「俺は言ったからな。知らないぞ」
ラウールに言われた、はいすいのじん?とやらの作戦で、恋人と2人きりの時はめいっぱい甘えるなんてことを、めめに言い切ってしまった
目の前のめめは、嬉しそうだけど、俺の言ったことが本当に分かっているのだろうか
恋人になったから今この瞬間から甘えます!なんてことができるほど、俺は器用じゃない
そんなの恥ずかしすぎる
だけど、ここで「今日は帰る」なんてことを言ってしまえば結局いつもと一緒だし、今度会った時にさらにハードルが上がるだけだ
それにやっぱり、好き同士だと分かったことは嬉しいし、その幸せに浸りたくはある
できたらめめの腕の中で
『大丈夫だから、素直にね』というラウールの声が頭の中で響く
そんなことをぐるぐると考えながら、身動きが取れずにいると、ふいにめめが手を差し出してきた
「翔太くん」
その手を見つめて、腕、肩、首と、めめの顔まで視線を辿らせていくと、優しくて溶けそうなほどに熱の籠った瞳と目が合った
このかっこいい人が、正真正銘、俺のことを想ってくれてるのだ
そう心に湧き上がった瞬間、ほとんど衝動的に、めめの胸に飛び込んだ
「めめ、めめ、好き、大好き」
ぎゅうっと首に抱きつき、溢れ出る気持ちがとめどなく口から流れ出る
「うん、翔太くん、好きだよ、大好き」
ゆっくりと落ち着いた声が耳元に落ちて、苦しいほどに背中を抱かれる
「っふぇ、んっ、うれしい、、っ、めめ…」
止まることのない気持ちが涙となって溢れる
俺が泣き疲れて眠るまで、めめは黙って抱きしめたまま背中を撫でてくれた
それからも俺の甘えチャレンジは続いた
「すきっていって」、「だきしめて」、「キスして」、、、「…あいして」
どれだけ我儘に甘えても、めめは全てに嬉しそうな笑顔で応えてくれた
恥ずかしい気持ちは変わらずだけど、自分が甘えたいと思う気持ちを表現するだけで、こんなにもよろこんでくれる人がいるのだということが、俺の心の抑制をどんどん外させた
ベッドの上でとんでもない恥ずかしい思いをさせられることは計算外だったけど、結局俺はめめの嬉しそうな顔に弱いのだ
めめに甘えるのが当たり前になってきた頃、お風呂からあがると、めめは何やらパソコンで作業をしていた
隣に座って覗き込む
「何してるの?」
「写真の整理、しばらくできてなかったから」
「ふぅん」
パソコンの画面を見るめめの横顔がかっこいいなと思いつつも、その顔がこっちを向かないのがなんだか寂しい
「どうした?」
「ぎゅってしたい、抱っこして」
「ん、おいで」
腕を開いて、あぐらを組んだ足をポンポンと叩いて誘導される
その中央に横向きに座って足を投げ出し、腕は肩に回して抱きつくと、少し前屈みになっためめの左腕が、俺の脇の下から回されて背中をぎゅっと抱き寄せられる
作業をするのには絶対に邪魔だろうに、俺のワガママは当然のようにすんなりと受け入れられた
そのことがまた俺をよろこばせる
あぁ、今、すごく幸せだ
胸がきゅーっと締め付けられて、どうしようもなく愛しいという気持ちが湧き上がる
身体中があったかくなって、今この瞬間が永遠に続けばいいのにと本気で思った
抱きしめる腕に力を込めれば、宥めるような優しさで何度も撫でられる
蓮の首元に顔をうずめて、目を閉じる
終わったよ、と蓮が声をかけてくれるまで、俺はふわふわとした温もりに身を任せていた
終わり
コメント
3件
甘える💙なんて可愛いしかないじゃないすか!最高でした💙💙
