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気にしなくてもいいのにあまりにも恥ずかしがるので、新しい不織布マスクを当てがった。


「これで顔が隠れますよ」


「そういう問題じゃないんだよ」


いいじゃん別に。元彼には素っぴん晒してたんだから、俺にだって見せてくれてもいいじゃないかという謎の対抗心が生まれる。いや、嫉妬なのか。まあどっちでもいい。


「結子さんは素っぴんでも可愛いですよ」


「……気を遣わなくていいよ」


「どんな姿でも可愛い。だって俺、結子さんのこと好きだから、全部が可愛くてたまらないと思う」


「え、ええっ?! な、なに?」


ガタタッと結子さんが椅子にぶつかった。

しまった、今ここで伝えるつもりはなかったけど、思わず口走ってしまった。まあいいか、言ってしまったものは仕方がない。


俺は姿勢を正す。

ちゃんと結子さんをまっすぐ見て。


「だから、結子さんのことが好きです」


結子さんの頬が真っ赤に染まっていくのがわかった。マスクをしていてもわかるくらい鮮明にだ。どうしてこう、この人はわかりやすいくらいに可愛いのか。


ぐぎゅるるるる


しんとした部屋にわずかに響いたお腹の音。結子さんはますます顔を赤くした。ちょうどお湯も沸いたようだし、まずは食事だ。結子さんを座らせて、俺はカップ麺に湯を注ぐ。


「ねえ、ずっといてくれたの?」


「そばにいてほしいって言いましたよね?」


その言葉に結子さんはしゅんとなる。「ごめん、迷惑かけて」と申し訳無さそうにした。


ダメだな俺は。いつもそうだ。そういう言い方だから冷たいなんて言われるんだろうな。言いたかったのはそういうことじゃなくて、自分の気持ちなのに。修正しろ、俺。


「嘘ですよ。俺が結子さんのそばにいたかっただけ」


「でも私、寝てただけ」


「よく眠れたみたいでよかったです。寝顔もめちゃくちゃ可愛かったので迷惑どころか得した気分」


写真撮りたいくらいに。さすがにそれは黙っておいたけど(怒られる未来が見えたから)、結子さんはまた照れていて、そんな姿も可愛くてたまらなかった。

恋愛対象外に絆される日

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