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「 ぅぁ 、 桃桃先輩 、 !! 」
食堂に足を踏み入れると 、 友達と談笑していた黄が顔を上げる 。
緑と同じ呼び方なのに 、 黄に呼ばれただけで嬉しくて口角が上がってしまう 。
黄に小さく手を振ると 、 黄が友達に
「 ごめん 、 すぐ戻るから っ 」
と言って俺の方に小走りでやってくる 。
「 奇遇だね 」
なんて笑ってみせると 、
「 はい っ 、 !!! 」
と黄が可愛らしい笑みを浮かべる 。
「 … 緑先輩は一緒やないんですか … ? 」
「 うん 、 職員室に呼び出されてたから 」
「 そうですか … 」
落胆したような黄の顔に 、 俺の心臓がどく 、 と嫌な音を立てる 。
「 そっかそっか 、 黄は緑が大好きだもんね ~ ? 」
なんて冗談を言ってみると 、 黄の頬が段々赤く染まっていく 。
… あぁ 、 そうか 。 そういうことか 。
「 なんで 、 それ知って … っ 」
「 ん 、 ちが … わないけど っ … 」
「 ぅぁ ~ … 」
耳まで赤く染めた黄がごにょごにょと呟いている 。
いつもなら愛おしくて堪らないであろう黄の顔が 、 俺の胸に呪いのように纏わりつく 。
「 … ごめん 、 」
やっとのことでそう絞り出した俺は 、 全速力で食堂を出て 、 旧校舎へ向かう 。
周りに誰もいないのを確認すると 、 俺は廊下に座り込んだ 。
今までずっと両想いだと思っていた 。
けれど 、嬉しそうに話し掛けてくるのも 、 英語を熱心に教えてくれていたのも 、 俺目当てじゃなかった 。
黄は俺を通して 、 俺の親友を見ていたのだ 。
「 … よりによって 、 緑かよ … 」
俺の独り言は 、 誰にも拾われることなく 、 静寂に消えていく 。
自分の好きな人が自分の親友を好きだと分かっても 、 諦めきれない自分がいる 。
だって 、 俺はどうしようもなく黄が好きだから 。
たとえこれが 、 叶わない恋だとしても 。
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