テラーノベル
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「佑月、一緒に帰ろうぜ!」
部活終わりの昇降口。スニーカーを履く手を止めて、佑月は顔を上げる。
そこには、笑顔の蒼真。汗で前髪が少し濡れている。息がまだ整っていないのは、走ってきたからだろうか。
「……なんでオレ?」
「たまたま、時間合っただけ。ダメ?」
「別に」
そう言って佑月は歩き出した。相沢が隣に並ぶ。二人の靴音が、夕暮れの校舎にリズムを刻む。
「佑月ってさ、いつからそんなに静かになったんだっけ」
「は?」
「昔はもっと、うるさかったじゃん。怒るとすぐ泣くし」
「それはお前がいっつもからかってきたからだろ」
「だって、反応いいんだもん」
「はあ……」
いつものような他愛のないやりとり。
でも、相沢の目はどこか真剣だった。僕はそれに気づかない。いや、気づかないふりをしていた。
その夜。布団の中。
佑月は天井をぼんやり見ながら、なぜか相沢の顔ばかりが浮かんでしまう。
「……」
胸のあたりがざわつく。でもそれが何なのか、わからない。
なんで、こんなに気になるんだろう。
なんで、蒼真のことを思い出すたびに――苦しいんだろう。
分からない…
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