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さくら
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すち「……夏の匂いだなぁ」
デザイナーという依頼と締め切りに終われた仕事。
うまくいく時もあるし、いかない時もある。
東京にくる前、
まだ世界の大きさを知らなかったあの日。
憧れの”トウキョウ”という
響きだけでも輝いて聞こえる場所に
オトナになったら絶対に行きたいと思っていた。
デザイナーになりたいという思いから、
美大に行く必要があった。
だから上京するチャンスを掴めた。
ちょうど上京する一週間前
東京スカイツリーがたった。
まるで、世界が上京してくる俺を待っているような
そんな気分に浸れた。
最初の2週間くらいは最高の気分だった
故郷の人間の声より虫の声が聞こえていた時とは大違いだった。
「東京」
住所を書くだけで何か嬉しい気持ちになれた。
だけど、
現実はそうは甘くない。
故郷では肩がぶつかりあうたび
「ごめんなさいねぇ」
と謝られ、こっちも謝り返していた。
だけどここじゃ、ぶつかったぐらいで謝罪なんてしない。
困ってる人も助けない
落とし物も見てみぬふり
笑顔の裏の偽善
お金欲しさでカツアゲでの弱いものいじめ
今までの常識が覆される出来事しかなかった。
大学をでてからも、
社会にもまれ、
依頼人からの厳しい条件
理不尽な態度
憧れだった「東京」のイメージなんて
これっぽっちも見当たらなかった。
___今は2017年8月
デザイナーとして働いて3年目の夏
あのむさ苦しいコンクリートジャングルは離れ
久しぶりに故郷へと帰ってきた。
新幹線で3時間、電車で1時間乗った先にある故郷。
あの時と同じようにその時間さえ、短く感じた。
東京の冷たい駅とは違い、降りると懐かしい木造の駅舎に触れた。
温度なんてないのに暖かいと思ってしまった。
東京では気づけなかった、
いや、気づくことができなかった。
夏の香り、
セミの鳴き声、
大きな山々、
澄んだ空気、
綺麗な雲、
清流のせせらぎ、
懐かしい景色が広がっていた。
実家は駅から少し歩いた所にある昔ながらの家
坂を上り、川道に沿って歩き、木のトンネルのような道を歩いた先のひまわり畑の奥にある、「萌葱」と表札のある家。
それが俺の家だ。
家に向かって駅を出て、
変わってない。
___何もかもが、変わってない。
坂が意外と急で登りきったあと、少し疲れちゃうし、
川の中には相変わらず魚が泳いでいて、
木のトンネルの葉っぱは青々と茂っている。
この安定感というか、安心感が
変わってなくて本当によかった。
きっとこの道を進んだ後は、
ひまわり畑が黄金に咲いていて、
綺麗なんだろうな。
何年ぶりだろう。
ちゃんと自然で育ったひまわりを見るのは。
東京のお花屋さんで売っているひまわりは
ホンモノってわかってるけど、
太陽の暖かみを感じれなかった。
花の専門じゃないのに、
何をいってんだろうって思ったけど
そう感じてしまったのだ。
木のトンネルをやっと抜け、
黄金のひまわり畑が見えた。
すち「…相変わらず、素敵だなぁ。」
思わず独り言が漏れたが、それくらい、
言葉で表せないくらい綺麗に咲いてるあたり一面のひまわり。
「萌葱 すち」という自分の存在よりも輝いて見えた。
すち「…?あれ?」
上京する前は人影なんて少しもいなかった。
自分の家だけが知ってる特権みたいに思ってた。
そこにはひまわりに負けていないくらい黄金に耀く髪の毛の持ち主がいた。
後ろ姿じゃ女の子にも男の子にも見える、
中性的な立ち姿。
ひまわり畑の真ん中にたっていて、
後ろ姿からでもわかるくらい、
愛おしそうにひまわりを眺めていた。
すると、その子が振り返った。
___思わず息を飲んでしまう。
太陽の光がまるでその子を照らしているかのように見えた。
なんて美しいんだろう。
弥琴「…?えっとここのひまわり素敵ですよね。」
その子は俺に気づいたのか声をかけてくれた。
すち「あ、…そうですね。」
みつばちとお花はお互いがお互いを必要としている関係だが、
彼女とひまわりはまるでひまわりのために彼女がいる。
ほんとにひまわりが似合う人だった。
弥琴「あなたもひまわりが好きなんですか?」
すち「えっと、はい…。」
弥琴「私も…お花の中で一番好きです。」
彼女が笑顔になる。
…その笑顔は凶器すぎる。
今までの疲れとか全部どうでもよくなってしまうぐらい。
弥琴「しってましたか?」
すち「あ、えっと、?」
弥琴「太陽神に恋をした水の精が姿を変えた姿がひまわりなんですよ。」
弥琴「だから、いつもひまわりたちは太陽の方角に向くんです。」
すち「へぇ…!そんな神話があるんですね。」
弥琴「…まるで恋する女の子みたいじゃないですか?」
いたずらっ子みたいに彼女が笑う。
どんな姿もほんとうに愛おしかった。
すち「そうですね…。ひまわりにそんなお話があるなんて思ってなかったです。」
弥琴「お花と神話はいろんな関係があるんですよ?」
すち「神話とか調べたことなくて…」
弥琴「私もお花についてしか調べたことないからだいじょーぶです!」
これを一目惚れというのだろうか?
そうならばこの思いを逃がしたくなかった。
弥琴「…あ、そういえば!ここに人がくるのって珍しいですね…、どうしたんですか?」
すち「あ、この先にある家が俺の実家で…」
弥琴「えっ!もしかして萌葱さんですか…?」
すち「そうです…、えっと萌葱すちっていいます。」
弥琴「あぁ~あ!あなたが!」
すち「???」
弥琴「えっとぉ、あの…大変言いにくいんですが…萌葱さんのお家に……居候させてもらってまして…」
彼女は気まずそうに目を背けた。
すち「…?えっ?てことは、夏の間は…」
弥琴「はい…一緒に住むってことになりますねぇ…」
すち「えっ!!」
驚きが隠せなかった。
こんな可愛いこと、一つ屋根の下で?
いくら両親もいるとして、
さすがに…最高…だけど!!
やばすぎる…。
すち「…えっと、名前は何なんですか?」
弥琴「!、ふぇ?」
「いいんですか…?」
すち「…?何が?」
弥琴「居候なんて!!…とか?こんな芋娘が自分の家にぃ?…とかってならなんだって思って…」
すち「そ、そんなこと思わないよ!!」
すち「むしろ…ウェルカムだよ。」
弥琴「…✨ほんとに?ありがとう!!」
弥琴「私の名前は向日葵弥琴!22歳です!」
すち「ひまわり…みこと?」
弥琴「そうです!…私がお花好きなのって95%くらいは名前に運命感じてるからなんだよね!」
すち「…素敵な名前だね。」
弥琴「ほんとに?ありがとう!」
___こうして、俺の想像もしていなかった夏が始まった。
【トウキョウに帰るまで残り31日】
コメント
2件
めっちゃ話良い‼︎ ってか、サムネ(?)タイトルの画像すごい✨
わあ〜第1話からもう胸がぎゅーってなったよ😭💕 東京での疲れと故郷のひまわり畑の対比がすごく綺麗で、すちくんの「帰ってきた」感がじんわり伝わってきた!ひまわり畑で出会った弥琴ちゃんの笑顔が「凶器すぎる」って表現、めっちゃわかる〜! しかも居候って!?これから一緒に住むって最高すぎるでしょ!31日間の夏、どうなっちゃうの…!続きが気になって仕方ないよ🌸✨