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Anti Wonderland✴︎by Alice
【狂気の章✴︎第7話】
並べられた陰絵にざっと目を通す。鏡に、ランタン、糸、大鴉。特別一緒になることのないその絵を見て、ただの評論会かと疑い始める。共陰が言うにはこの中で最も恐れるものを答えて欲しいらしい。
「…うーん、この中に怖いものは無いわね。虫とかいたら話は違うのだけれど。」
あら虫?そんなの無視無視。蒸し暑いもの。寧ろこれらは逆。無死できないものよ。
共陰たちが言うには、この陰絵は人間の心から生まれた怪物らしい。
相手の感情や本音を映し出してしまう“鏡”。
その話つまらないわ。あら滑稽ね。ええ、えぇ、面白いくらいに退屈よ。
暗ければ暗いほど辺りを照らす“ランタン”。
見ないふりするものほど。心には残る。貴方の過去も。過ちも。後悔もね。
縁結びの呪いがかかった“糸”
一度の繋がりは、消えないわ。あのコが嫌い?ならもうそのコに支配されている。
罪悪感の薄れた他力本願の権現“レイヴン”
誰にも捕まらないわ。どこにも属さないの。自由だからこその、不自由さ。
___ひとつだけ怪物を連れて行くなら…?
陰絵を動かし流暢な物言いでそれぞれの影の説明をこなす。初めてのプレゼンとは思えないほどにスムーズに。グループの代表になって、クラスみんなの前で2回目の発表をするときみたい。
どれが怖いのかしら。「74番目」。さぁ、教えてほしいわ。貴方は何を恐れ、何を連れるの。
人の本音、隠したいこと、人との繋がり、自由…。知りたく無いものや、逆にあっても良いんじゃ無いかと思うもので、どれも「アリス」にとって怖れるモノではなかった。
「えっと…選択肢はこれだけ?どれも怖くない!とかが答えにならないの?」
応えでもいいけど。それじゃあ答えにならないわ。招待券がなくなっちゃう。御茶会のshow体験、参加したいでしょう?怖れるものが証券なのよ。
「そうなのね…」
適当に応えてもいいけれど、それが答えなのかは自信がない。…あえて「答え」という単語を出したってことは、これはただの心理テストではないのかもしれない。
そう思い返すと、共陰達は一度も「アリス」を読んでいない。『「アリス」が恐れるものは?』ではなく、『貴方が恐れるもの』としか言っていなかった。
引っ掛かりをもとに、消去法で状況整理してみる。
鏡は原作のお伽話でも深く関わっていた。確かチェスの動きに合わせて繰り広げられる、少女の夢の続編として。人の本音…ここではチェスの本質から外れることを指すのだろうか。
ランタン…は答えではない気がする。共陰たちは陰を操る生物だから、灯すことによって陰ができるランタンは、彼女達も恐れない。
糸も違う気がする。人との繋がりが重要だとしたら、ここのワンダーランドは正反対。「白ウサギ」さんも話が噛み合わないし、「チェシャ猫」さんも真名は言うなって。自己紹介してこそ友達だもんね。
レイヴンはどうだろう。糸の消去論を引用するなら、誰にも捕まらないし何処にも属さない。それってまさにここの住民達な気がする。
アリスはなんとなくの直感を頼りに鏡とレイヴンだけに分けてみる。
本音を恐れるなんて、黄金の国と呼ばれた東国みたい、と「アリス」は人知れず口にした。レイヴンは「アリス」の住む地域では見られない。もうちょっと西に行けばリゾート地で見られるのだけれど。だから「アリス」はやっぱりどうも恐怖の実感が湧かないらしい。
さぁさぁ「アリス」。まだかしら。光は屈折。鏡は反射。本音なんて見えやしないのに。空は有限。海も有限。どこへでもいけるはずないのに。
「光は屈折、鏡は反射。空も海も有限でどこでもができない…としたら。」
としたら、。そこまで言って「アリス」は止まった。共陰のヒントらしき言葉から「アリス」は応えに気づいたよう。鏡もレイヴンも口に出していないのに、どうして気づいたのかは蓋をして。答え捜しの情報収集に取り掛かる。
「ねぇ、質問ってしてもいいの?」
どうする?良いんじゃない。えぇ。新しい試みね。新鮮で楽しいわ。
「じゃあ、その鏡は置き鏡?手持ち鏡?」
手持ちじゃない?人の話についてくのだから。置いてあったら、使えないわ。
「レイヴンに特徴はある?」
あるのかも。でもないの。見分けがついたら、何処かに属してしまうでしょ?
「鏡は悪い本音しか言わないの?」
さぁ。どこからが悪くて。どこまでが善いの?本心ならばどっちでも。そんなところ。
「レイヴンの不自由って」
彼は何処かに行きたいのかしら。彼は見つけて欲しいのかしら。
「鏡はこの国にもある?」
あるわよ。「白ウサギ」の時計台にね。あとは、そう。美しいもの。女王の間に。
「あ、そっか。時計台にあったね。…なら、レイヴンに特別な力はある?」
あるわよ。こたえたその先で、教えてあげる。私たちが、望むもの。
「…わかったわ。」
「アリス」の人問…陰問が終わり、彼女は結論を出した。たとえこれが間違いだったとしても、御茶会には自分で行けば良い。
「答えはレイヴンよ。私、レイヴンが怖いわ」
伏字
46
#言葉
榎葉
73
榎葉
116
コメント
1件
このエピソード、めちゃくちゃ面白かったです。特に「レイヴン」を選ぶまでのアリスの思考の積み重ね方が秀逸で、共陰のヒントから答えを導くプロセスにゾクゾクしました。「自由だからこその不自由さ」って、すごく胸に刺さるフレーズです。鏡や糸の説明も含めて、言葉遊びと寓話的な深みが絶妙で、この世界観にもっと浸りたくなりました!