テラーノベル
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精霊杯が無事に終わり、オリオンは夏の長期休みに入っていた。この時期だけは生徒も実家への帰還が許可されている。しかし、成績があまり良くない生徒は学校に残って各自学習するのが恒例だった。そのため、教師も普通に通勤する。
「はぁ…せっかく長期休暇だと思ったってのに…D組は殆ど残ってるな。ま、当たり前か」
D組担任であるソロ基No.0も例外ではなかった。夏休みの決まりとして、授業は午前中までと言うのが唯一の救いだ。午前の授業を終えて、職員室に戻る途中外から冷気を感じた。
「ん?(可笑しいな。今は夏なのにあっちから冷気が漂ってる。誰かが魔法の練習でもしてんのか?ここは比較的人が通らないとはいえ、魔法の練習はちゃんと決められた場所でしろよ…)」
素通りしようとしたが、自分の受け持つ生徒が頭の隅によぎった。いつも寝ていて何考えているか分からない少年。ソロは何となく外へと足が向いた。隠れるようにしてある庭の木の木陰に頭に浮かんだ人物が寄りかかっている。いつも通り寝ているのかとも思ったが、少し様子がおかしい。漂う冷気は彼から発せられていた。
「…ナギサ?(まさか、魔力暴走か?確かめねぇと)」
「ん…」
「おい。ナギサ!起きろ!」
「…?誰だっけ…」
「お前なぁ…担任の顔忘れんなよ」
「ああ、えっとソロ先生だけ?」
寝ぼけているのか目を擦っている。しかし、目が覚めても冷気は治るどころか増していた。
「さむ…」
「お前これ抑えられないのか?」
「んー…魔力が足らないから無理」
「??(魔力が足らない?魔力暴走じゃないのか。まさか…)ナギサ、お前魔力が外に出やすい体質なのか?」
「………惜しいね。いつもは寝ることで魔力を抑えてるんだよ。魔力が一定以上貯まると一気に出てくんだ。だから、適度に調節するんだけど、失敗した。魔力が流れ出すの止められない」
「そうか(珍しい体質だな。しかし、これをどうにかしないと退学の恐れもある。どうしたものか…)」
「……先生、いい匂いがする」
「は?いい匂いって…」
「先生の魔力、美味しそう…」
この時初めてナギサと目があった。雪を体現したかのように透き通るほど白い肌。薄い水色の髪に雪に水色を一滴加えたような瞳。少しの間、魅了されてしまった。
「ハッ!っぶねぇ…お前、まさか雪国の生き残りか?」
「ワォ、驚いたよ。そんなとこ知ってたんだ」
「何十年も前に絶滅したって言われてるが、お前の症状は雪国独特のものに共通するものがあるからな。俺も本でしか見たことはなかったが…」
チラリとナギサを見る。先ほどよりも冷気が増しているし、顔色も悪くなっていた。
「…先祖返りってやつ?良い迷惑だよね。この状態だと、人の魔力が美味しそうに感じる」
「…だからこんな人目のないところに居たのか」
「まあね」
雪国の民は独特の文化を持つ。魔力が多いが、適度に外に出さないと暴走状態になってしまうのだ。そうならないようにあらかじめパートナーが設けられる。魔力放出に失敗した時、お互いの魔力を分け合うために幼少期から相性の良い者と契約を結ぶのだ。しかし、先祖返りのナギサにはその相手がいない。暴走して他人の魔力を勝手に奪わないために人目のない此処に居たのだろう。雪国の民の能力の一つ、魅了は対象者に催眠のようなものをかけて判断力を低下させ魔力を吸う。この事から危険視され、滅ぼされたとも言われるほどだ。
「先生何者…?魅了自分で破る人とか初めてなんだけど…」
「…教師舐めるな。それより、魔力を交換するぞ。どうすれば良い?」
「(・Д・)」
「おい?」
「ワォ…何でそんな話になるのか理解出来ないな」
「生徒を助けるのは教師の役目だからな。(このまま放置して一般の生徒襲ってみろ。即退学だろうが。そうすりゃ俺の依頼は失敗。ギルドが潰される!)」
「……変な先生だね」
「うっせぇ。で?どうすんだよ」
少し目を見開いてソロを見る。その間にソロはこれ以上ナギサの体が冷えないように自分のローブをナギサに着させた。
「俺は常人より魔力が多い。多少渡したくらいで何ともねぇんだよ」
「……そろそろ我慢の限界だったし、お言葉に甘えさせてもらうよ。手、出して…」
ナギサに言われた通り手を差し出す。ナギサはヒンヤリとした手でソロの手首を掴み、咥えた。
「っ、!!!?」
「ん…」
「お、いっ!何してっ」
「…魔力の補給。本来は体液を交換するんだけど、先生はパートナーじゃないし、流石にそこまでするつもりないよ。案外魔力は何処からでも発してるからコレでも少し回復する…」
手首をペロペロと舐めるナギサに、魔力が抜かれているのを感じる。それと同時に、慣れない感覚にゾワゾワした。
「っ、」
「………」ジー
「な、んだよ」
「いや、良く耐えるなって。先生みたいに僕を心配してこうやって魔力をくれる人は居たよ。少なかったけどね。その人達は魔力を吸い出した途端、快楽に呑まれたけど」
「はっ?」
「僕の唾液には感覚を倍増させる効果があるらしいから、直ぐにイくかもっとって襲いかかってきたんだよね。それが地味にトラウマ」
確かに、幼い頃からこの症状があったなら、トラウマにもなるだろう。自分を助けたいと言ってくれた人がイったり襲いかかってきたらと考えると目の前の少年に少し同情する。ソロは暗殺者として毒などには高い耐性を持つ。まあ、体が弱いので熱などは出るが、誤差の範囲だ。毒と快楽は違うが、耐えることには慣れていた。ソロの反応が珍しいのかナギサの目が怪しく光った。
「(態といやらしく舐めたらどんな反応するんだろ…)ペロッ」
「っん…」
手首をに舌を這わせるようにして舐めるとソロの口から抑えきれなかった声が出た。掴まれていない方の手でバッと口元を覆うがもう遅い。甘い声はナギサの本能を刺激した。
「どうしたの?僕はただ魔力をもらってるだけだけど」
「っ、何でもない…」
「そっか。なら、もうちょっと付き合ってよ」
「…くっ、っ…ふ、ぅ」
「………」ペロペロ
「〜〜〜っ」
「(美味しい…ほんのり甘くて、でもクドくない。良いものを見つけた)」
「ッぁ///」
「??」
「〜〜〜〜っ!!もう良いだろっ!」
手首を掴んでいた手を振り解き、耳を赤くしたソロは早足でその場を去った。庭の冷気は大分収まっている。残されたはナギサは獲物を見つけた肉食動物のように妖艶に笑っていた。
その日の夜、ソロはベットに突っ伏して昼間の出来事に悶えていた。イブキとの定期連絡を終えて帰ってきてからもう一時間は経っている。
「あ"〜〜〜っ!!やっちまった!!生徒の前であんな声出した挙句逃げるとかダサすぎだろ!くそッ、明日どんな顔して会えば良いんだよ…つーか、俺何でこんなに気にしてんだ!」
あの後からこのことが頭から離れない。その日は結局一睡もできずに朝が来た。重い腰を何とかあげて授業をするために教室へと向かう。しかし、危惧したような状況にはならず、ナギサはいつも通りだった。こっちが気にしていたのがバカみたいだ。相変わらず授業は寝ているし、目が合うこともなくその日の授業は終わった。
「(何も起こらない…?俺の気にし過ぎか…)」
安心したからか眠気が襲ってきた。昨晩あまり眠れなかったのもあり、教室をフラフラとしながら出て行くソロを見るナギサに気がつくことはなかった。
「ふぁ…早いけどもう寝るか……」
まだ日が落ち切る前にソロはベットに入り込んで睡魔に逆らわず意識を沈めた。
「ん…」
気配を感じて目を覚ます。外はもう闇が覆っていた。コンコンと窓を叩く音がして人の気配がする。警戒しながら窓に近づくと意外な人物がいて驚いた。
「ナギサ!!!???」
「しーっ」
「っ、何で此処に…」
「先生に相談があって」
「相談?」
取り敢えず、外に居ると目立つので部屋の中に招き入れる。
「ワォ…意外と片付いてるね」
「ま、まあな…(最近イブキが片付けてたからな)」
許可なくベットに座るナギサを見て頬を引き攣らせる。ため息をついてソロは椅子に座った。
「で?相談って何だ。それもこんな夜遅くに…」
「単刀直入に言うと、僕のパートナーになって欲しい」
「は?!」
「あの後色々考えたんだよ。これ以上、暴走抑えるのキツくなってきたし、先生の魔力の味…クセになる」
「(ナギサの退学の理由は、暴走…?だとしたら、この提案はコイツの退学阻止に繋がる…が、その後はどうする?所詮は偽物の立場だ。依頼を完遂した後、パートナーとしてナギサと一緒にいる事はない。此処はいい感じに誤魔化さねぇとな)…一つ良いか?」
「ん?」
「お前はいつか学校を卒業する。その後はどうするつもりだ。もし他にいい人が出来たら?ま、それだけが理由じゃないけど…俺はお前のパートナーにはなれない。悪いな」
「……なら、仮契約しようよ。僕が先生の前から消えるまでが契約期間。それなら問題ないでしょ?僕は先生の魔力が欲しい。先生は?」
「(退学しない事だ!じゃないと俺がお前を殺っちゃうぞ☆!なんて言えねぇし…)授業!せめて授業中ずっと寝るのはやめろ。これ以上成績落ちたらマジでやばいから!」
「ふーん。分かった」
「(ふぅ…これで一安心だな)」
「ところで」
「ん?何だ」
「今日の分の魔力ちょうだい?」
「あ?ちょっと待て。今は魔力抑えれてるだろ」
「僕達はパートナーが出来たら毎日少しずつ魔力を貰うんだよ。じゃないと、いざという時に拒否反応が出たら元も子もないからね」
「なっ!?それを先に言え!」
「確認しなかったのは先生だよ」
「ぐっ(ガキだと油断した!コイツ、性格悪ぃぞ!)」
「じゃ、早速…こっち座って」
「ここ、俺の部屋なんだが…はぁ」
ポンポンと隣を叩いてベットに座るように促す。ソロは諦めて隣にドカッと腰掛けた。ん、と手をナギサの方へ向ける。ナギサはその手を取ると口元へと運ばず、少し力を入れて引っ張った。
「うおっ」
「仮とは言えパートナーになったんだからこっち」
「んっ!!?」
不覚にもナギサの接近を許したのが運の尽きだった。いきなり深い口付けに呼吸が上手く出来ない。手首の時とは比べ物にならない快楽がソロを襲った。上顎を舌でチロチロと舐められると背筋に甘い刺激が走り、抵抗の力が抜ける。
「…ンっ、ふ…ぅ、んんっ」
「は、ふ…(気持ちぃ〜。そろそろ魔力も貰おうかな)」
「んあっ、ちょ…ナギ、サっ!(今っ、魔力吸われると…)」
「………」ジー
「っん、ふ、ぅッ…ん、ぁ(コイツっ!魅了使ってやがる…!)」
「(楽し…)」ピタッ
「んっ、…は、っ??」
必死に声を抑えようとしているソロの反応を楽しんでいたナギサはいい事を思いついてピタッと動きを止めた。ちゅっと軽くソロの舌を吸ってから口を離す。銀の糸がプツリと切れる。
「先生は、この方法いや?」
「嫌にっ決まって、るだろ!」
「ワォ…そうなんだ。じゃあ」
「ヒッ」
「こっちの方が、良い…??」
息も整っていないソロの赤くなった首筋に唇を寄せる。フゥ、と息を吹きかけるとビクンッと反応した。たっぷりとナギサの体液を取り込んだソロの体はスッカリ敏感になっている。少し息を吹きかけられるだけでゾクゾクとした。
「ゆっくりと時間をかけてするか、それとも手っ取り早いけど口が溶けそうなくらい気持ち良くなるか…どっちが良いの?」
「ん、ふっ…くっ///」
「あむ…」
「ぃ"うっ」
ソロを軽く押し倒し、その上に覆い被さって白くて細い綺麗な指をソロの胸にある突起にコリッと当てる。ヨレヨレの服から覗く白い首筋に歯を立てて上目遣いにソロを盗み見れば、息を荒くしてトロンとした目をするソロの顔がすぐ側にあった。
「ワォ…絶景」
「んっ、んんッ…もっ、いいだろっ!はなせっ」
「えぇ…もう少し分けて欲しかったんだけど」
「せめてっ!魅了解除しろっ」
「ありゃ。バレてたか」
魅了を解くと、力一杯押し返された。そこで深追いはせず、降参を表すために両手を上げる。その間にソロは息を整えた。
「はぁーはあーっ」
「睨まないでよ。こうでもしないと抵抗するでしょ?トーゼンの保険だと思うけど」
「っ〜〜〜!!(こっんの!クソガキ〜〜っ!)」
「あ、そうだ。仮契約の印付けるの忘れてた」
「ちょっ…おい!」
「暴れないでよ、付けにくいじゃん」
「目立つところに付けるな!!」
心臓の上、鎖骨当たりに唇を寄せるナギサの頭を押し除ける。
「…なるべく心臓に近いところが良いんだけど」
「っ!…なら、せめて背中側にしろ。バレてたから面倒だから」
「……わかった。先生って結構スケベだね」
「うっせぇ!!早くしろ!(くそッ!何でこんな目に…依頼のためだ。俺はNo.0。受けた依頼は完遂する…!無心になれ。無無無無無無)」
「……(なんか面白くない)」
必死に無心になろうとしているソロの服を捲って左の肩甲骨を出す。精神統一を始めたソロはそのことに気づかず、ナギサはそれが面白くなかった。人差し指でスッと背骨の上をなぞる。
「っっっ!!」
「ふっ」
「なっ!(コイツ笑うのか?!)じゃなくて!!何しやがる!」
「だってこうでもしないと無心を貫いたでしょ?」
「ぐ…」
「ね、印付けて良い?」
「………好きにしろ(依頼が終わるまでだ。終わればこの契約はなくなる。それまでの我慢…!)」
「じゃ、遠慮なく」
肩甲骨に舌を這わせる。ピクンと反応する背中に気分を良くしたナギサは仮契約のために使う魔力を貯めた。意識を集中させてソロに噛み付く。
「ぃ"っ」
「ん…」
「あ"、あ"っ」
「ふぅ…僕の魔力を大量に入れた。雪の民とは体の作りが違う先生には少し辛いだろうけど、すぐに治るから」
「っ、あ…ぁあ"っん、んんッ///」
「って、聞こえてないか…流石の先生もコレには耐えられないんだ」
今まで感じた事のないほど強い快楽に何も考えられなくなった。頭が真っ白になってフワフワする。必死に声を抑えようとしてより甘い声が出ているのに果たして気がついているのだろうか。ナギサは自分がつけたソロの背中の美しい雪結晶に満足げに笑うと喘ぐ彼を妖艶な笑みで見つめた。
「フゥーフゥー…っ」
「これからも宜しくね、ソロ先生――」
窓から差し込む月光に照らされるナギサはまるで月の使徒のようだ。それを見たソロは重くなる瞼を閉じて、心地いい夢の中へと沈んでいった。
―ナギサの秘密―
コメント
3件
うわ、第1話からすごい展開ですね…!雪国の生き残りで先祖返りっていう設定、めちゃくちゃ好みです。魔力暴走を抑えるためにパートナーが必要で、しかも体液交換が必要ってところがもう…。ソロ先生が教師としての責任感とギルドの依頼の板挟みになりながらも、ナギサにどんどん引きずり込まれていく感じがたまらなかったです。最後の仮契約のシーン、背中の雪結晶の印とか、めっちゃ印象に残りました。続きが気になる…!