この作品はいかがでしたか?
246
この作品はいかがでしたか?
246
こんあめ〜、今回は兎赤の花吐き病です
あかーしが片想い、木兎さんは自覚なし!
分かったら本編れでぃごー!
いつからだろう、あなたのことを好きになったのは。
一緒にいると胸が高鳴って、すごく幸せな気持ちになった。
あなたに気付いてもらえなくても、俺はあなたを好きでいようと誓った。
大雑把で、不器用で、そんなあなたが周りから孤立するなんて、とても耐えられないから。
俺がいなきゃ駄目だなんて勝手に思って、それでもあなたについてきた。
何より、俺にはあなたが必要だった。
でも。
あなたにとって、俺は、必ずしも必要では、なかった。
俺にあるのはあなたへの憧れであり恋慕で、あなたにあるのは俺への、他の人と大差ない友情だった。
こんなことを、ここ最近何度も、何度も何度も繰り返し思い返して、勝手に苦しくなって、俺は──
「──俺、もう…トス上げられません」
それを告げた時の、あなたの顔が、何よりも鮮明に頭に残っている。
何かを失ったような、それでいて特に未練もないような、変な顔をしていた。
そして、誰にともなく、俺に呟いた。
「……そうなんだ、まぁしょうがねーよ」
その瞬間、俺はあなたの一番ではないのだと痛いほど思い知らされた。
そんな当たり前のこと、とうに分かりきっていたのに。
俺は、ありもしない偶像に、空想に、想像に逃げていたのか。
それでも、それでも何とかしようとして、震える手でボールを拾い、取り落とす毎日を繰り返した。
部活に行っても、ボール拾いすらできなくなった俺に、あの人はやがて声をかけなくなっていった。
どう接していいか分からなかったのかもしれない。
でも、トスを上げられず、エースと話もできないセッターが、このチームに不要であることは何よりも明らかだった。
あの人より、チームの方が俺を必要としなくなっていた。
誰も、体育館の隅で座って練習風景を眺める俺に興味を示さない。
セッターとしての価値が、俺という人間の全てだったと、今更気付かされた。
誰とも喋らず、声を掛け合わない日々は、過ぎるほどに俺を絡め取って動けなくしていく。
だから、だろうか。
その日はいつにも増して体調が悪くて、歩くのも壁がなければままならない体を引き摺るようにして体育館に入った。
そしていつも通りあの人の姿をボールと人の中から見つけ出した時、何も食べていないのに猛烈な吐き気に見舞われた。
トイレまでは間に合わず、人目につきにくい体育館裏で俺は花を吐いた。
綺麗すぎるほどに綺麗な、白い花。
あの人を彷彿とさせる花が散らばった地面を眺めながら、俺はしばらく声を出さずに泣いていた。
中から聞こえてくるボールが床を打つ音が、俺の体を叩く。
あの人にとって、俺は、必要なものではなかった。
俺にとっては必要で、何より大切だけれど、俺はあの人の一番にはなれない。
その事実が、何か大事なものを壊してしまったのかもしれない。
それからの日々はさらに急速に色味を失っていって、元々食べられなくなっていた食べ物の味が分からなくなった。
体調を崩し、学校にすら行けない日も増えた。
あの人の声が聞きたい。
あの人のスパイクが見たい。
あの人の顔が見たい。
ただそれだけを思って学校へ行き、授業を聞き流し、休み時間はトイレで吐いて、部活にあの人を見にいく。
心配した誰かに声をかけられても、それが誰だか俺にはもう分からない。
味の分からないものを食べる気にもなれず、ただそこに居るだけの置き物みたいな存在になっていた。
ほんのたまに、今でもあの人は俺に話しかけてくれる。
「あかーし…おーいあかーしー…。……ごめん、練習戻る」
俺は聞こえていて、内容も理解しているけれど、話す力を失ってしまったように声は出ない。
毎回ぼんやりとその顔を見上げるだけの俺に、あの人はきっとうんざりするか困っていると思う。
そのうち、あの人の言っていることが分からなくなる時間が、日が、期間が、長くなっていく。
他の人と同じように、ただの音にしか思えなくなる。
大丈夫だ。
俺はまだ大丈夫だ。
花を吐き出す頻度と体調は悪化しているけれど、まだ大丈夫。
まだあの人の声が分かる。
声を聞けば心が温かくなる。
もう見分けがつかなくなった人たちの中で、あの人だけは鮮明に一挙手一投足が認識できる。
そのスパイクは今でも変わらず綺麗で、決まる瞬間は思わず息を止めて見惚れてしまう。
でもそれと同時に、新しいセッター、新しいチームでも、きっとこの人は同じように過ごしていく。
それが許される、それができるだけの技量は隣にいるのが俺でなくてもきっと保たれていく。
その事実が、現状が、何より俺を深く傷つけた。
やがて、今まで白かった花に、紅いものが混じるようになった。
紅い花びらは日に日にその割合を増やして、寝ている間に口からこぼれ出ていることもあった。
「……あかーし、いい加減に…!」
ある日、木兎さんを怒らせてしまった。
喋ってよ、と叫んだ目には、ギリギリまで涙が溜まって、堪えきれずにいくつもいくつも零れた。
それでも、こんなに喋りたいと思っても、もう俺の喉からは乾いた空気と胃液に塗れた紅い花以外のものが出ることはなかった。
もう、白い花も出ない。
目の前が真っ暗になって、俺の名前を叫んでいる木兎さんの腕の温度が遠のいていく。
ごほ、と音がして、それが自分の発した最後の声だと気付くには、ずいぶん時間がかかったように思う。
「ぼく、とさん…すき、でした…っ」
襲いかかる眠気に抗って薄く目を開き、大きな体を抱きしめる。
また吐き気がして、今度は黒い花を吐いた。
俺の心みたいな、真っ黒な花だった。
もう花は見たくなくてつい目を閉じて、そしたら一気に意識が遠のいた。
木兎さん。
ずっと、ずっとずっと、大好きです。
これでいい。
あなたは泣く。
俺を抱いて、俺のために泣き続ける。
これで、俺はあなたの一番になれる。
隣じゃなくて、内側に、あなたは俺を焼き付ける。
俺は死んでも、あなたの中で繰り返される。
「あかーし…なんで、なんだよ…!」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
好きって言えなくて、ごめんなさい。
俺を見ていて欲しかったのに、それすら伝えられなくて、本当に情けないと思う。
隠れて吐いていたくせに、誰かに気付いて欲しいと願っていた。
あまりにも身勝手で、あまりにも不義理だ。
でも、お願いだから、どうか俺を愛して欲しい。
ボールを上げられなくても、俺を隣に置いていて欲しい。
俺は、あなたの一番になれただろうか。
あなたが、俺を思い出して泣いてくれればいいと思う。
セッターにトスを上げられた時。
しょぼくれモードから復活した時。
あの綺麗なスパイクを決めた時。
あなたの中で、俺を生き返らせて欲しい。
これであなたの一番になれるのなら、涙は、最高の呪いだ。
前編、あかーし編でした〜!
よければ、♡、フォロー、コメントしてくれると嬉しいです!!
後編は木兎さん視点で書こうと思うんで楽しみにしてて下さい!!
おつあめ〜!
コメント
5件
ぁ、…あかあしぃ、? …どうしたのさ、ぼっくんの隣は赤葦しかいないよぉ、??