テラーノベル
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「ごめん、飛彩。今の聞こえなかったからもう一回。」
私が訊いても屋上には沈黙が広がる。
唯一の音といえば、グラウンドから聞こえるウルサイ体育教員の声一つ。
飛彩からは、返事の代わりに私を後ろから巻き付けるtをどんどんと締めてくる。
「ちょ、飛彩?痛い。」
「、、、、ごめん。」
やっと飛彩が小さい口を開いた。
ついでに腕も緩めてくれた。
再び沈黙が広がり始めたその時、私の頬を雫が濡らした。
でも、今回は確実に涙ではない。
なぜなら、頬を雫が優しく伝ってきた感覚はなかったのだ。
後に頬だけでなく、腕や頭、色々なところに雫が合奏を始める。
「凪沙、雨。」
「うん。そうだね。」
「それより飛彩?5限目、もう始まってる。」
雨の中、私達はたわいない会話を交わす。
私はこの時間が好きだ。
このたわいない会話が好きだ。
その好きだけで良い。
それ以上は、今は望まない。
その言葉を批判するかのように雨脚はどんどんと速まってくる。
空を見渡しても、そこに広がるのは濃い灰色の重い雲。
私の身体を雨滴が包み込む。
温かいようで、とても冷たく、孤独だ。
雨が私達の制服を濡らす。
このままでは、飛彩が風邪を引いてしまう。
今、連ドラにも出演中のヨナを止める訳にはいかない。
ヨナが、飛彩が楽しそうにセットに立ち、セリフを撫でるところが一番好きなのはこの私なのだから。
遠くても、一番私の近くに居てくれる。
「好きだなぁ。」
こういう私の小さな声には飛彩が敏感だ。
「え、、?」
「ん?」
「い、今、好きだなぁ。って言った!?」
私は、飛彩の話を聞いて真っ赤に成り果てた。
聞こえるだなんて思っていなかった。
それに、私は気を抜いていたから口が緩んで呟いてしまっただけだった。
「あ、いや、そ、その、」
「ち、違う!!」
私は噛みに噛みまくり、赤く染まった顔を手で覆いながら誤魔化す。
「違うの?」
あぁ、ダメだ。
こういうときに限って飛彩が輝いて見えるんだ。
「違う、、、、。」
私は意地を張ってしまう。
「そっか。残念。」
「残念!?」
私は目を見開きながら、飛彩の方に勢いよく振り向いてしまった。
そこには、ニヤニヤとしている飛彩が居た。
「、、、、、え?」
「え? だって、違うんでしょ?」
「俺は凪沙のこと大好きだからな〜! 嫌われてるんだ、残念〜、、、。」
「な、大好きって!?」
私は少し赤らめていた顔を飛彩の爆弾発言でもう一度染めきる。
「大好きだよ?知らないの?」
「そっか。俺の事、知ろうとしなかったんだもんね。」
「いや、その、、、、。」
そうだ。私は、知ろうとしなかった。
「で、違うの?」
「いや、違わなくもないけど。それも違う。」
「どっち」
飛彩が笑ってくれた。
それが、私は
「ねぇ、どっち!」
さっきとは違う笑みを浮かべながら、私にもう一度訊く。
私は小さな声で答えた。
「好きです。」
「ほんと?やったー!」
飛彩は私のことを軽々と持ち上げ、くるくると回る。
「え、ちょ、飛彩?怖い、怖いから降ろして!」
飛彩は回るのを辞め、私を抱きしめて倒れる。
「凪沙、好きです。付き合ってください!」
私は抑えきれなかった笑顔で答える。
「はい、よろしくお願いします。」
飛彩のハイトーンの声が空に舞う。
「ちょ、飛彩、今5限目中!」
「ボリューム落としてー!」
ー㊗️カレカノ決定!その後、、、、、、!?ー
「飛彩、そろそろ戻ろうよ。怒られちゃう!」
「ふふ、凪沙は本当に臆病だなぁ。」
「え?だって!」
私は恐る恐るドアの方を見ると、、、。
「こらー!授業サボって何やっとる!」
「ひぇ!」
これは、さっきの体育教員。
学校一声がデカく、この区域一怖いと有名な教員だ。
「やべ、凪沙、逃げよ!」
そう言って飛彩は私の手を強く握って階段を駆け下りた。
その姿に、交際初日からキュンキュンが止まらない凪沙であった。
コメント
6件
どうやってこんなに良いのかけるの?
毎回いい作品書くね〜