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「勝つには勝ったか。しかし、何なんだ今の奴らは。自分たちの敵は護国輔翼会。そこにどうして、得体の知れない生物が絡んでくる? 理解が追いつかん」
蓮に背を向けるクウガが、深刻な調子で呟く。アキナも隣でクウガと並んでいて、困惑しているのか言葉はなかった。
すると、にゅるり。アキナたちの後ろの地面から、新たに一体が出現。右手を振りかぶると、先端がぞっとするほど鋭い形状に変化した。
(まだ残って……。させるか!)
蓮はすかさず左脚を振るった。ガキン! 蹴りは見事に命中したが、金属音がしたのみで銀色生命体は微動だにしなかった。
銀色生命体はぬるりと蓮に向き直った。すぐさま高速の刺突が蓮へと向かい……。
バリッ! 漆黒の雷光が銀色生命体に落ちた。ほぼ同時にアキナのキックがぶち当たる。
敵は先ほど同様に、いくつにも分裂して吹き飛んだ。
「アキナ! 助かった!」蓮が叫んだ。
「ごめんね。私、ちょっと気を抜いちゃったね」
アキナは申し訳なさげに微笑んだ。
不意に景色が歪み始めた。蓮は目を見張る。眼前のアキナの細身の身体が、うねうねと蛇の通った跡のような曲線を描いていた。
すぐに異変は収まった。蓮が周囲を見渡すと、変わらぬ京都の町並みがあった。ただし先ほどまでと異なり、多くの人々が行き交っていた。
「んんん? 今一瞬、視界が妙にうにうにしたのは私だけ?」
「いや、自分もだ。銀色の生物と戦うまでは人間の姿はまったくなかった。だが今はこの状況だ。先ほどの異変で何かが切り替わったんだ」
合点がいかない口調で、アキナとクウガは言葉を交わした。
「俺も見えたよ」蓮は端的に返答する。
「さっきから異常なことばっかだ。君らの親が大戦中に現れたときと同じで、常人の想像も及ばない現象が起きているとしか思えない。ただ考えても仕方がないし、今は護国輔翼会を叩くことに集中しよう」
蓮が真摯に提案すると、アキナとクウガは小さく頷いた。
「……それとさっきは二人ともありがとう。渾身の蹴りも、さっきの奴には効果なかったな。俺はやっぱり戦力外だな。情けないよ」
憂いを抱く蓮がぼそりと呟くと、二人とも申し訳なさそうに目を伏せた。二人の気遣いを感じ、蓮はさらに気を落とす。
「説明が遅くなったが、自分の力は『|白黒自在《モノクロリバティー》』。生み出した黒色もしくは白色の真球から、引力もしくは斥力を働かせる能力だ。対象物の速度があまりにも大きい場合、制御しきれない欠点はあるがな。
力がないからといって、決して項垂れるな。俺たちの能力を念頭に置いて立ち回り、持たざる者なりの最善を尽くせ。父親への思いがあるならな」
諭すように励ますように、クウガは蓮の肩を叩いた。瞳は蓮の心を見透かすようにまっすぐなものである。
「また、上からの物言いになるが、先ほどはよくとっさに敵を攻撃してくれた。やはりお前は、力はなくとも一人の武人だ。誇りに思え」
「……そうかな、ありがとう。やれるだけやってやるよ。なんてったって俺は父さんの子供だからな。物事を途中で投げ出したりはしないんだ」
「そうだよそれそれ! その意気だ、緒形蓮! 力の有る無しなんて関係ないよ! 護国輔翼会なんて叩いて丸めてぼこぼこにしちゃえー!」
決意を込めた蓮の宣言に、喚いたアキナはばちんと片目を瞑った。ほぼ同時に「バーン!」。どういう訳か、左手で銃を形作って銃を撃つまねをする。
蓮はアキナの妙な溌剌さに、蓮は胸の霧が晴れていくような心持ちだった。
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