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ここはとある小さな国。そこはとても小さな国だが、貴族や権力者が多くいる。国は王宮付近の“貴族土地”、そして貴族土地を木々で分けた先にある“平民村”と分けられている。私はそこの貴族土地の1人の貴族様の執事だ。何故か主様は多数執事やメイドが居るものの、平民村へ“探検”をしに行く時には毎回私を選んでくださる。私的にはそれは嬉しいのだが、ある意味厄介でもある。何故なら、平民村に行くと主様は必ずと言っていい程何かをやらかす。今日もまた私は主様にお供して平民村に向かう事になった。キラキラした笑顔をこちらに向けながら主様は私の名を呼ぶ。

「レオミス!」


「主様…今回は何方へ向かうのですか?」

私は半ば呆れたような声色でそう言った。だが主様はそんな事を一切気にしていない様な顔をして外を眺めていた。私はそんな主様がとても素敵だと思う。これでも主様は23歳…普通に成人していらっしゃる。だがやる事は子供同然だ。どうしてこうなったのか私にも検討がつかない。私は主様と同い年だ。だが、同い年にも関わらず…私が保護者に見られるのは何故だろう…そして主様のお陰で口述が上手くなった気がする。毎回どこかへ行く時には事件を起こす。それの謝罪をするときや、裁判へ持って行かれそうになった時の対処等…そして力仕事も少しは出来るようになった。主様が暴れたあと片付けに、壊した物の修復…その他諸々私がやっている。今回は何もしないで欲しい…私はそう願っていた

「ん〜着いた!」

主様は馬車から降りると欠伸をしながら手を上に伸ばし伸びていた。仕草も身長も好物も思考も何もかもが子供だ。だが主様は“ある事”が関連すると頭がフル回転する。それは…金平糖だ。主様は何よりも金平糖を好んでいる。その為何かを我慢したり、何かを成し遂げられたら金平糖を渡す…と言う事をしている。

話題は変わるが、この国では“魔力が強い者が強者”と言う本当に謎な法がある。階級が高い程強い魔力保持者と言う事だ。主様は強い魔力保持者だ。尚、私もそれなりには使える。魔力は水、炎、雷、雪、光、闇、土、草がある。上級魔法は光、闇。中級は雷、雪、水、炎。下級は土、草だ。

「レオミス〜僕あっち行くね!」

そう言い主様は裏路地の方を指差した。私は主様が何かやらかしそうだったので止めようとは思ったが、行動に移す前に主様は路地に入っていった

「主様…何もしないでくださいね」

私はそのような事を呟いたが、内心絶対何かをやらかすと思っていた。


これは流石に可笑しい。あれから2時間も経っているのに一向に何かが起こった気配がしない…あの主様が何かやらかさない事なんてあるのか!?いや、これが普通だ。普通の貴族様は何も問題を起こさない。主様も大人になられたものだ…私がそんな事を考えていると主様が好きな金平糖が売ってある駄菓子屋の店主が私に話しかけて来た。

「おぉ、レオミス!来ていたんかい?」

彼は主様が唯一迷惑を掛けない店、それと同時に弁解を手伝ってくれる私の信用出来る人の1人だ。

「えぇ、店主さん…主様を見掛けませんでしたか?」

私がそう問うと彼は意外と言うような顔をしながら、私に逆質問してきた

「ご主人も来ていたんかい!?おっかしいな…一向に事件が起きんじゃないか」

私はその質問に表情で同意した。そして彼は突然物騒な事を言い出した

「レオミスのご主人誘拐されてんじゃないか?」

私はそれが冗談だと分かっていても、何故か冗談だとは思えなかった。矛盾だ。だが、私は唯一分かることがある。主様はこんなに私を待たせることはない。

「ちょっと…私主様を探しに向かいます。店主さん、ここら辺で何か誘拐に関連する噂とか御座いませんでしょうか?」

彼は少し考えたような仕草をした後

「いやぁ、知らないねぇ」

と言った。私は次の策を実行した

私は一応平民村育ちだ。その中にも上、中、低、底辺に別れていた。上は少し裕福な者、中は普通、低は少し貧乏、底辺は家も食べ物ない所謂乞食だ。私は因みに底辺出身だった。私は運がそこそこ良かったらしく仲間には恵まれた。特に情報屋と知り合えた事が今私がこの職に付けている理由だろう。今からその情報屋に向かう。


「ライドル!いらっし…いるか!?」

つい敬語が出かけた。慣れ程怖いものはない。

奥の部屋からライドルが出てきた。彼は私が世話になっていた時に31歳。それから9年経っている。という事は40歳近いだろう。彼は面倒そうに頭を掻きながらこっちを見た。そして私を見て数秒硬直していたが、それが解けたのか急に表情を変えて此方に走ってきた

「お前…もしかしてレオミスなのか!?」

肩を捕まれ前後に揺らされる。私はこれに耐性が無かったら既に嘔吐していただろう。いつも主様関連で何かあった時こうされている。私もそろそろ吐き気が催してきた。それに耐えるため私は自分の口に手を当てて耐えた。それから20秒程度続きやっと解放された。

「ラ゛、ライドル…私は揺らされるのに弱いんですよ…本当に、辞めてください…」

私は壁に手を付き呼吸を整えた。その姿を見てなのか私の話を聞いてからなのかライドルはまた興奮して次は私の背中を強く叩いた

「お前敬語使える様になったんだな!?しかも一人称が私に…頑張ったな」

正直来なければ良かったと思ったが、今は彼に頼るしか無かった。主様を救出する為に。彼は私の服装が気になっているのだろうか少ししゃがんで視線を服に移した

「な、何ですか?」

私が困惑したようにライドルに問うと彼は視線を変えないまま返答した

「レオミス、お前なんの仕事に入った…野蛮な事じゃあねぇよな…?」

野蛮、では無いですよねあれ…いや、でもある意味色々なことに巻き込まれるから野蛮なのかも知れません

「私は職業柄少し荒っぽい事をする時も在りますが、殆どは育児みたいな物です」

あれは育児と同等だ。と私は確信している。腹が減ったと喚き出したら料理を提供し、暇だと喚き出したら散歩に付き合い、何かをやらかしたら私が弁解する。荒っぽい事とは主様の金平糖が盗まれた時に犯人と軽く戦闘をする等極めて簡単なものです。今思い返すと金平糖如きで大袈裟だったかもしれませんね。

私がそう思い返しているとライドルは血相を変えてまた私の肩を掴み前後に揺らした

「お前!そんな仕事辞めろ!お前の身に何かあったら困るのは俺何だぞ!」

彼の声は少し涙で濡れていた

「ライドル…停め、て……下さい」

私はもう限界だった。1回で私はもうお腹いっぱいだった。私のSOSに気がついたのか今回はすぐに辞めてくれた。

「因みに何の仕事に入っているんだ」

ライドルは声を少し落とし、世間一般的に言う噂話をする様な様子で私に聞いてきた

「貴族の執事ですよ…」

私は軽く呆れながらそう言った。それを聞くと彼は疑った。

「執事ぃ〜?お前にそんな事出来るのか?」

彼は私に疑いの目を向けながらも信用してくれた

「まあいい、んで?何の用だ?」

やっと本題に入れる…私はほっとした。そして真剣な眼差しで彼を見た

「主様が失踪したんです。だから探して欲しい。」

それを聞くとライドルは驚いたような顔をした。そして少し難しい顔をした。

「お前から頼むなんて珍しいな!だがな…主人は自分で見つけろ。情報は出してやる。だからそれ“だけ”は人に頼るな。」

私は軽く微笑んで「はい」とだけ返しておいた。それを見て不服だったのか彼は私に1つ要求して来た

「お前なぁ…ここに来たんだから手土産くらい用意しよろな?」

急で少し吃驚したが、私は対応力がある。私は何かないかと持っていた鞄の中を漁った。すると鞄の中から金平糖が入っていた銀色の瓶が転がり落ちた。それを見て彼は目を輝かせた。子供が「これ欲しい」と言うように

「そんなもので良ければ差し上げます。」

これは社交令嬢だと習った。だが、彼にはそれは逆効果だった様だ。

「そんなものぉ?じゃあもっといいモンくれよ 」

社交令嬢知らないのかな…まあいい、彼にはこれが一番だろう。私は鞄から角砂糖を渡した

「はい。これここじゃあ高く売れるらしいですね。貴方にはそれが一番良いですよ」

彼は暫く私の方を睨むように見ていたが軽く笑った。

「良く知ってるねぇ!俺もびっくりだ。これは大切に貰っておくよ」

彼は角砂糖を宝石の様に大切にしまった。

「喜んで頂き光栄です。」

私も彼の笑顔に吊られ微笑んだ。彼は私の前に1枚の紙を出した。それには誘拐犯のアジトや犯罪者の家の場所などが書いてあった。彼はその紙の一部にぐるぐると丸をした。

「ここだ。貴族様が捕えられるのならここしかない。ここは汚い金で貧乏人を吊り、半ば強制的に入会させられる。そして裏切ったら死、だ。」

私もこいつらに1度絡まれたことがあった。まあ、撃退したが。


「なぁ、そこの小僧金が欲しいか?」

あの時その大人は私にそう問いかけてきた。

「欲しいが、なんだ?」

この時の私は完璧に人を信じないを貫いているただの少年だった。

「良い仕事が有るんだ。来ないか?」

この時は腹が減っていたが、その輩が信じられずに、理由も無しに拒絶していた。その時の私に感謝だ。

「行く訳ねぇだろおっさん」

昔の私は彼を鋭い目で睨んだ。彼はわざとオーバーリアクションで「おお怖い怖い」と言っていた。そして表情を変え

「じゃあ俺たちの情報を知った罰だ。殺してやるよ」

大人は理不尽だ。勝手に自分に利益がある物を重宝しその重宝していた物が自分に反抗し出すと壊そうとする。

「やれるもんならやってみな」

この時に私は自分が能力者だと言うことがわかった。気が付くとその人間は原型も無しに倒れていた。私は自分が怖くその場を走って立ち去った。それからという物、私は街の人に冷たい目で見られるようになった

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