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短編 読み切り 【 風鈴草への手紙 】
※ 注意
・ 一次創作
・ 恋愛
・ 死ネタ
・ 【 曼珠沙華への追走 】 の別視点
・ 読み切り
✼
高校二年の春 。
私には好きな人が出来た 。
声色が , 表情が , 仕草が ,何もかも 。
まるで , ベルフラワーみたいな人だった 。
本当に優しくて , この世の物事全てに気を配っている人だった 。
私はその人に , 恋というものをした 。
私にとっての初恋で , 周りからはどう見えていようと私はその人のことが好きだった 。
私は ___ 齋藤麗音は同じクラスの男の子 , 鈴宮泰志君に恋した 。
始まりは高校一年生の夏だった 。
その頃は彼とは別々のクラスで , その時は5限目の現代文の自習時間だった。
昼休み後の授業 , それも自習時間ということでクラスの三分の一近くが眠る体制に入っていた 。
( 課題が出ているのに … 今眠って後から後悔するのは貴方たちでしょう ? )
私はその三分の一に対して呆れながらも課題を黙々と進めていた 。
課題が一段落したところでふと気分転換に窓の外を見ていた 。
私の席は窓際なので外がよく見えるのだ 。
授業時間はのこり18分程 。 そして課題の残りは四分の一にも満たない 。
少しくらい外を見ていても大丈夫だろう 、 そう判断して外を見た 。
( どこかのクラスが体育してる … 。 何年だろう 。 )
残念ながら体育着で学年を見分けることは困難なのでさすがに何年何組かは分からなかった 。
( 男子はサッカーか … 。 女子は休憩中かな ? 男子の応援してる 。 )
その中に一人 , 目に付く男の子がいた 。
( … なんだろう , 他の人とほとんど変わらないと思うのに …… 、 )
彼のことが凄く輝いて見える 。
( なんでだろう … ? )
理由は分からなかったけれど , 私は彼が … 後に私が恋することとなる鈴宮泰志君がとても輝いて見えた 。
( … へんなの 。 )
それが , 初めて彼のことを見た高一の夏のこと 。
それ以来 , 集会や学校行事 , それこそ授業で彼を見る度に目で追った 。
それでわかったのは彼はすごく人がいいらしい 。
彼は内申点稼ぎと(彼の友人に)言っていたが , 私にはそうは見えなかった 。
私にそう見えるからそうだとは限らないけれど , でもきっと彼はいい人なのだろうと思った 。
バシャッ
冷たい 。 雫が髪や頬をつたって落ちる 。
( … またか 、 )
もう慣れた 。
初夏の頃から始まった “ 虐め ” 。
慣れたくはないが , 否が応でも慣れてしまった 。
まあ , 無視しているが 。
でもまあ 、 それが良くなかったのかもしれない 。
私は高校二年生になった 。
彼と同じクラスになった 。
彼の名を見つけた瞬間 , 少しだけ心が軽くなった 。
私と彼の席は近いわけではなかったけれど , それでも嬉しかった 。
でも 、 私は忘れていた 。
その時の私の状況を 。
バシャッ
水の冷たさはこなかった 。 前方から雫が落ちた 。
「 … 大丈夫ですか ? 斎藤さん 。 」
「 … すず 、 むらくん … 」
そこからだった 。
私の生活が , 感情が変わったのは 。
前はどうでもよかったいじめも , 彼に被害が行くようになると嫌になった 。
自分に対してならば別にいい 。
ただ 、 エスカレートしたいじめを彼が庇って彼が傷つくのだけは許せなかった 。
「 … もういや …… 、 」
彼が巻き込まれるのは , 大好きな … 私が愛している彼が傷つくのはいや 。
「 … 私が居なくなれば … 、 」
私が彼の傍から消えれば , 彼は傷つかなくてすむ ?
そう思ってからの私の行動は自分が思っている何倍も早かった 。
もう頭なんて正常に回っていなかった 。 わかっていたが , それでも構わないと思った 。
私が彼を見つけた日 。
おそらく私が彼に惚れた日 。
彼への手紙と , 両親への手紙 。
その二つを書いて私は家のベランダに立った 。
ちょうど親は仕事で居ない 。
「 … いまなら 、 とべる 。 」
五十階建てのマンション 。
私達家族が住んでいるのはその四十八階 。
きっとここからとべば私は死ぬ 。
「 … ごめんなさい 、 泰志くん 」
嗚呼 、 できることならあなたとずっと一緒にいたかった 。
「 … ありがとう , 私の 風鈴草」
「 … 泰志君への手紙 , なんて書こう … 」
… これが彼に送る最初で最後の手紙だし , 少しくらい背伸びしてみようかな … 、
【 風鈴草の君へ 。 】
泰志君 , 私はあなたの事を いつまでもあいしています 。
ありがとう , 私の風鈴草さん 。
✼
【 風鈴草 ・ ベルフラワー の花言葉 】
「感謝」「感謝します」「誠実」「大切な人」「楽しいおしゃべり」
作中では 【 曼珠沙華への追走 】 の主人公 , 鈴宮泰志 に対して 「 誠実な人 」 「 お喋りが楽しい人 」 「 私にとっての大切な人 」 という意味で使用 。
[END]