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「おかえりなさいませ、カイラン様」
機嫌の悪い顔をされている。先に戻らず主を馬車の中で待たれていたのか。
「父上は?」
「お休みになられました」
「一体何があった?」
話す許可は得ていない。カイラン様の後ろに控えるハロルドを見ると微かに首を振る。
「旦那様はなんと?」
「明日にしろと言われた」
ならば明日まで待っていただかなくては。
「旦那様が呼ばれるまでお待ちください」
腹立たしいだろうな。唐突に主が邸に戻り、宴の場を任され何も知らされないとは。チェスター国王が滞在しているなど想像もしてないだろう。
「…キャスリンは?」
「お休みになられました」
「何もなかったんだな?」
これは返答に困る質問をされる。あったと真実を言えば気にするだろうがなかったと嘘は言えない。黙すを選ぶか。
「あったのか…キャスリンは無事なんだな?」
「はい」
カイラン様は頷きトニーを連れて上階の自室へ向かった。
「お疲れ様」
ハロルドを連れて主の執務室の前にある私の自室へ向かう。ハロルドをソファに座らせ説明をする。
「本物はこちらにいる。レオン様の部屋に侵入されたよ。そこで我々と遭遇した」
ハロルドの顔は険しくなる。レオン様はゾルダークの大切な後継だ。暗殺者が送られたと結論づけていい光景だった。私自身、レオン様の死を覚悟した。
「無事だ。本物の腕の中で熟睡されていた。本物は食事を要求し疑いもせず食べていたよ。毒の耐性はあるだろうが警戒はするだろ?少し頭が弱い方かもしれないな」
見ているこちらがチェスターを心配した。 主には殺す気があった。かなりの殺気を放っていた。心臓を狙った一投はガブリエル様だから止められたんだ。あの後でよくキャスリン様から離れられたと私は驚いた。陛下に伝えてから王宮を離れたのだろうが、説明責任は先送りにするかと思った。マルタン公爵の様子を見に行くためでもあったろうが、本当は側にいたかったろうに。始末はつけてきたのだろうか。
「ハロルド、旦那様はゾルダークの騎士を本物に預けて鍛えさせるつもりだ」
ハロルドの細い目が開かれる。
「国には内密に私兵を強化されるので?」
陛下には言わないだろうな。陛下が許可を出しても他の王族は嫌なはずだ。
「本物は強い。ゾルダークの騎士では傷もつけられないだろう。一応国王だ、殺すことはよくない。旦那様の出した落としどころだと思う」
激情のまま殺していたら面倒だった。最悪開戦の状況だったんだ。ゾルダークの当主の立場では許すしかなかっただろう。ただ、再び邸に戻った主はやけに落ち着いていた。キャスリン様のいる寝室に飛び込むと予想していたが。 ハロルドを自室へ入れてから半時は経った時、微かに主の寝室から悲鳴が聞こえた。
「聞こえたか?」
「ええ、キャスリン様の悲鳴ですよ!」
立ち上がろうとするハロルドを制して座らせる。ベルは鳴っていない。静寂の中、伝わる音を聞き逃さないよう耳を澄ませる。それでも何も聞こえない。主は私を呼んではいない。
「ベルが鳴らない限り行ってはならない」
キャスリン様が心配ではあるが仕方がない。
「いつ呼ばれるかわからないからな、部屋に戻って一刻眠ってくれ。その後は私が眠る」
お子を孕んでいる。ライアン様を呼ぶ手配はしておくか。キャスリン様に出会ってからの主は予測不能だ。仕える側も神経を鋭くしなければならない。
「キャスリン様は無事だ」
そのはずだ。でなければ困る。心配顔のハロルドを追い出し、耳を澄まして待機する。
暗い掛け布の中で目を覚まし、寝息と鼓動に耳を澄ます。お互いが裸のまま、俺は空色の温かく柔らかい体を抱き寄せ数刻前を思い出す。 意識が曇り荒れ狂う情動のまま空色を抱き、皮膚を突き破る程噛みついた。顔を上げると掛け布の隙間から剥き出しの肩を出した空色の寝顔がある。陽が昇り始めた薄明かるい中でもわかる。シーツにも血が滲み、俺の歯形は瘡蓋になって綺麗な肌を汚している。手当てをせねばならないが離れたくはない。まだこの温もりを感じていたい。掛け布を掴み空色の肩まで上げ、俺はまた暗がりに入った。 ガブリエルは殺せん。一応国王だ。理解しているが許せん。どうすればお前を安全な籠の中に入れておける。邸に閉じ込めていてもこの有り様だ。 俺はハンク・ゾルダークだぞ。まだ力が足りんか。愛しい空色の胸に吸い付く。眠る前も吸い付いた。醜い模様になっているだろうな。固くなった頂を口に含み軽く舐める。起こさないよう舌にあてるだけにして細い体を抱きしめると俺の腹に小さな衝撃を感じた。懐かしいな、動き出したか。お前を殺したかと思ったぞ。これは笑んで俺を許すだろうが、涙は流す。俺も空色が悲しむのは望まんからな。まだ恐怖が消えてないんだ。目蓋を閉じると焼き付いた光景が俺を苛む。弱くなったもんだ。女などにここまで振り回されるとはな。空色、これが愛か?俺にはわからんぞ。子はまだ俺を叩く。俺も空色の頂をしゃぶる。掛け布の中は俺の荒い呼吸で熱を増す。裸の空色を抱いてるんだ、陰茎が滾るのは仕方がない。昨夜は記憶が曖昧だ。欲しくなってもいいだろ。細い脚を上げて陰茎を挟み腰を動かして快楽を得る。柔い尻を撫で、頂は口から離さず起こさないようゆっくり動かす。もどかしいが心地がいい。
「ハンク」
上を見ると掛け布を広げた空色が俺を覗き見ていた。その顔は微笑み薄明るい中でも空色が輝いて見える。
「すまん」
「悪戯ね」
笑って俺の頭を撫でてくれる。
「滾ってる」
知ってるよな。お前の脚に挟んでるんだ。
「そうね」
「変わりないか」
陰茎の先端からは子種が出て、これの脚を濡らし始めた。
「ええ」
まだ肩は痛むだろ。
「寝ていろ」
まだ朝になってない。俺は勝手にお前を愛でる。胸に顔を埋め鼻を擦り付け、頂を口に含む。まだ空色の視線を感じる。見上げると瞳を潤ませ、口を固く結び俺を見ている。
「欲しくなったか」
俺を見つめ頷いた。掛け布の中は子種の匂いが満ちている。お前の好きな匂いだな。
「動くな」
上へと向かい片足を上げて泥濘の入り口を見つけてゆっくり侵入する。目の前にある美しく愛しい空色を見つめ舌を出すと赤い唇が開き咥えてくれる。鼻から甘い息を吐きながら、中の陰茎を締め付け液を溢れさせ、俺の好きな泥濘にしてくれる。
「堪能させてくれ」
昨夜の泥濘はあまり記憶にないんだ。腰を回してかき混ぜると咥えた舌を離して嬌声を上げ悦んでいる。顔を掴み悦ぶ姿に見惚れる。
「美しいぞ、俺の空色」
掛け布の中は淫靡な匂いと音で満ちている。漏れる音に耳を澄ませ喘ぐ口を覆い舌を入れていく。ゆっくり腰を動かし括れで壁を擦り快感を空色に与え、俺ももらう。
「気持ちいいな?」
「いい…」
絡まる長い髪を指で解しながら撫でる。
「悪かった」
口を合わせ謝る。肩に触れると空色が揺れる。
「…痛くないわ」
中を締め付け喘ぎながら答えてくれる。
「怖かったんだ」
空色は俺の頭を抱きしめ、額に口を落とす。
「空色」
「ハンク」
細い腰を掴んで陰茎を刺激し、喘ぐ空色を見ながら限界の陰茎を抜き出し空色の脚に子種を吐き出した。悦びの声を口を覆って閉ざし、小さな舌を俺に入れて絡め合わせる。飲み込めない唾液がシーツに染みをつくる。
「離れないわ」
「ああ、共にいる」
唾液を口から垂らす姿にさえ愛しさを感じるんだ。互いが死しても共にいたいと願う。それほどの想いだ。