言葉を口にされて、投げやりな気分にもなってくる。
覚えていないだけでも傷つくのに、そんな風に悔やんでいるようにも言われたら、さすがに落ち込みそうだった……。
「それで……俺は、何か言ってたのか?」
本当に何にも憶えてないんだと、
「……計画が上手くいかなかったとかって……」
彼の話していたことを、当たりさわりのないよう口にした。
「……計画……」
と、鷹騰社長が、一瞬口を閉ざす。
ベッドから半身を起こし、背もたれに身体を預けると、
「……計画……M&A(企業買収)か。こんなはずじゃなかったんだがな……」
鷹騰社長は、ぼんやりと天井を仰いだ。
「仕事のことがあったとしても、あれほど飲み過ぎるなんて……」
体が心配になるから、せめてもうあんなに酔ったりはしないでほしいと思い、そう彼に話した。
「そうだよな……記憶をなくす程飲んだことなんて、今までなかったんだが……」
昨夜のことをたぐり寄せるように頭に手をやり、鷹騰社長が考え込む。
その様子を見ていたら、自分のことがなんにも彼の記憶に残っていないことがなんだか虚しくなってきて、あんまり長居はしないで帰った方がいいように思えた。
「悪かったな……昨日は、本当に。……迷惑かけただろ?」
「別に……」ゆるゆると首を振って、(迷惑だなんて、言ってほしくもないのに……)と、胸の奥の方で感じた……。
コメント
1件
え〜!!今回も胸がギュッてなったよ😭💕 主人公が寝てる社長の唇に触れるシーン、すごくドキドキした…!しかも「帰るなよ」って寝言で手を握り返すとか、無意識の本音すぎてときめきが止まらない…!でも朝になって全部忘れられてる切なさ、わかるよ…。キスしたことすら記憶にないって、寂しすぎる😢 でもお互いの距離がちょっとずつ縮まってる感じがして、次の展開が気になりすぎる〜!!🌸
R
23
#執着
さぶれ
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