※死ネタ
※原作啓造、キャラ崩壊
※謎軸、和解済み
あんま冴凛要素ないかもです
最近なぜか体調が悪い。ガンガンと殴られるような頭痛がしたり、よく体がふらついたり。サッカーにも支障をきたしているため一応 病院に行ったが原因不明とのこと。まあ大丈夫だろうと楽観視して「軽い風邪だった」と青い監獄どもには言っておいた。絵心は何も言ってこなかった。
兄にも同じように言えば不満げに顔をしかめたが、ぶっきらぼうに「あっそ」と返事を返し自分の部屋へと戻っていった。そのあとも少しふらついてムカつき、ソファーに鎮座していたクッションを壁に向かって思いっきりぶん投げた。
そんな不便な日を送っていたある日の夜、なんだか無性にアイスが食べたくなって、コンビニへ行こうとクローゼットから取り出した黒パーカーに腕を通し、よく使っているスニーカーに足を滑り込ませた。そのとき兄貴に「どこに行くんだ」と聞かれたが、思わず無視してしまった。しかし兄は何も言ってこなかったから、正直安心した。
合鍵を乱暴にポケットへ突っ込んで扉を開ければ、ふわっと冷たい風が吹いたため、寒さを抑えるように自分の体を抱きしめる。
「さむ…」
夜は寒い。それでもアイスは食べたい。そう思った自分に呆れたが、足はちゃんとコンビニへと向かっていた。
深夜20:14。暗い道が暖色の電灯に照らされていて、それが奥へ奥へと続いている。その歩き慣れた道に従って歩いていけば、暗闇のなかで白く輝く建物が見えて、躊躇なくそこへ入って行った。
ウィーン、と小さく音をたてて開いたドアから見える店内に人はおらず、店員が此方ににこりと微笑んで「いらっしゃいませ」と口を開く。頭を下げるだけのお辞儀をして、冷えたアイスコーナーに足を向ける。そこには昔から馴染みのあるソーダアイスが五つほどあって、安いからと二つ手に取る。昔は駄菓子屋で買ってたな、と思いながら レジの店員に渡せば「〇〇円です」と言い袋へ詰めた。
小銭をポッケから出して足りることを確認すれば、店員と客という区切りの役目を果たしている白いテーブルにチャリ、と音を鳴らして小銭を置く。それを手にとって「ありがとうございました」と最初の微笑みを向けられるがなんだか不気味に感じて、バッとレジ袋を掴み早足で家へ向かっていった。
逃げるようにコンビニから出ていって、数分前に歩いた道を早足で進んでいれば、車が走っているのが遠目に見えた。歩道を歩いているから大丈夫だと思いそのまま進んでいると運悪くいつものふらつきが起こり、ぐらりと体勢が崩れて車道側に倒れこんでしまった。
(あ、柵ないんだった)
その瞬間、急ブレーキ音がうるさく脳に鳴り響いてガンガンと頭痛が起こる。視界が真っ暗に切り替わり、ドンと体を突き飛ばされたような感覚に陥った。
そう、凛は轢かれたのだ。立ち上がろうとしても、体が動かない。助けを求めようとしたが、無慈悲にも声は出なかった。凛を轢いた車は、もうスピードで逃げていった。
思いっきり頭を打って後頭部が赤く染まっていき、道路も巻き添えをくらってじわりと侵食されるように赤く染まっていく。アイス入りの袋は手からこぼれ落ち、視界から消えていた。自身のティファニーブルーの瞳に涙が溜まり、頬をつたって血濡れた道路に染みを残す。それを始まりに、意識がだんだんと薄れていく。
「にい、ちゃ…」
やっとのことで絞り出した声は、誰にも届くことはなかった。
**
気がつけば、兄の部屋に突っ立っていた。月光がカーテン越しに部屋を照らしていて、不覚にも綺麗だと思った。どうしてここに? と不思議に思い、なんとなく近くにあったペンに触れようとすれば、ペンは するりと手をすり抜ける。目の前で起こった非現実的な出来事に驚いて、ビクッと肩を震わせた。
「なんで…」
次に時計へと目線をやれば、時計は00:11を指していた。ベッドに視線を向ければ、寝息をたてながら布団にくるまる自身の兄がいた。起こそうとしても、伸ばした手はまたしてもシーツをすり抜ける。
ああ、俺あのとき死んだんだ。すとんと避けようのない事実が心に落ちてくる。そっか、だから触れないんだ。
それがわかった瞬間、ぼろぼろと涙が溢れてくる。死んでしまっては、もうサッカーもできない、ご飯も食べれない、兄と話せない。その痛い現実がじくじくと心を蝕んでいく。すん、と鼻をすすって涙を拭う。こぼれ落ちた涙は床に染みを作らなくて、もう全部いやになった。
深夜00:15。針がその時刻を指した瞬間、足から順に背景と同化していく。消えてるなあと思っていたら完全に消えてしまった。でも兄は見える。もしかして15分になったら、死んでいても生者に姿が消えるのだろうか。逆に言えば、15分までなら兄にも見えるのでは?
それから数日後、あのときの予想は当たっていたとわかった。嬉しかったけど、正直それどころではなかった。俺の死体が見つかったのだ。その為、この数日間はずっとバタバタしていて、ものすごく申し訳ない気持ちになった。家の中の移動は普通にできるから親の近くに行ってみたけど、俺の写真の前で涙を流す両親には くっきりと隈ができていて、思わず逃げ出してしまった。しかし兄は通常運転で、悲しそうな表情もしなかったし、嬉しそうな素振りを見せることもなかった。
そんな日々を過ごして一週間、15分間の謎のからくりがようやく分かった。00:00~00:15の間だけ、俺は現世に映ることができるようだった。こんな空気のなか、嬉しくてその場で跳ねてしまった自分を不謹慎だと、軽く叩いた。痛くなかったけど。
そこで残念なお知らせがある。からくりが分かったのはいいものの、兄はいつも早く寝るため凛の姿を見ることはできないのだ。その事実を知った途端、もう久しく起こっていなかった頭痛が起こった。すぐに頭の痛みはひいたが、その日は一日中泣いてしまった。
死んでから16日目の00:00。凛の姿はパッと現世に映し出され、身体に色がついていく。兄の部屋の机に飾ってある昔のツーショット写真をぼーっと見つめ、無意識に手を伸ばせば凛を拒絶するようにすり抜ける。
兄は今日、なぜか寝ていない。なぜ分かるかというと、いつもいるはずのベッドにいないのだ。もしかしたら、と淡い期待を抱いたが頭を左右に振って小さな希望を消去する。
「会いたいなあ…」
ぽつりと呟いた独り言は、空気中に弾けて消えていく。長いため息をついてカーペット上にしゃがみこみ、実体のない涙をぽたりと溢す。嗚咽を漏らしながらうずくまっているとガチャリと扉が開く音を耳が拾った。
「…凛?」
自分への問いかけにバッと顔をあげる。そこには凛の黒パーカーを着た兄が口を開いたまま立っていた。サイズが少し大きいのか服はだぼっとしていて、思わず場違いな笑みをこぼした。そんな俺とは正反対に、兄は困惑の表情を浮かべながら、俺を指差して呟く。
「なんでお前、ここに」
不規則に足音を鳴らしながら、しゃがみこんでいる凛の近くに向かう。目の前で止まれば抱きしめようと手を伸ばされる。
(俺に触れることは出来ないのにな)
そう思い目を瞑れば、普通では当たり前の考えを思いっきり壊された。
「凛、よかった…会いたかった」
「え、え? ん…??」
まるで映画の感動シーンのような展開なのだが、凛は嬉しさよりも困惑が勝ってしまう。
(なんで俺のこと抱きしめれてんの?)
頭の中がハテナマークでいっぱいになり、固まってしまった凛の硬直を解こうと冴は頬を痛くない程度に数回叩く。ハッと意識を取り戻した凛はビックリして兄の腕の中から逃れてカーテンを掴む。
「なっ、なんで俺のこと抱きしめれてんの」
「は? …あ、確かに」
お前 幽霊だもんな、と言葉を続けた兄は悲しそうに顔を伏せる。そんな兄の頬に両手を添えて、無理やり目線を絡ませる。お揃いのティファニーブルーは涙で揺れていて、どうすればいいのかわからなくなってしまった。
おどおどしていると、兄はパーカーの袖で涙を拭い「離せ」と一言。しかし行動には移さないため、嫌じゃないと分かり頬が緩む。
「実はさ、0時から15分までの間は俺の姿が見えるようになるらしいんだよね」
「なんだそれ」
「俺もそう思う、なにそれって」
それで考えたんだけどさ、と続ければ兄はこちらをじっと見つめる。凛は作り笑いじゃない本当の笑顔で口を開いた。
「たぶん、きっと魔法なんだよ」
そう言い放てば、兄は呆気に取られて ぽかんとしていたが、すぐに笑みを浮かべて凛の頬をつついた。
「たぶん、きっと…って矛盾してね?」
「えっと、それは言葉のあや っていうか…」
口をまごまごさせていると、冴は凛の頬に手を添えて口端に軽くキスを落とす。
「言い訳すんな」
「は、はい…」
兄は目を細めて楽しそうに笑う。凛は顔を真っ赤にして返事することしかできなくなってしまった。
時計は00:14を指している。あと一分。そろそろ凛の姿が見えなくなる時間だ。15分って短くねえか、と神様に言いたくなるが きゅ、と口を紡ぐ。部屋には一定のリズムで動く時計の音が鳴り響いていた。
「ごめん、もう時間ねえわ」
「え、はやくね」
そんなことを話せば、じわじわと足が消えていく。兄は「すげー」と小さくこぼして凛の足をまじまじと見ている。なんか、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
「明日もいるんだろ? まあ四十九日まではよろしくな」
「はいはい、わかりましたよ」
そう口に出した瞬間、冴の瞳に凛は映らなくなった。
cinderella time is short
コメント
1件
ヤバいこういうのめっちゃ好きなんだよ、感動するわ、、、、、