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このアカウントでは初めて小説を描かせていただきます、治香@不定期といいます。pixivのほうや別のアカウント(マリ)でも小説は何度か書いてはいたんですが諸事情により、新しいアカウントで描かせていただきます。この話は文豪ストレイドッグスの太宰治と中原中也(太中)の小説です。そのため、原作とは違った形の内容となります。また、中太(中原中也&太宰治)のカップリングの小説ではないのでご注意ください。誤字脱字、年齢操作、中也女体化注意。
ー愛に溺れるー
名前、太宰治。性別、男。年齢、22歳。職業、マフィア。異能力、異能無効化。
「死体の後処理は頼んだよ」
ヨコハマには月が上がり、昼の人間は眠り、夜の人間は起きる。その中の一人。太宰治。彼は夜の世界では知らぬ者は居ない人間である。太宰は胸ポケットから携帯電話を取り出し、とある人物に電話をかける。3コールほど鳴った後、太宰は舌打ちをして電話を切り、また携帯電話を胸ポケットに戻した。黒い革靴でゴロゴロと転がっている屍を踏みつけ太宰治は颯爽とその場から消えていった。残された構成員らはその背中をただ見つめ、死体の後処理をするだけだった。
***
名前、中原中也。性別、女。年齢、16歳。職業、無し。異能力、重力操作。
「父さん、母さんただいま」
シーン…
今日もかよ。最近父と母がやけに家に帰えるのが遅い。何かと思い聞いてみても「仕事だ」としか返ってこずわけもわからず過ごす毎日だ。別に知りたいという訳ではない。父親と母親がただ家に帰って来ない。それだけのことだ。胸に残る靄をため息に変え、何も置かれていなかった玄関にスニーカーを脱ぎ捨て、自室の2階へ駆けた。
***
ヨコハマの黒組織。「ポートマフィア」、最上階首領室。
「太宰君次の任務の資料だよ」
「森さん私はもう疲れました、他に当たってくださいよ」
そう言ったとしてもこの任務をやらされるのは分かっている。ポートマフィアの首領、森鴎外。彼は太宰の私情など興味がないのだ。話を逸らされ資料を渡される。見れば下級構成員の資料であった。太宰は目を細め森に問う。
「裏切り者…ですか?」
「うん、殺してくれて構わないよ」
答えになってない気がする。という考えは口が裂けても言えず、変わりに「分かりました」と返事しか出来なかった。重たい空気がまとうこの部屋に飽き飽きしたのか太宰は資料を持って出口へと向かう。森は「善い報告を待っているよ」とだけ太宰に云った。
太宰はポートマフィアから支給された部屋に戻り、森から預かった資料を一枚ずつ丁寧に読み上げてみせた。
「今資料、ポートマフィアの裏切り者の中原〇〇、中原〇〇を暗殺すべく作成された…。彼等には16の娘、中原中也がいるがその者は抵抗や攻撃の意思を見せれば必ず殺すこと、今回の任務では太宰幹部他5名の構成員で執り行われる。装備は問わないがハンドガンなどで行うこと。また、死体はポートマフィア地下一階の部屋で燃やすこと。ね…」
太宰は資料を机の上に置き、ソファに寝そべった。任務は明日。その為には休息が必要だ。眼を閉じれば意識を失った。
***
「今日も居ねぇのかよ」
今までだったら最低でも次の日には顔を出してくれていた。やはり何か面倒ごとでも巻き込まれたのだろうか。携帯電話を見れば母親から24:00に不在着信が来ていた。もちろんそんな時間帯に起きている訳がないため出ていない。しかし、生きているのか、と思えば気が楽にはなった。携帯電話の電源を切り、制服に着替え、誰もいない家に「行ってきます」と言い、家を後にした。
***
夕暮れ時ー一つの家に黒い高級車が泊まった。車からは太宰治、他5名の下級構成員が降りてきた。降りるなり、一人の下級構成員が太宰に近づいた。
「此方が中原の自宅になります」
「そう、娘は居ないかい?」
「はい、現在は学校にいると連絡が」
「なら話が早い、中原◯◯と中原〇〇は家にいるのだね」
「はい、今日の午後に自宅に入ったと報告が」
「じゃあ手短に殺そう」
太宰は、家のドアに近づき鍵をピッキングした。ガチャリと音が鳴るとドアを開け、靴ごと家に踏み入った。リビングに通じるドアを開けると中原◯◯と中原〇〇が部屋の隅で座り込み仲良く肩を震わせこちらを睨んでいた。太宰は口角を上げ、2人の目の前に座り込んだ。やぁ、と太宰が喋ればビクリと反応した。太宰は彼らの目を見て話をした。
「すまないね、此れは命令でね。君たちを殺す事は決まっているのだよ。でもひとつだけ、最後に君達の願いを叶えてあげよう。そうだね、中原中也ー」
その名を云った瞬間、何処からか拳銃を取り出し、一発。太宰に向かって撃った。弾は太宰の頬を擦り、壁へと埋まった。太宰は傷口から出た少量の血を人差し指で掬い舐めた。下級構成員らは拳銃を構えてたが其れを太宰は止めた。にこりと笑い瞬きも出来ない程の速さで拳銃を2発撃った。見事に其れは彼等の額貫き、音もなく床に倒れた。即死だった。太宰は2つの屍を見つめ一度だけ深く息を吐くと、視線を窓の外に投げた。夕焼けが薄れ、夜が街を飲み込んでいく。また視線を下げ腕時計に目を通す。秒針の音が部屋に響いた。
「さて、そろそろ娘は——帰ってくるだろうね」
独り言のように呟いて、太宰はゆっくりと立ち上がる。玄関に向かいながら、指先で頬の傷跡をなぞった。足元には綺麗な血の海が広がっている。太宰はリビングのドアノブに手をかける。
その時——玄関から微かに音がした。
「ビンゴ」
と太宰が呟けば制服姿の少女がそこに立っていた。少女は恐怖混じりの声で「誰だ」と太宰に問う。声が震えていた。太宰は満面の笑みで顔を上げた。橙色の髪、怯えと怒りが入り混じった青の瞳。
「君が、中原中也ちゃんかい?」
彼女の瞳が揺れた。視線の先、リビングの奥に横たわる二人。言葉が出ない。息だけが荒く漏れる。口元を手で押さえながら少女は太宰を睨んだ。憎悪。それとも…。
「……お前が、殺したのか」
「まぁ、そうなるね」
淡々と答える太宰。彼の声には関心がなかった。ただの事実報告のように。少女は拳を握った。少女が「重力操作」と呟けば赤い斑点が空気中に浮かび、瞬く間に後方にいたはずの1人の部下がミシッと音を立てて地面に埋もれた。だが太宰は、顔色ひとつ変えずにそっと中也に近づきその力を無効化にした。
「異能力……無効化かよ」
「うん。残念だったね」
太宰は一歩、彼女に近づく。銃はもう持っていなかった。代わりに、ひどく哀しい目をしていた。
「さぁ、殺すなら今だよ。そうすれば君は幾分か楽になれるかもしれない」
中也の喉が震えた。唇を噛みしめ、涙が滲む。涙には父と母が映った。
「手前を殺しても父さんと母さんは生きて帰ってこねぇ」
「…」
太宰は敢えて何も言わなかったのか、其れとも言葉が出なかったのか。そのまま、少女に背を向けた。玄関のドアを開け、夜の風が玄関を通り抜ける。背後で、嗚咽がひとつ。部下が1人太宰に近づき「殺さないのですか」と聞いた。「あぁ、そうだったね」と太宰はまるで思い出したかのような素振りを見せた。太宰は小さく振り返らずに言った。
「気が変わった。ポートマフィアで保護しよう」
返事はなかった。気づけば外は夜に呑み込まれていた。
***
ポートマフィア首領室。
「太宰君〜。最近怪我人出し過ぎじゃない?構成員の人手不足がウチの課題なのにさぁ〜」
「申し訳ありません、首領。然し乍ら良い報告がございましてね」
「ほぅ。良い報告とはなんだい?」
「はい、中原中也をウチで保護する事にしました」
「…本当かい?彼女の異能は強いからねぇ、そうだ。折角だし太宰君。君が教育係にならないかい?芥川君ももう準幹部候補にも育ったわけだしさ。彼女なら立派なマフィアになれる」
「森さん何度言ったら分かるんですか。私は幹部の仕事で精一杯なので、姐さんに頼んでください。それに彼女に殺しはさせませんから」
「そうかい?でも太宰君にだったら懐いてくれると思うよ?」
「…分かりましたよ!やれば良いんですよね!」
「宜しく頼んだよ」
太宰は年相応の怒り顔を森に見せ、首領室を後にした。静けさが残った首領室で森は「殺しはさせない…ね。流石太宰君だ」と独り呟いた。
***
本当にあの男の言っていた事を信用して良いのか。そう考えること軽く2時間。鉄の匂いが立ち込める部屋で独り寂しく床に座る。先程まで両親の死体があったのに今ではもう血も拭き取られ何も残っていない。息を吸えば吸うほど血の匂いが肺に溜まっていき、何度も吐きそうになる。頭によぎるあの男の話。『ポートマフィアで保護しよう』あれはどういう意味なのか。自分を殺すつもりなのか、それとも本当に保護をするつもりなのか。いや、そもそも人の両親を殺した奴だ。信用なんかしちゃいけねぇ。でも、あの哀しい目。20は越えてるであろう男があんな目をするのか。ましてや人殺しであるのに。それに彼奴は異能無効化だと云っていた。なら、彼奴ならきっと。この異能を制御してくれるかもしれない。ひどく腫れた両目を拭い、リビングに向かって「行ってきます」と言い残し、外へ飛び出した。
***
お読みいただきありがとうございます。1話目にしては文章量が少なすぎないか?と思いましたが長編にはなるのだから良いだろう!と思い切りました。今回は初めてながら中也の女体化、年の差という難題で挑みました。馬鹿ですね笑。もともとそういう「if話」が大好きで小説を書いていらっしゃる方をいつも尊敬していました。いざ自分でこういうの書こうと思っても思い通りの表現が出来なかったりして大変でした。次回からは大はしゃぎの太中が観れると思いますのでゆっくりとお持ちください!
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