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「参ったな…」
戦後、委任統治を任された島国。それは皇国にはない自然豊かな国、まさに楽園だ。そこに足を踏み入れてすぐ、道に迷ってしまった。そしてその上雨が降るとか、ついてないな…嫌なことばっかりで全てが嫌になってしまう。開国してから必死に欧米の国々に追いつこうとするが空回ってしまう。米国との仲が悪くなり、結婚とまで言われた英国との同盟も無くなってしまう。私はどう振る舞うのが正解なのだ?考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。何処かに、現実と関係ない場所に逃れれば…
「お姉さん!酷い顔をしているけど大丈夫?」
水を滴らせながらふわっとした笑顔を浮かべる天使いた。思わず目を見開くとその子は少し怪訝な顔をしたのでお兄さんだと咄嗟に応える。その子も少し驚いたような顔をする。今までそんな反応をされる時が多く嫌いだったのにこの子には不思議と嫌な気持ちにならない。この島にいるのであれば、この少年は私が委任統治する事になった国なのだろう。自己紹介をしてやろうと思い、私はしゃがんで名前を教えてやる。すると、その子はぱぁぁ!っと目を輝かせてパラオという名前だと教えてくれた。そしてこの島を案内してくれるらしい。迷っていたから有難いと思いパラオの頭を撫でてやると白い歯を見せて笑った。私も思わず頬が緩む。パラオの表情はころころと変わって面白い。もっとこの天使の表情を見てみたい。さっきまでの頭痛は颯爽と消え去っていった。
島を覆っていた黒い雲が去るとパラオはすぐに私の手を握って走り出した。着いた先は綺麗なお花畑だった。思わず綺麗…と呟くとパラオはムフーっと言って笑った。私もつられて笑ってしまう。
「ナイチ!僕ねお冠作れるんだよ!お友達が出来た時に作ろうと沢山練習したんだ!」
そう言うと、パラオは地面に生えてたお花を丁寧ににとって、冠を作った。
「パラオは上手だな。」
「でしょー!これナイチにあげる!」
「いいのか?こう言うのはパラオの好きな人にあげるべきだと思うが」
「僕ナイチの事だいすき!だからナイチにお冠かけてあげる!」
パラオは私にお花で出来た冠をかけた。私の言う好きな人とは友達としてではないのだが、今のパラオに言ってもわからないだろうと思った。だから変わりに
「私もパラオの事が好きだぞ」
これは本心だ。急に現れた天使は私の心のドロドロしたものを雨と共に流してくれた。会ったのは今日で初めてだが家族のように愛しく思える。パラオは顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうな笑顔を向けた。言われ慣れていないのか…この可愛らしい天使はなんとしても守っていきたいそう思った。