ずっと同じものだと思っていた。だけどジュンは俺を置いていって成長している気がした。 圧倒的な歌唱力。バラエティ番組での活躍。 勿論メンバーが成長するのは嬉しいのだが、皆が俺を置いていって最終的には楽園(エデン)を追放されてしまうのではないかと不安になって仕方がなかった。そんな不安があった俺。最近、その不安のせいで色々と失敗をしてしまった。具体的には、踊る場所が違ったりや会議の時間を間違えたりしていた。
レッスンの休憩中、
「…茨、最近なにかあったの?」
と閣下が急に質問してくる。その問いに裏の顔を隠して
「ご心配ありがとうございます!自分、元気ですし、なにもありませんよ!」
と答える自分がいた。…今すぐにでも安心させて欲しいという気持ちを隠して。
「……そっか。」
少し不安そうな表情をした後にすぐに休憩を終わり、またレッスンを開始した。 この放置が、このような事態を起こすとは想像もしていなかった。
俺はEdenのプロデューサーもしている訳だから、Edenの評判はしっかり確認しておかないといけない。だから俺は仕事が一段落したところで、エゴサーチをした。
「やっぱり殿下は人気が高いな…ジュンについても褒められてる。閣下は勿論完璧と…ライブの結果は上々ですな!あっはっは!」
俺しかいない場所で独り言を呟く。その時、俺について書かれているものが目に入ってきてしまう。
『凪砂様最高すぎる!!それに比べて、茨って最近ミス多くない?Edenからいなくなった方がいいってwwパフォーマンスのクオリティ下がるからどっかいけよww』
閣下のファンがインターネット上に書いたその文章を見てしまうと心の奥底にあった不安が一気にぐんと込み上げてきて俺はぽたぽたと涙を溢してしまう。
「はっ、、ひゅ、ごめ…なさ、い、」
呼吸も段々荒くなっていくのが自分でもわかる。
(あれ、呼吸ってどうやってするんだっけ、嘘、わかんない、だれか助けて、いやだ、追放されたくない…あ、やば…ぃかも、)
意識がどんどん遠のいていく気がした。その時に戸の開く音がした。
「茨~っ!飯食いにいきませ…………あ、えっ、大丈夫ですか?お、落ち着いてください…」
蹲っている俺に対して優しく背中をさすってくれる。なんだか、入ってきた人が商売相手じゃなくてジュンとわかった瞬間に安心した気がする。
「じゅん、俺…おれ…っ、」
「うん、」
優しく話を聞いてくれるジュン。あぁ、俺弱音吐いてなにしてるんだと思うが俺が口から出す弱音は止まらなかった。
「お、おれ、みんなにおいていかれてる気がして、こわかった、いつかついほうされちゃうんじゃないかって、、、」
「そうっすか。…茨、あんたは自分が思っている以上に愛されているんですよ。Edenのメンバーは勿論、2Winkの2人だって。伏見さんも茨の事が大好きです…っ!!」
次々と出されていく名前に困惑しながらもほんの少しだけでも安心できた気がした。
「…茨、大丈夫?」
「もうっ!心配させないでよねっ、悪い日和!!!」
落ち着いてきたタイミングで閣下と殿下が駆けつけてきた。
「でんか、かっか…しごと、は、、、」
「…茨の事が心配で来ちゃった。」
「ジュンくんに呼ばれたら行くしかないよねっ!!!」
「じゅん、、おれよりしごとのほうがゆうせん、、、」
俺のせいで、とか考えてそう言うが、殿下が、
「皆、茨の事愛しているから来たんだね!茨は1人で溜め込んでしまう癖があるからねっ!」
「…困った時は皆で困ろう♪」
「…なんですかそれ、」
リズムのよいポジティブな会話に少し笑みを溢してしまう。
(殿下らしいな…)
「…あ、笑った、」
「まぁさっき即興で決めた台詞なんだけどねっ!!」
即興なんかいっ!って突っ込みたくなるけど、今はまだ、そんな元気はないかな。
「…ありがとうございます、皆さん。」
俺がそう言った時、ぐぅ~~~、となるお腹の音。その音をならしたのはジュンだった。
「…あっ、そうだ、オレ茨に飯誘いに来たんだった。茨、気分転換に行きません?」
「…はい。あ、ジュン、カロリーには気を付けてくださいね。」
「…今ならバレないと思ったのに、」
「心の中が丸見えですよっ♪」
「落ち着いたことだし、ぼくたちは仕事に戻るね!」
「…行こうか、日和くん。」
その後のライブは、いつもよりトップアイドルの一員として輝けた気がした。