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犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話(番外編)です
今回はクリスマスにロシアンルーレットネタになります
「ロシアンルーレット・再」
四肢を後ろで壁に繋がれ、その手段となっている金属のチェーンはじゃらりと鈍い音を奏でる。
まるで十字架に磔にされたキリストのようだ。
殴られすぎたせいか、先刻打たれた注射のせいか…頭がぼーっとする。
それでも目の前で繰り広げられている展開を理解できないほどではない。
「やめ…っ」
止めたいのに、絞り出す声は音としても心許ない。
はっきりとした発音を得ないまま、俺は絶望に似た気持ちで正面に虚ろな目を向けた。
ここは、今回の敵のアジト。
地下深くの一室、俺の目の前でボスらしき男と対峙しているのはまろだ。
下卑た過装飾の椅子に深く座って足を組む偉そうな男が、「早くしろ」と言わんばかりにまろに顎で合図する。
「ま、ろ…っ」
止めたいのに止められない。
喉が焼けたようにひりひりして声が出ない。
そんな俺にはすぐ隣でナイフが向けられていて、まろはそれを横目で一瞥した。
…分かってるよ、俺のせいだよな。俺がこうやって捕まっているせいで、まろはこんな低俗なヤツの言いなりになるしかなくなってしまったんだって。
「今日はクリスマスだしな。ゲームといこう」
短い足を組んだ巨漢の男は、まろの目の前のテーブルを今度は煙草を挟んだ手で指し示した。
そこには黒光りした銃がある。
込められた弾は一発。シリンダーは先ほど回転させられた。
そしてまろの前には、そのボス以外にもう一人の黒服の男が立っている。
「ロシアンルーレットとか趣味悪。それに、失敗したらあんたのそこの部下、死ぬけどいいん?」
テーブルの上に左手を伸ばしながらまろが呟いた。
それを鼻であしらうようにして、ボスは笑う。
「そんなもん、うちには覚悟できてる奴しかいないんでな」
「ゲームに命賭けるんが覚悟? …くだらんな」
言いながらもまろは伸ばした手で銃を握った。
ゆっくりと持ち上げ、そのまま自分のこめかみへ突きつける。
「まろ…っ」
「うるせぇな!」
ナイフを向けていた男の膝が、俺の腹にめり込んで鈍い音を立てた。
「かは…っ」と咳き込むことすら虚しく、目の前の状況を止める手立てはない。
まろが、トリガーにかけた指に力をこめようとしているのが分かった。
思わず眉を寄せてその信じられない状況を見やる。声はやっぱりそれ以上出せなかった。
かちり、と乾いた音が室内に響いた。
ふぅと息をついたまろが、銃をテーブルに戻す。
そして目の前の男の方へ向けて机上でスライドさせた。
しゅるんと回転しながら前で止まった銃を、黒服の男はためらうことなく取り上げる。
そしてそのままさっきのまろと同じように自身のこめかみに向けた。
……自分の命が惜しくないのか。まろの言う通り、本当にこういう連中の考えることはくだらない。
ゲームで命を落としたりしたら何にもならないのに。
男の指がトリガーを引く。
また「かち」と無機質な音が響いただけだった。
そしてそのまま、その銃はまたまろの元へ。
…頼むから、もうやめてくれ。
俺はこんなくだらないことでまろを失いたくない。
敵の罠にまんまとかかったせいで、恋人の命まで落としたなんてことになったら俺はきっと一生自分を許せない。
無表情のまま目の前の連中を睨み据えながら、まろはまたトリガーを引いた。
再び静寂に響く空っぽの音。
…これで6発中の3発がはずれで終わった。
「ほぅ」と妙に感心したような声を漏らして、ボスは楽しそうに笑って顎をさすっている。
黒服の男は、4発目もためらいなく引いた。
…いや、ためらいなくどころかにやにやと笑っている。
…頭おかしいだろこいつら。
あぁ、だめだ。盛られた薬のせいで頭がぼーっとして、内心での罵りですら語彙力が皆無になっていく。
5発目。確率は2分の1。
もしこれで弾が出たら、そうだここにいるこいつらを何としても殺そう。
今身動き一つすら取れない状況のくせにそんなことしか頭が働かない。
自分の腕と足を何とか切り落として這いずってでも、こいつら全員殺してやる。
そう思った瞬間、まろがトリガーを引いた。
かち
静かに響く聞き慣れた音。
ボスも黒服の部下も…俺にナイフを向ける男でさえも目を見開いた。
…かと思った刹那、その三者の油断の隙を突いて、まろが「だん」と力強く床を蹴る。
目の前の部下の頭を足を振り上げて蹴りつける。
ごきっという鈍い音がしたから、首の骨辺りが折れたかもしれない。
そう思う間もなく、手では隠し持っていたブラスターを俺の隣の男へ向けた。
白いレーザーが、飛ぶようにまっすぐその眉間を貫いていく。
「…っ!」
一瞬のできごとに、ボスは声を失った。
猫のようにしなやかな身のこなしで、まろはそのままテーブルの上に乗り上げた。
板面に片膝をつく態勢で、椅子に座ったままのボスに、さっきまでロシアンルーレットをしていた銃を向ける。
「社長さん、クイズでもしましょうか」
ボスの広すぎる額で、ごり、と突きつけた銃が音を立てた。
「リボルバーに装填した弾は一発。五発は不発。さてじゃあ今トリガーを引いたらどうなるでしょうか」
おかしそうに笑みを含んだまろの声に、ボスの顔がみるみる青ざめていく。
「や、やめろ…」と絞り出した声すらも品がなかった。
悪魔でも見るみたいに、恐怖に慄いた目で、テーブルの上から自分に銃口を向けるまろを見据えている。
「Happy Christmas――」
甘く優しいくせに狂気を孕んだ声で、まろは流暢にそう告げた。
それと同時にトリガーを引く。
だけどその瞬間、銃口から放たれたのは鋭い実弾ではなかった。
ぽん、とでも音が出そうな軽い空気と共に、そこからは赤い作り物の薔薇の花が飛び出す。
思わず目を瞠った俺の視線の先で、ボスは驚きと恐怖の余りか、バランスを崩して椅子ごと後ろに倒れた。
失禁してシートはじわりじわりと染みをつくり、泡を吹いて目を剥く。
「気絶したか、意外と覚悟ないな」
揶揄するように言って、まろは手にした銃をぽいと投げ捨てた。
自分のブラスターは太腿の定位置であるホルスターに戻し、テーブルからひょいと飛び降りる。
そのまままっすぐ俺の方へと近寄ってきた。
「…ごめんないこ。助けに来るん遅なって」
「……おま…っいつ銃入れ替えたんだよ…! 見てるこっちは生きた心地しなかっただろ…っ!」
「んはは、ごめんごめん」
俺を壁にはりつけている錠を外し、まろは自分のジャケットを脱いで俺の肩にかけた。
あのボスと部下に破られたシャツのせいで、鎖骨はおろか胸や腹まで露わになっていたから。
それを隠すようにして、まろは俺をぎゅっと抱き寄せる。
「……ごめん」
最後にもう一度呟いたまろの声は、さっきまでの笑いを含んだ響きはなかった。
ただ本当に悔いるように…懺悔するように重く俺の耳を突いた。
今回の標的である組織の悪評は聞いていた。
悪辣な上に下品。ボスがその最たるもので、男色の気もあるらしいから捕まったりしたらどうなるかなんてわかりきっていた。
分かっていたはずなのに、ないこが罠にかかるのを防げなかった。
助けに行ったときにシャツを切り裂かれ素肌が露わになったまま繋がれているないこを見た瞬間、脳が沸騰しそうになったのも当然だ。
「なぁないこ、あいつらにどこ触られたん?」
敵のアジトを脱して一時避難したホテルで、ないこの背中に唇を寄せる。
「教えて。全部上書きしたい」
そう言っても、俺の下でうつ伏せの状態のまま、ないこはふるふると首を横に振る。
「…や、だ…思い出したくもない…」
頑なにそう言って口を割ろうとしないのはここへ来てからずっとだ。
…どれだけおぞましい行為を強いられたんだろう。
そう思うと、やっぱりあのボスも警察に引き渡すなんて生温い対応ではなくて殺してしまえばよかった。
後の証拠が欲しいからと、本部にはボスの殺害だけは止められていた。
そのせいで何とか踏みとどまったけれど、その命令がなければこの手をためらいなく振り下ろしていたに違いない。
傷ひとつない背中にちゅ、ちゅ、と音を立ててキスをする。
その間に、浮いた腰の隙間から前へと手を差し入れた。
ないこの中心をやわりと掴むと、跳ねるようにして顎がシーツから持ち上がる。
思い出したくないなら、可能な限り全部を上書きしてしまえばいいか。
そう思ってもう片方の手をシーツとないこの胸の間に差し込む。
その突起にぎゅっと摘まむようにして触れた瞬間、ないこの腰が一層大きく揺らいだ。
「……んん?」
一通りの行為を終えて片付けも済ませた後、ボトルの水を呷りながら俺は窓辺の椅子に座って首を捻った。
シャワーを浴びた後で上裸。下だけスラックスを履き、肩にはバスタオルをかけた格好だ。
ないこの方はというと、シャワーを浴びて体を清めた後、またベッドに沈んだ。
首を傾げる俺を、枕に頭を埋めたまま見上げてくる。
「なに?」とでも言いたそうな顔で。
ありとあらゆる可能性を考え、隅々まで上書きのつもりで行為に溺れてはみたけれど、終わった後に多少の違和感を覚えてしまった。
ないこの体には、傷や何らかの跡なんてものはなかったし、後ろも無理矢理広げられたような形跡はなかったのだ。
「…ないこ、もう一回聞くけど、あいつらに何されたん?」
そう問うと、あいつは事後のけだるさを残した声でそれでも「あは」と笑って返した。
「同じ空気吸わされたかな」
「は!?」
「まぁ、まろが来るのがあと数分遅かったら本当にレイプされてただろうけど。シャツ破られてズボンの前開けられるとこまではやられたし」
「はぁ!?」
そうだとしたら「思い出したくもない」なんて言った理由は!?
そう続けると、ないこは今度こそおかしそうに笑った。
「いや思い出したくないだろ、あんな奴らの顔なんて。まぁそれだけじゃなくてさ、まろが悪いよね。『上書きしたい』とか言うから」
上書きってなんかえっちでいいじゃん、やられたいじゃん、なんて悪びれもせずに続ける。
はぁぁぁとクソデカため息が漏れたけれど、呆れたというよりは安堵の意味も含まれていたに違いない。
「…こっちがどんな気持ちで…」
「それは俺のセリフな!? 勝手にロシアンルーレット始めんじゃねぇよ」
「今分かった。ないこに必要なんは『上書き』やなくて『お仕置き』やわ」
ぐいとピンクの髪を抑えて、ベッドに乗り上げる。
「んぇ?」と間の抜けた声を返すないこの唇を、さっきまでの行為の続きだと言わんばかりにキスで塞いだ。
コメント
2件
初コメ失礼します!! いやぁ、、クリスマスにこんな作品を見られるなんて自分は幸せ者ですよ〜 自分の家ではクリスマスプレゼントなんてもの貰えないのでこれがクリスマスプレゼントですね〜 嬉しい限りです、ほんとにただ家で勉強するだけのクリスマスにならなくて..w もう終わっちゃいますけど、Happy Xmasですね!
先程別サイトで閲覧しました……✨✨✨好きな作品全部詰めで特に医者パロ…思わず叫んでしまいながら読んでました😭😭💕 文章の表現から青さんの俊敏な動きがイメージできてこっちまで緊張感が伝わってきちゃきました😖🎶 桃さんが触られたのかと思いきや何もされていなかったところでどんでん返しされました…上書きではなくお仕置き、!?あおば様の発想力や作品の魅力に虜です…!!