テラーノベル
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「昨日人を殺したんだ…w」
うみにゃはそう言っていた。
梅雨でずぶ濡れのうみにゃが部屋の前で泣いていた。
夏が始まったばかりと言うのに
うみにゃは酷く震えていた。
これはあの夏の物語だ。
「殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるあいつ。
もう嫌になって肩を突き飛ばしたら打ち所が悪かったんだ。
もうここにはいられないと思うし、どっか遠いとこで死んでくるよ…w
じゃあね、DD…w」
『ちょっと待てよ。』
「…なんだよ」
『そんじゃ俺も連れて行って。』
「DDは巻き添えにできn…!」
『いいんだよ!!』
「DDがそこまで言うなら…。」
財布を持って…ナイフを持って…
よくニート部で遊んでたゲームも鞄に詰め込んで
「…要らないものは全部壊していこう…。」
『そうだな…。』
あのオフ会の写真も。あの毎日取ってた日記も。
今となっちゃもういらないさ…w
人殺しのうみにゃと、ダメ人間の俺の、君と僕の旅だ…。
嗚呼
そして俺らは逃げ出した。
この狭い狭いこの世界から…。
家族もクラスの奴らもなにもかも全部捨てて、うみにゃと二人で
「遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。」
『そうだね、!』
もうこの世界に価値などないよ。
人殺しなんてそこらじゅう湧いてるじゃんか。
君は何も悪くないよ。
君は何も悪くないよ。
“結局俺ら誰にも愛されたことなどなかったんだ。”
そんな嫌な共通点で
俺らは簡単に信じ合ってきた。
君の手を握った時、微かな震えも既に無くなっていて、
誰にも縛らないで 二人で 線路の上を歩いた。
金を盗んで、二人で逃げて、どこにでも行ける気がしたんだ。
今更怖いものは俺らには無かったんだ。
額の汗も、落ちたメガネも。
今となっちゃどうでもいいさ。
あぶれ者の小さな逃避行の旅だ…。
嗚呼
『いつか夢見た優しくて、誰にも好かれる主人公なら。
汚くなった俺達の事も見捨てずに
ちゃんと救ってくれるのかな。』
「そんな夢なら捨てたよ。だって現実を見ろよ。
「幸せの4文字なんてなかった。
今までの人生で思い知ったじゃん。」
自分は何も悪くねぇと
誰もがきっと思ってる。
宛もなく彷徨う蝉の群れに。
水も無くなり揺れ出す視界に。
迫り来る鬼たちの怒号に。
バカみたいにはしゃぎあい、
ふとうみにゃはナイフを取った。
「DDが今までそばに居たからここまで来れたんだ。」
『…はっ?』
「だからもういいよ。
もういいよ。」
「“死ぬのは俺一人でいいよ。”」
🔪🩸
…
そしてうみにゃは首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンだ。
白昼夢を見ている気がした。
気付けば俺は捕まって。
うみにゃがどこにも見つからなくって。
うみにゃだけがどこにも居なくって。
そして 時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎてった。
家族もクラスの奴らもいるのに
何故かうみにゃだけはどこにもいない。
あの夏の日を思い出す。
俺は今も今でも歌ってる。
うみにゃをずっと探してるんだ。
うみにゃに言いたいことがあるんだ。
九月の終わりにくしゃみして
六月の匂いを繰り返す。
君の笑顔は 君の無邪気さは
頭の中を飽和している。
誰も 何も 悪くないよ。
君は 何も 悪くはないから。
もういいよ 投げ出してしまおう。
そう 言って 欲しかったのだろう なあ … ?
𝒆𝒏𝒅𓂃 𓈒𓏸
これで許してくださぁい…毎日投稿ができない…
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