春のある日。3年B組はグラウンドで体育。
内容は「50mバードル走」の記録測定。
担任が笛を吹く中、順番に生徒たちが走っていく。
「つぎー!楓とむつる!」
楓とむつるは、並んでスタートラインに立った。
(これ、普通に走ったら…)
(バレるな)
二人はアイコンタクトで呼吸を合わせる。
が、隣のクラスの男子達がヒソヒソとーー
「楓って、そんな運動できるタイプじゃなさそうだけどな〜」
「光流ってあだ名のむつる、いつも無表情だしw」
(言ってくれるな…)
バレ寸前の本気
スタートの笛が鳴る。
ダッ!
……一瞬止まる静寂。
むつるの脚が風を切り、楓の姿がぶれる。
たった2歩で1台目のハードルを飛び越えた!
普通なら飛びながら減速するはずが、むしろ加速している。
楓もバネのような動きでハードルを「またぐ」ように通過。
残り10m地点ーー
(やばい)
二人は同時に思った。
「これ、飛びすぎた!」
ギリギリの誤魔化し
二人はゴール前でスライディングで転ぶ演技をし、記録係の前で「あちゃー」っと笑って誤魔化す。
「わっ、めっちゃ速かったけど、最後コケちゃったね、惜しい〜!」
「……な、なんとかセーフ……」
見ていた生徒たちは「運動神経、実はいいんだな〜」と騒いでいたが、
忍者レベルの跳躍には誰も気づかなかったーーはず
だが、その様子を屋上から見つめていた生徒がいた。
「……やっぱり普通じゃない」
1年の白髪転校生・氷室零。
影廻の新たな侵入者である。
この話は別の章で書きます。By主
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