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俺には幼馴染がいる。治という名前で、顔がすこぶる綺麗な男だ。俺は幼稚園の頃からそいつと関わりがあった、
なんでかっていうと、そいつと俺の家が隣同士だったからだ。ただそれだけ。多分家が隣同士じゃなかったら、あんな人間とは関わることすらなかっただろう。
あいつは幼稚園の頃から、モテていた。
幼稚園の女の子からだけじゃなく、保育士の先生からも、天使だなんだとチヤホヤされていた。まああんな恵まれた容姿があったのだから、当然だろうが、俺は幼馴染がこれ以上ないってくらいモテていて、ちょっと羨ましかった。
いや今思うと、嫉妬だったのだと思う。だからってあいつのことを僻んだりするわけでもなく、ただ単に遠くから眺めてただけだった。
幼稚園児なんてみんな可愛い。あいつも中学生になれば、普通の顔になるだろ!なんて思いながら
でも現実は残酷だ。中学生になって幼馴染はいい方向に成長した。足は長くなり、頬もシュッとして、幼稚園の時の可愛いらしさもありつつな、イケメンに育った。ますますモテ始め俺の予想は大いに外れてしまった。
クソっ俺は中学生になっても、身長が159止まりだ。あいつは170はあるのに。こんな惨めな思いしたくなかった
だけどそんな俺にも、春が来た。
中学生になった俺は、好きな子ができたのだ!高橋さんっていう子。その女の子に近づきたいって思った。なんで好きになったか明確な理由はないけど、笑顔が好きだった。と思う。
好きだったからその子と仲良くなるために、俺は幼馴染を利用した。幼馴染を利用して、女の子の気を引こうとしたのだ。なぜならあいつは人気者だったから。俺はあいつに必死に頼み込んだ。
「お願いだ!おさむ!高橋さんと俺が仲良くなるように協力してくれないか!」
バッと勢いよく頭を下げる
「えー…面倒くさいんだけど、それにタカハシさん?って誰なの」
「俺の同級生だ!とっても頭が良くって、可愛くて…お、俺の好きな人!」
「へえ…そーなんだ」
そう言った途端、治は急に不機嫌な態度になった。
俺はそんな治に少し、びびったが、いやいやなにも悪いことしてないしと、開き直る態度で言った。
「な?お願い!」
「……でもなんで俺なの?あんま知らない人だし」
そう言って治はめんどくさそうに、俺を見た。
「だってお前、コミュ強じゃん!仲良くなれんだろ?んであわよくば俺が仲良くなる!」
「はあ…」
ため息をついた治は、呆れた目で俺を見下ろした。
「幼馴染の仲だろー!ほんとお願い!協力してくれたらなんか奢るから〜」
「んー‥じゃあ焼肉とか奢れ」
「よっしゃ! 」
そうして俺はウキウキで約束を取り付けた。
でも結果は散々だった。
俺はだいぶ馬鹿だった。だってあいつのことを好きにならないやつなんて居ないんだから。そう結局俺の好きだった女の子は、俺の幼馴染を好きになり、俺が告白するまでもなく、見え見えの好意を俺の幼馴染に持っていた。でも馬鹿な俺は一応告白はした。
女の子を呼び出した俺は、勢いよく頭を下げた。
ええいままよ!
「好きです!付き合ってください!!」
告白して振られた帰り道。いつもより寂しくて涙が出た。
なぜ自分で頑張ろうとしなかったのか。自分で頑張っていたらこうはならなかったのかもしれない。一人とぼとぼと、帰っていた。
家に帰ってからも、俺は女々しく一人シクシクと泣いていた。
「…うっ…う〜!…ぐすっ」
枕に顔をうずめて、必死に泣き声を抑え込んだ。
元はと言えば俺が悪いのだ、俺が自分自身の力で告白しなかったから。
でも考えてみたら、治は俺と高橋さんの仲を取り持ってくれなかった。治と高橋さんがどんどん仲良くなっていって、俺の入る隙なんてなかったぞ?
もしかして、治も高橋さんのこと好きになっちゃったのか…
「でもしょうがない、俺が意気地なしだったから…」
そう考えて余計に涙が出てきた。
「ぐすっ…うっ…」
泣いているうちに眠たくて俺は寝てしまった。
明日どんな顔で治と会えばいいんだよ……